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DATE/ 2018.02.27

自己肯定感の本物とニセモノ

 日本人は「自己肯定感」が低いと言われています。自己肯定感とは英語で言うところ「セルフ・エスティーム」です。これは「自尊感情」とも言い換えることができるのですが、『自尊感情革命 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?』(山崎勝之著、福村出版)では、自尊感情を「自律的自尊感情」と「他律的自尊感情」に分けて説明しています。

 自尊感情とは何か。どうすれば自尊感情を高めることができるのか、本書に沿ってご案内します。

「自律的自尊感情」こそ本来の自尊感情

 同書の著者の山崎勝之氏は鳴門教育大学大学院教授、同大学予防教育科学センター所長で、健康・適応への心の影響因を研究し、その知見を基に独創的で効果の高い学校予防教育を開発して全国に展開しています。

 山崎氏は同書において、前述の通り、自尊感情は「自律的自尊感情」と「他律的自尊感情」に分けることができ、そのうち「自律的自尊感情」こそが本来の自尊感情であり、きわめて重要であることを強調しています。

ニセの自尊感情と言われる理由

 ではもう一つの「他律的自尊感情」とは何なのでしょうか。簡単にいえば、「他者との比較により設定される」自尊感情です。

 他律的自尊感情はニセの自尊感情ともいわれていますが、その感情が高い人のことをこう説明しています。「他者との比較や競争に鋭敏で、他人よりも優ることで自尊感情を高めている。このため、自尊感情を高めるために、他者よりも優る競争事態へ選択的に身を置き、また優った経験がより鮮明に記憶化される。しかし実際には劣る場合も少なくないので、この自尊感情の高さは不安定になる。(中略)劣った場合には、言い訳や関連する他者への非難など防衛的な反応がとられることが多い」

 恐ろしいことに、これまでずっと、この他律的自尊感情が学校や社会のスタンダードな自尊感情とされて教育にも取り入れられてきたのだそうです。

自律的自尊感情とは

 一方、自律的自尊感情とは「内発的動機づけ」「自己信頼心」「他者信頼心」の3つすべてが高まった自尊感情だということです。補足すると、自己信頼心とは、自分に自信があり、有能であるととらえる性格で、同時に不安や攻撃性が低く、他者信頼心と伴う概念のことで、他者信頼心とは、他者を好意的に見て、他者から好意的に見られているという安定した感覚のもとに他者を信頼する性格のことだそうです。

 また、山崎氏は「自分を信頼でき、他者を信頼でき、その上で自分のやりたいことをやる自律的自尊感情が高い人は幸福な人生を過ごすことができると想像されます」と述べています。実は、自律的自尊感情が形成されるのは主に乳幼児期で、自律的自尊感情は親の「無条件の愛」によって育まれていきます。

 では大人になってから、自律的自尊感情の高い人間になることはできないのでしょうか。そんなことはありません。決して簡単なことではありませんが、山崎氏によると、それは、自律的自尊感情の概念をしっかり学習したうえで、相対的に他の人と比較の上で生きている自分に気づき、その行動を変えることです。

ポイントは、社会人になって最初、結婚して数年後、中年期以降

 社会人になって最初の頃、結婚して数年後、中年期以降が変化のポイントになると山崎氏は指摘しています。なぜなら、そうした時期には、他律的自尊感情が高いと健康上あるいは適応上の問題が出てくるからだそうです。

 たしかに、社会人になれば職場でのストレス、結婚すれば結婚生活でのストレスや離婚の危機、そして中年期以降になれば生活習慣病などに苦しむことがあります。こうしたことの原因のほとんどが自律的自尊感情が低く、他律的自尊感情が高すぎると思った方がいいとのことです。

 逆にいえば、そうしたトラブルは変化するためのチャンスでもあります。もちろん、トラブル以前に自律的自尊感情が低い、もしくは他律的自尊感情が高いと自覚している人は対策を行った方がよいでしょう。ただし、変えようと思ってもすぐに効果が出るものではありません。大事なことは「他人の目を気にしすぎていないか」ということです。他人の目から解放されることが人生を幸せに過ごしていくための第一歩となることでしょう。

<参考文献>
『自尊感情革命 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?』(山崎勝之著、福村出版)
https://www.fukumura.co.jp/book/b313324.html

<関連サイト>
鳴門教育大学 発達健康心理学研究室
http://www.naruto-u.ac.jp/facultystaff/ky341349/

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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授