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DATE/ 2017.08.11

結局、ベストな「睡眠時間」とは?

 日本は世界的に見ても睡眠時間が短い国だといわれています。厚生労働省が成人を対象に行った調査によると、睡眠時間の平均は6~7時間だったものの、睡眠時間が6時間以下の人の割合がほぼ4割であることがわかりました。6時間以下の睡眠でも生活に支障がないショートスリーパーと呼ばれる人もいますが、その割合はごくわずか。8割程度の人は平均的に7~9時間の睡眠が必要だといわれています。とはいえ、7~9時間は幅の広い数字です。

 このように睡眠は個人差が大きいものではありますが、実際のところ何時間の睡眠時間が望ましいのでしょうか?

適正なのはやっぱり7~8時間

 眠っている時、私たちは脳が覚醒しているレム睡眠と、脳が眠っているノンレム睡眠の状態を繰り返しています。さらにノンレム睡眠は浅い睡眠と深い睡眠にわけられ、細胞の再生や成長ホルモンの分泌が起こるのは深い睡眠の時だといわれています。睡眠時間は90分の倍数が良いといわれますが、これはノンレム睡眠とレム睡眠の周期が90分で1セットになっているからであり、90分くらいで訪れるレム睡眠の時に起きた方がすっきりと目覚められるからなのです。

 フィットネス向けのウェアラブル機器の開発・販売をしているフィットビットジャパンが同社の開発した機器を使って膨大な睡眠データを分析したところ、7~8時間の睡眠の時に、全体の睡眠時間における深い睡眠、レム睡眠の割合がもっとも高くなることがわかりました。逆に7時間以下の睡眠では深い睡眠、レム睡眠の割合が下がってしまうことも判明しています。よく7~8時間の睡眠時間が理想といわれますが、その定説を裏付ける結果ともいえます。

恒常的な6時間以下の睡眠は脳や体に影響も

 日本の成人の4割は睡眠時間が6時間以下だと書きましたが、平均的な睡眠時間を必要とする人が6時間睡眠を2週間続けると、脳の機能が徹夜明け程度にまで落ちてしまうことがペンシルベニア大学などの研究で証明されています。

 また、睡眠不足は脳だけでなく体の免疫機能や循環器機能にも影響を及ぼし、認知症発生のリスクも向上させるといわれています。肥満やうつ病を引き起こす原因ともなりますので、実は寝不足が引き起こす被害は私たちが思っているよりもずっと大きなものだということがわかります。

 睡眠不足の危険性は度々叫ばれていますが、いまだに日本には睡眠時間を削って勤勉に働くことが美徳とされ、睡眠時間が軽視される傾向にあります。しかし、睡眠不足は効率を下げ、健康にも影響を及ぼしてしまうことも実証されています。そろそろその風潮を見直して、しっかり寝て効率良く働くことこそが良いんだと、意識の改革を起こす必要があるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・厚生労働省『平成 27 年 国民健康・栄養調査結果の概要』
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou.pdf
・日本人の睡眠時間 6時間未満が4割
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20170709/Economic_75238.html
・「睡眠は7~8時間がよい」「中高年は眠りが浅い」、定説を活動量計で実証
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1706/28/news030.html
・快適.Life「最適で理想の睡眠時間」
https://www.human-sb.com/mechanism/sleep-time.htm
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授