●日本的な大家族主義、悪く出れば「自己がない」
―― よろしくお願いします。私は先生の生き方そのものに興味があります。33歳で独立して、一貫して「これをやっていくぞ」と。その間、先生自体は全く変わっていない。
執行 私は、もうずっと一緒です。
―― どんどん思想が進化していく。ただ一方で、三島由紀夫や小林秀雄に(若いときに)出会っています。しかもその段階で、すでに議論しているわけですよね。
執行 三島由紀夫に会ったのは高校生でしたが、文学論を20回近くやりました。これを今ちょうどエッセイに書いています。いろいろな人に頼まれて書きだしました。
あれから50年以上いろいろ見てきましたが、三島由紀夫と本当の文学論をやった人は、ほとんどいません。三島由紀夫も私が高校生で文学青年だったので、気楽にどんどんしゃべったのだと思います。
彼もパフォーマンスで生きていたところがあるので、社会的にいろいろな人と対談をしても、文学論にはなっていません。
―― なるほど。文学論になっていないと。
執行 私はすごく若くして会ったので、気楽だったのだと思います。だから、すごく本音が出て、喧々諤々の文学論をやりました。私はその内容を全部覚えているので、今エッセイとして一冊の本に書き下ろしているところです。日本の場合、権威主義などいろいろあるので、どうなるかはわかりませんが……。
―― やはり権威主義なのですね。
執行 たとえば私は絵が好きで、いろいろなものを集めています。画商の知り合いも多くいます。当たり前ですが、私は自分が好きな絵を集めています。ところが、こうした人は一人もいないそうです。日本人で自分が好きな絵をコレクションしている人は、一人もいない。名だたる画商10人が10人、そう言っています。「執行さんが初めてだ」と。画廊で絵を見て、好きだから買い集めるのは。
―― 自分で評価できるということですね。
執行 簡単に言えば、そういうことです。自分の好き嫌いだから、たいしたことではありません。でも日本人には、一人もいないそうです。まず学歴。どういう会派にいるのか。どういう実績があるか。どの展覧会に出しているか。その画家をどういう人が評価しているか。それを全部調べてコレクターは集めている。
あと、ひどい人になると、何回テレビに出たか。
―― なるほど。
執行 最近の美術が好...