テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.05

「ルノアール」におじさんが多い理由とは?

 「ちょっと時間があるから、お茶でも飲む?」

 こんな会話は今も昔も変わらないものです。ただ女性にとって、その場になるのはここ近年「カフェ」であり、昔ながらの「喫茶店」に足を運ぶことは少なくなっているのではないでしょうか。

 その一方でウィークデーに働く社会人のオジサンにとって、仕事の合間に一息つける喫茶店の存在は貴重なものです。

 そんなお店で思いつくのは1964年に東京・日本橋に第1号店を開店した「喫茶室ルノアール」です。ネットでは「喫茶店の最強はルノアール」という声もあるほど、愛着を持っている人々は非常に多い模様。そして、他のコーヒーチェーン店と比べると「おじさん」が多いのも特徴的です。では、なぜルノアールに「おじさん」が多いのでしょうか?

「ルノアール」におじさんが多い理由

 そこには「昔からあるから」と一言で片づけられない理由があります。利用者の立場から考えてみましょう。ルノアールのコーヒーの値段は600円程度とやや高めです。学生ら若者にとっては300円でコーヒーが飲める他のチェーン店と比べると、敷居が高いと感じるでしょう。そのため、若者が少なく、相対的に年齢の高い人の利用が多いのです。

 さらに、大正モダンをイメージしたシックな内装、イスやテーブルのゆったりとした配置など、くつろげる環境が整備されています。 2012年に「労政時報の人事ポータル jin-Jour」が行ったインタビューで、当時の代表取締役社長 小宮山文男氏はルノアールのコンセプトを「自宅では味わえない雰囲気を持つ店として、ホテルのロビーを意識した喫茶店にした」と語っています。喫茶室ルノアールのウェブサイトでも「都会のオアシス」をうたい「ビジネスユースや語らいの場としてご利用ください。」と書かれています。

 そして、意外に知られていないこととして、ルノアールでは必ず喫煙ができます。喫煙規制が厳しくなった現在は、愛煙家にとってコーヒーを飲みながらタバコの煙をくゆらせながら物思いに耽れることのできる貴重な場所となっているのです。

 お値段はちょっと高めだけれど、静かで落ち着いてくつろげる空間であることが、仕事の合間にホッと一息つきたいサラリーマンを惹きつけ、「おじさんのオアシス」として定着したと言えるでしょう。

ここ近年はセルフカフェなどの業態も

 実はルノアール、様々な店舗名を持って新たな客層開拓をしています。代表格で言えば「NEW YORKER’S Cafe」でしょう。「コトバンク」の「デジタル大辞泉プラス」によると、「スターバックス」などが日本に定着し始めた1999年に第1号店がオープンしています。いわゆるセルフカフェとして利用したことがある方は多いのではないでしょうか。

 また2015年7月には銀座インズに女性をメインターゲットにした「瑠之亜珈琲」を開店。同社の公式サイトのメニューを見てみると、コーヒーだけでなくオシャレなティーポットに入った紅茶、スムージーや「ブルームーン」といったビールに始まり、女性向けの見た目と内容量の日替わりランチセットも用意されています。

 執筆するにあたり、せっかくなので筆者も「瑠之亜珈琲」に足を運ぶことにしました。やはり、アップルパイをはじめとした女性向きのメニューが多い印象でした。ただ訪れた際の男女比率を見ると、半々と言ったところ。日本屈指のビジネス街ということもあってかもしれませんが、サラリーマンのくつろぎの場所であるということで、ルノアールのDNAを脈々と受け継いでいるのでしょう。

<参考サイト>
・労政時報:トップインタヴュー株式会社銀座ルノアール代表取締役社長小宮山文男さん
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=57369
・喫茶室ルノアール
https://www.ginza-renoir.co.jp/renoir/
・瑠之亜珈琲
https://www.ginza-renoir.co.jp/runoacoffee/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?

東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
2

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点

猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事
3

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
中西輝政
京都大学名誉教授
4

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原

『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
堀口茉純
歴史作家
5

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事