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論争に打ち勝つために本を読み、勉強もした

対談・反生命論(6)論争するから本を読み、勉強もする

概要・テキスト
『源氏物語』でも議論しているが、教養と家柄はどのような関係にあるのだろうか。また、かつてはあった「論争」の気風も、2000年を越えてからはなくなってしまった。論争があれば、論争に打ち勝つために本を読み、勉強をすることにもなるが、今は社会が論争を求めていない。そもそも学問や歴史は「命より大事なものがある」と考える人たちがつくってきたのだ。そうした人たちがいないのが現代で、もはやそれらを失った人類は滅びるしかない。滅びたあと、再び「反生命」を実行できる人たちが出てくれば、その人たちが「新しい人間」になる。(全7話中第6話)
時間:09:25
収録日:2024/05/24
追加日:2024/11/22
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●家柄と教養の関係


執行 そのこと(エリート層の教育の必要性)が、もうそろそろわかる時代に入ってもいいと思うのに、全然その感じがないですね。

―― 感じないですか。

執行 40年ぐらい前は私も随分期待を持っていましたが、もう今は期待していません。滅びた後の準備を今急いでやっています。

―― でも40年前には期待を持っていた。

執行 もちろん持っていました。20年ぐらい前までは持っていました。

―― まだ2000年に入ったあたりは。

執行 2000年を越えてからです、だんだんなくなったのは。

―― 平成の後半ぐらいに入ってからですね。

執行 もう今は全然ない。とにかく滅んだあとにどういうふうに魂を温存するか、そこで忙しく活動しています。

―― その頃にはもう士大夫階級は、ほぼいないのですね。

執行 いないでしょうね。

―― 読書人が。三島由紀夫みたいに、高校生の先生と真剣に議論してやろうという人は、もういなくなったわけですね。

執行 一人もいないでしょう。

―― 村松剛もそうでしたね。

執行 村松さんにも、だいぶかわいがってもらいました。みんな家がいいですから。

―― そうですね。

執行 村松剛も名門で、江戸時代からすごくいい家です。

―― 江戸時代からですか。

執行 ずっと医者の家です。お父さんは精神医学者で、(妹の)村松英子さんとも親しくなりました。素晴らしい教養人です。全然違う。三島は当然として。

 あの頃の古い文学者は、嫌な言い方ですが、家の悪い人なんていません。芥川龍之介ぐらいまで昔の文豪で家柄が悪い人なんて、私が知っている範囲で一人もいないと思います。

―― 太宰(治)もいいですしね。

執行 だからみんないい。誰見たって。本人が歪んでいるかどうかは別として、家柄はいい。教養のある、いい家です。

―― 石原慎太郎もそうですね。

執行 みんなそうです。三島(由紀夫)ぐらいまで。真の教養は、そうでなければつかないということです。

―― おっしゃるとおりです。

執行 それが『源氏物語』でも議論しています。「勉強も必要」と光源氏が言うけれど、お母さんは断固として反対している。「そうじゃない。結婚、家柄で決まる」と。だから、当時から人気を取ろうとすると、必ず「いや、そうじゃない。いい人もたまには例外で出る」と光源氏がしゃべっているのです。光源氏...
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