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DATE/ 2018.01.12

「自己啓発本」がヒットし続ける理由とは?

 仕事で、恋愛で、日常生活で、上手くいかない自分を変えたい…そんな思いを抱える人々は多いのではないでしょうか。その際にふと書店、オンラインショップで目に留まってしまうのが「自己啓発本」です。

ベストセラーも数多い自己啓発本

 自分の考え方を改めるための分野である自己啓発本は、20世紀初頭に生まれたとされており、いわゆるベストセラーになった書籍も数多いのです。例えばデール・カーネギー著の『人を動かす』、また、ここ近年では古賀史健、岸見一郎著の『嫌われる勇気』などはその代表例と言えるでしょう。

 オンラインサービス『Amazon』で発表された「Amazonランキング大賞 2017年間ランキング」では、書籍カテゴリ3位に『嫌われる勇気』がランクイン。マンガというテイストを取っていますが、7位の『君たちはどう生きるか』、そして11位の『LIFE SHIFT』、14位の『会話もメールも 英語は3語で伝わります』、19位の『やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』も自己啓発本に分類されます。

必ず効果が出るわけではないのになぜヒットし続けるのか

 さてそんな自己啓発本ですが、「効果がない」と指摘する人も少なくありません。例えば日本経済新聞に掲載された。『キャリアポルノは人生の無駄だ 谷本真由美著 自己啓発「依存症」に警鐘』という書評では、読者が自己啓発の“依存症”にかかっているのでは、という点に注目もしています。

 確かに買えば必ず効果が出るものではない自己啓発本。ではなぜ自己啓発本は出続け、依存することになってしまうのでしょうか?

 『東洋経済新報オンライン』の『「自分への投資」があまり役に立たない理由』という記事では、自己啓発が流行する理由として明記されてあるのは「実行するのが難しいから」という点にあると指摘しています。

 多くの場合、自己啓発本で記される考え方やプロセスは、比較的わかりやすいものが多いのです。つまり成功へのルート、プロセスがきれいな一本道として見えているということです。その単純化したストーリーに気持ちが高揚しますが、現実では何らかの障壁が発生するのは不可避です。そのギャップに悩み続けるから、また新しい自己啓発本を買う……このようなループに入っているとも言えます。

自己啓発本は参考程度に

 こうしたことから大事なのは、自己啓発本はあくまで参考程度に読みつつ、自分らしいスタイルを確立していく、あるいは他人のマネではなくオリジナルを作ることではないでしょうか。そのことがその人本来の魅力になると思います。“隣の芝生は青い”とは言いますが、あまりに周囲を見すぎると、自分のやるべきことを見失ってしまうかもしれませんね。

<参考サイト>
・Amazonランキング大賞 2017年間ランキング
https://www.amazon.co.jp/b/ref=s9_acss_bw_ct_x_ct_1_h_w?_encoding=UTF8&node=5373558051
・日本経済新聞:キャリアポルノは人生の無駄だ 谷本真由美著 自己啓発「依存症」に警鐘
https://www.nikkei.com/article/DGXDZO56884050S3A700C1NNK001/
・東洋経済ONLINE:「自分への投資」があまり役に立たない理由
http://toyokeizai.net/articles/-/192118
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授