「イスラム国」の本質と将来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本は中東・イスラム世界にどう向き合うべきか?
「イスラム国」の本質と将来(4)日本は「イスラム国」に対して何をすべきなのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東への人道支援は果たしてテロを助長することになるのか。報道や学問の自由と安心立命は、どこで折り合いがつくのか。また国家はこの問題にどこまで関与できるのか。さまざまな意見、思惑が交錯する中、歴史学者・山内昌之氏が中東・イスラム世界に日本がどう向き合うべきか、一筋の道を示す。(2015年2月16日開催 日本ビジネス協会インタラクティブセミナー山内昌之氏講演 “「イスラーム国」の本質と将来 第一次世界大戦勃発100年から第二次世界大戦終結70年への徒花“、全6話中第4話目)
時間:16分43秒
収録日:2015年2月16日
追加日:2015年3月4日
≪全文≫

●中東人道支援が軍事に転用されるという誤解

 
 私たちにとって語るべきことは、「イスラム国(IS)」の奴隷制の問題やその他たくさんあるのですが、それはまた後ほど時間があればということにします。いま必要なのは恐らく、日本とISの関係をどのようにすべきなのか、ということだと思います。

 日本は簡単に言うと、こうした理屈におびえて中東人道支援をやめるべきなのか。言葉尻を捉えたり揚げ足を取るようで恐縮ですが、事実として報道され、かつNHKで党首の発言として公式に出ているので、挙げざるを得なかったのが、先ほど申した小沢一郎さんの発言です。こうした人道支援でも後方支援に当たるものだからやめるべきだという発言、あるいは、殺害の責任は全て安倍首相にあるという議論。これは既に申したように、シリア難民で困窮を極めているヨルダンをはじめとする国への人道支援が、軍事に転用されるとストレートに考え、誤解している点に間違いの根拠があるのです。


●中東の心臓部ヨルダンの困窮


 ヨルダンのGDPの成長率は2009年の5.5パーセントから13年には2.8パーセントに下がり、最近の歳入はGDP比で24パーセントなのに債務は80パーセント以上に及んでいる、というのが現実です。人口630万人を抱えている国の中に、イラク人難民が40万人いて、70万人のシリア人難民も加わっている。そしてさらに増え続けている国なのです。

 また、ヨルダンの位置を考えてみましょう。ヨルダンの北にレバノン、シリアがあり、東にイラクがあり、南にサウジアラビアがあり、西にイスラエルとエジプトがある。正に中東のへその緒であり、心臓部なのです。しかも、この王政国家は常に人口の70パーセントのパレスチナ人難民を抱えてきている国家です。こうした国が、中東においては安定した内政と外交を誇り、日本とも長期にわたり友好関係にあり、かつ皇室の縁においても、ハーシム王室と日本の皇室は長い間のちぎりもある。こうした王朝国が崩壊していくのは、次にサウジアラビアをはじめとするGCC(湾岸協力会議)に加盟する王朝国家へも波及していくことになります。


●中東安定のために日本の人道支援は不可欠

 
 ということは、どういうことかと言うと、わが国における85~90パーセントにもなろうとしている中東への石油依存構造が、根底から覆されかねない、そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓