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DATE/ 2018.10.07

男性も「乳がん」になる可能性はあるのか?

 さくらももこさん、小林麻央さん、北斗晶さんなど、近年、著名人の乳がん罹患の報道が増えています。それもあって乳がんに対する関心度は高くなっていますが、検診率は諸外国に比べて低いのが現状です。

 「なぜ検診率は低いのか」「検診はどんな内容なのか」などの基礎知識から「男性も乳がんになる可能性もある」といった意外な話まで、男性も女性も知っておきたい情報をお伝えいたします。

「受ける時間がない」「健康状態に自信があり、必要性を感じない」

 国立がんセンターの統計によると、昨年2017年度、乳がん罹患予測は約9万人でした。また、同年の乳がんによる死亡者は1万4千人超。現在、11人から12人に1人の確率で日本人の女性は乳がんに罹ります。

 こうした統計や著名人の罹患の報道を聞くと、もっと検診を受ける人が増えればいいのにと思う方も少なくないでしょう。アメリカでは受診率が80パーセントを超えています。なぜ日本人は検診を受けないのでしょう。

 日本人が検査を受けない理由は、2017年の内閣府大臣官房政府広報室の世論調査によると、「受ける時間がない」が一番多く、次いで「健康状態に自信があり、必要性を感じない」。この二つがどちらもそれぞれ約30パーセントを占めています。三番目に多いのが「心配な時はいつでも医療機関を受診できる」で約23パーセントでした。

マンモグラフィの検査は痛い

 さて、検診はどんな内容なのでしょう。下着メーカーのワコールの「ピンクリボン活動」の記事よると、まずは「問診」があります。月経周期や妊娠・出産歴、病歴などの質問に答えます。次に「視触診検査」。乳房にしこりなどがないか医師がチェックしますが、これは行わない場合もあるそうです。

 そして、マンモグラフィや超音波検査による「画像検査」があります。視触診だけでは小さながんを見落とす可能性もあるため、画像検査を併用するのがいいそうです。ただし、マンモグラフィは撮影する際に乳房を板で挟み圧迫するため痛みを感じるという声をよく聞きます。また、X線被ばくのリスクもあります。

痛くなくて安心な新しい検査法

 超音波検査は、放射線被ばくを避けることができるため、妊娠中の方には適しています。乳房の圧迫もありません。ただし、デメリットがあり、「現在のところ、検診において死亡率減少効果があったと科学的に証明されているわけではありません」とピンクリボン活動の記事には記されています。

 こうした検査環境に対し、神戸新聞NEXTの医療ニュースによると、神戸大や兵庫県内の医療機関などによる研究グループが、マンモグラフィに代わる痛みのない新しい検査法を開発しつつあるのだそうです。痛みがないだけでなく、X線を使わず、アレルギー反応などの副作用がある造影剤も必要ないとのこと。これは期待大ですね。

男性も乳がんになるリスクがある

 乳がんといえば、女性の病気と考えている方が多いと思いますが、実は男性も乳がんになります。なぜなら、男性にも乳腺があるからです。

 ただし、女性と比べるとやはり圧倒的に罹患率は低いのであまり過度に心配することはありません。でも、罹患するリスクがあることを覚えておいてください。また、よく乳がんと間違えられる症状があることも覚えておいてください。よく間違えられる症状とは、ホルモンバランスの影響で、思春期や更年期に発症しやすい女性化乳房症です。

 経験のある方もいらっしゃるかもしれませんが、乳房が女性のように膨らみ、乳房が腫れてシコリができる症状を女性化乳房症といいます。

 もし、すこしでも気がかりなことがあれば、まずは専門医に相談してみてください。乳腺外来となるとちょっとハードルが高いという方は、初めは一般の外科でもいいかもしれません。

<参考サイト>
・国立がんセンター:最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
・内閣府大臣官房政府広報室:がん対策に関する世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-gantaisaku/index.html
・神戸新聞NEXT:乳がん新検査「痛み・圧迫感ない」 神大など開発
https://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201808/0011591900.shtml
・ワコールピンクリボン活動:検診について
https://www.wacoal.jp/pink_ribbon/medicalcheck/
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