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イスラム、中国、インドの歴史を知らずにいるのは大問題

「島田村塾」リベラルアーツ特講(3)学校では教えない「イスラム」

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
「長い間、イスラム文明を学ぶ機会がなかった」と振り返る島田晴雄氏。イランについて調べるため、本を何十冊か読んでいるうちに、大きな発見をしたという。果たしてその発見とは? かつて世界を支配した偉大なイスラム文明にスポットを当てながら、中東での貴重な体験をもとに知力を身に付けることの必要性を説く。(全5話中第3話目)
時間:13:46
収録日:2014/12/05
追加日:2015/01/22
≪全文≫

●日本の学校で教わった世界史はギリシャから始まる欧米の歴史


 私は、実は長い間、イスラム文明、文化を学ぶ機会がなかったのです。日本の学校では、普通イスラムについて教えません。

 日本の学校で教える世界史は、ギリシャから始まって、ローマ、それから、暗黒の中世です。これは、1000年ぐらい続くわけですが、確かにヨーロッパから見れば暗黒で、まだ未開の時代でした。イギリスで一番発達した所は、ローマが進駐したバースという地域で、そこにいろいろな町をつくったりしました。バースは、その後英語で「お風呂」ということになったのです。日本で、『テルマエ・ロマエ』という漫画が大変流行っていますが、ローマ人はお風呂が大好きのようで、バースになったのでしょう。

 結局、イギリスの文明は、ローマが来ていた時代だったのですね。その時代、フランスはまるで荒れ果てた平原で、ドイツは森で、ことほどさように、ほとんど何もなかったのです。割と発達していたのは北欧です。後に海賊になって、何度もイギリスを攻撃して、海軍を起こした人たちです。それぐらいで、他には何もないわけですから、暗黒の時代です。われわれはそう教わりました。


●戦後、パクス・アメリカーナの教育体制が組まれた日本


 ところが、そこに宗教のくびきを逃れて、ルネサンスと産業革命が起こったのです。産業革命によって国力を上げたイギリスは大英帝国をつくり、世界を支配し始めました。

 そして、イギリスが第二次世界大戦でボロボロになると、覇権はアメリカにバトンタッチされます。アメリカは強大な国です。世界の安全保障から、金融、国際法まで、全部を一手に仕切るパクス・アメリカーナをつくりました。

 日本は、その中の同盟国です。本当はアメリカ帝国にねじ伏せられた敗戦国ですが、アメリカはロシアと違って、割と好意的に見てくれますから、奴隷国ではなく同盟国として扱ってくれているのです。しかし、パクス・アメリカーナには、実は「アメリカの素晴らしさを世界の人たちはちゃんと自覚しなさい」という教育体制が組まれており、日本はその中で優等生なのです。

 ということで、日本の世界史教育は、ギリシャ、ローマ、暗黒の中世、ルネサンス、産業革命、大英帝国、アメリカ帝国以外、ほとんど教わることがないのです。私も学生時代は割と優等生と言われたので、そんなことしか知らずに育ってきました。


●イランを勉強するうちに大きな発見をする


 ところで、政府から「サウジアラビアへ行ってお金を集めてほしい」と言われたり、外務省に「イランに行って状況を少し慰撫(いぶ)してほしい」と頼まれたりしたこともあったのです。

 イランは、過去30年ほどアメリカと敵対関係を続けています。日本はイランにとって3番目に重要な原油輸出先ですから、決してないがしろにできません。アメリカはイランと口をきかなかったため、アメリカや国連で決まった、イランにとって厳しい内容を、結局、日本の外交筋がイランに伝えなければいけない局面も出てくるのです。決して歓迎はされません。そんな時、本当なら、日本は「イランが大事なのですよ。好きなのですよ」と言わなければいけないけれど、あまり二枚舌がうまくないので、その代わりとして、文化人を呼んで講演をやったりするわけです。

 私もその中の一人として呼ばれて、あちこちで講演をしました。イランのことをよく知りませんから、何十冊と本を読んだのですね。そうしているうちに、とんでもないことに気が付きました。

 ギリシャ、ローマからパクス・アメリカーナに至る世界史とは、人類の世界史のごく一部にすぎない。人類史では、エジプトが非常に古く、インドも古いのですが、3000~4000年の歴史があると言われています。そういうスパンで見たときには、中国も古いですね。


●人類史上一番進歩した時代は、中世のイスラム圏


 今日に至るまで地球の文明で一番進歩した時代はどこの文明かと言えば、公平に見たら、私はイスラム圏だと思います。世紀で言うと、7~8世紀から13世紀ぐらいまでが前半期で、その後、オスマントルコという国がものすごく強大な帝国になって、19世紀ぐらいまで君臨します。したがって、全部合わせると約1000年です。

 前半期は、アッバース朝が500年近く続きました。これがとても巨大で、ローマ帝国の倍以上でした。ローマ帝国も大変広くて、地中海の北岸をほとんど支配していたわけですけれども、アッバース朝は、イベリア半島からモンゴルまで、50幾つかの民族をイスラム法で束ねた国なのです。

 このアッバース朝の500年間に何が起きたかと言うと、今、私たちが使っている数字です。数字には、マッチ棒のようなローマ数字と、ぐにゃぐにゃっとしたアラビア数字があります。...
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