世界哲学のすすめ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「人間は世界内存在」ハイデガーに学ぶ哲学ならではの視点
第2話へ進む
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「世界哲学」構築に向けた動きが始まっている。西洋中心に発展してきた哲学を根本から組み替え、より普遍的で多元的な哲学の営みを創出するための、日本独自のプロジェクトである。そのきっかけは、ちくま新書『世界哲学史』8巻+別巻の全9巻の成果にある。今、私たちが生きている世界の問題全般に目を向けるため、なぜ新しい哲学は必要なのか。(全9話中第1話)
時間:10分39秒
収録日:2024年9月6日
追加日:2025年1月15日
≪全文≫

●世界哲学をめぐる日本独自のプロジェクト


 皆さん、こんにちは。これから「世界哲学」という主題についてお話ししていきたいと思います。世界哲学というタイトルをすでにお聞きの方もいらっしゃるかもしれませんし、初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。これはここ数年、哲学関連の分野では、さまざまな出版物と学会のシンポジウム等を通じて、新しい動きとして始まっているものです。まず初回、世界哲学とはどういうプロジェクトかということについてお話ししていきたいと思います。

 世界哲学というタイトルにご関心のある方は、ちくま新書から8巻+別巻の全9巻で2020年に出版された『世界哲学史』というシリーズを目にされているかもしれません。伊藤邦武氏、山内志朗氏、中島隆博氏と私の4人で全巻を編集しました。これがかなり多くの方々に読んでいただき、世界哲学史がひとつのブームになったということがあります。

 それに加えて、2024年の1月にはそれを私がまとめ、『世界哲学のすすめ』というタイトルで、同じシリーズの単著でちくま新書から出版しました。他にも、これに関連するさまざまな企画があり、主に日本において、世界哲学というタイトルで、みんな一緒に共同研究を進めているところです。

 今、「日本で」と申しましたが、これは実は日本独自のプロジェクトです。2018年あるいは2017年頃より、日本の哲学界が、こういう主題で世界に向けて、われわれのやっていることを発信しようということで始めたプロジェクトです。ということで、今からお話しする世界哲学史、あるいは世界哲学は、以前に行われたさまざまな試みと関係はありますが、一応新たなコンセプトで進めているものだとご理解いただければ幸いです。

 「世界哲学」というような名前、あるいはそれに類する名前というのは、実はこれが初めてではなく、歴史の中では何度も出てきました。20世紀の前半~中盤では、ドイツの哲学者カール・ヤスパースが、やはり世界哲学的な視点でさまざまな考察をしています。ヤスパース自身も、例えばブッダや孔子などについての本を出版しました。

 日本では20世紀の後半に、ここ東京大学文学部でインド哲学を教えていらした中村元先生などが、まさに自分のインド哲学を中心にしながら、世界哲学の視野で活動を展開されました。


●World Philosophyとしての世界哲学


 そのようなこと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規