AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋
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高浜虚子の小説『丸の内』に学ぶAI時代に大事なリアリズム
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(7)AI時代の人文学のあり方
與那覇潤(評論家)
AI時代の今、学問の中でも特に人文学の世界でAIに妥協する姿が見られる。また、オープンAI創業者がやってしまった“事件”は、「生の人間の感覚」が忘れられがちな現代人にとって象徴的な出来事ともいえる。そこで最終話では、高浜虚子が書いた数少ない小説『丸の内』から、あらためてAI時代に求められる「リアリズム」とはどういうものかを考えてみよう。(全7話中第7話)
時間:18分59秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年8月6日
≪全文≫

●今、学問全体が、AI時代に妥協してしまっている


 という形でAIという時代、AIがどんどん普及していく。かつては人間が行ったことも次々とAIが行っていくようになり、今は文章の処理、言語の処理をAIが代わりにできるようになったというのが、生成AIの衝撃です。

 そういった時代においてこそ文芸評論のような、一見するとアナログの極致――こんなものはAIに淘汰されるに決まっていると思えるような古臭い仕事が、AIには委ねられない、代理することができないということを教えてくれるのではないか、とお話をさせていただきました。

 しかしながら残念なことに、私は思っているのですが、どうも今、評論に限らず学問を含めて、広い意味でいう人文学というものが、AI時代に対抗していく、あるいはAI時代にも消えない価値を担っていくのではなくて、逆に中途半端にAI時代に妥協して、どんどんダメになっていっているような実感を私は持っているわけです。

 例えば1つあるのが、ポリティカルコレクトネスというものを、私は全否定はしないのですが、「とにかく政治的にこういう結論を出すことに決まっている」といった形で、最初から結論を決めて論文を書いてしまう。「こういう言葉はだいたいセットで使いますよね」というものが研究の前から決まっていて、それを適当に組み合わせて、それに合わせて素材も料理する。つまり、ワンセットで使う言葉が決まっていたりするわけです。

 例えば「フェミニズム」という言葉を使ったら、「ジェンダー」という言葉もきっと出てきますね。「マルクス」といったら「資本主義」「ポスト資本主義」という言葉も出てきますね、みたいな感じで、「このキーワードを出したら次はだいたいこのキーワード、このキーワード……と出てくるものが決まっています」というものを組み合わせて、なんとなくそれっぽく文章を書く。そういったタイプの書き方が広まっています。

 これはまさに、ChatGPTなどの生成AIが行っていることを人間がしているだけです。「だいたいこの言葉とこの言葉と組み合わせて使い、だいたいこのあたりのオチに行くのが最大公約数ですよね」という形で既存の概念を組み合わせて、それっぽく文章を書いてしまう。まさに人間がAIのように文章を書く。そうしたあり方が人文学を中心とした文系の学問のあり方でも広がってしまっているわけです。

 あるいは、私は病気を...

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