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人の評価ではなく、自分が好きだと思ったものを選ぶ

対談・反生命論(1)権威ではなく自分に従う

概要・テキスト
日本の画商に聞くと、日本人で純粋に自分が好きな絵を集めている人は、ほぼいないのだという。では、何で選んでいるかといえば、権威であったり、人の評価であったりである。言いたいことを言う。選びたいものを選ぶ。そういう人物や考え方が存在しない日本社会では、ついに本当の反骨精神をもった不良さえ見かけなくなった。(全7話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:00
収録日:2024/05/24
追加日:2024/10/18
カテゴリー:
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≪全文≫

●日本的な大家族主義、悪く出れば「自己がない」


―― よろしくお願いします。私は先生の生き方そのものに興味があります。33歳で独立して、一貫して「これをやっていくぞ」と。その間、先生自体は全く変わっていない。

執行 私は、もうずっと一緒です。

―― どんどん思想が進化していく。ただ一方で、三島由紀夫や小林秀雄に(若いときに)出会っています。しかもその段階で、すでに議論しているわけですよね。

執行 三島由紀夫に会ったのは高校生でしたが、文学論を20回近くやりました。これを今ちょうどエッセイに書いています。いろいろな人に頼まれて書きだしました。

 あれから50年以上いろいろ見てきましたが、三島由紀夫と本当の文学論をやった人は、ほとんどいません。三島由紀夫も私が高校生で文学青年だったので、気楽にどんどんしゃべったのだと思います。

 彼もパフォーマンスで生きていたところがあるので、社会的にいろいろな人と対談をしても、文学論にはなっていません。

―― なるほど。文学論になっていないと。

執行 私はすごく若くして会ったので、気楽だったのだと思います。だから、すごく本音が出て、喧々諤々の文学論をやりました。私はその内容を全部覚えているので、今エッセイとして一冊の本に書き下ろしているところです。日本の場合、権威主義などいろいろあるので、どうなるかはわかりませんが……。

―― やはり権威主義なのですね。

執行 たとえば私は絵が好きで、いろいろなものを集めています。画商の知り合いも多くいます。当たり前ですが、私は自分が好きな絵を集めています。ところが、こうした人は一人もいないそうです。日本人で自分が好きな絵をコレクションしている人は、一人もいない。名だたる画商10人が10人、そう言っています。「執行さんが初めてだ」と。画廊で絵を見て、好きだから買い集めるのは。

―― 自分で評価できるということですね。

執行 簡単に言えば、そういうことです。自分の好き嫌いだから、たいしたことではありません。でも日本人には、一人もいないそうです。まず学歴。どういう会派にいるのか。どういう実績があるか。どの展覧会に出しているか。その画家をどういう人が評価しているか。それを全部調べてコレクターは集めている。

 あと、ひどい人になると、何回テレビに出たか。

―― なるほど。

執行 最近の美術が好...
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