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DATE/ 2018.11.08

ファミマがドンキ化した結果、売れたモノとは?

 コンビニで買える美味しいものと言われたら皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?売り出し中のスイーツに、有名飲食店とのコラボ商品、お馴染みのお弁当など、パッと決められないほどメニューが充実していますよね。コンビニの隣がコンビニという風景が当たり前になってきたこの時代、各社がより目玉となるヒット商品を探しています。

 そんな中、ある秋冬の風物詩ともいえる商品が大手チェーンの実験店で、経営陣から「なぜ売れているのかわからない」と言わしめるほどの売り上げ注目を集めました。その商品はと言いますと、昔は小型トラックでおじさんが売りにきた栗より美味い十三里、そう、「焼き芋」です。

ファミマとドンキの提携店、誕生

 2017年6月、ユニー・ファミリーマートHDとドン・キホーテHDが提携し、共同店舗が都内3箇所でオープンしました。ファミリーマートの運営スタイルに、ドン・キホーテの販売商品や陳列方法を組み合わせ、従来の顧客が満足してくれるかデータを集めようという実験的な店舗です。

 店内では商品が天井まで届きそうな勢いで並べられる、いわゆる「激安ジャングル」式が採られ、ドン・キホーテ推奨品が半数以上を占めています。日用品や菓子、加工食品のラインナップを充実させたことが好評で、「コンビニ離れ」が進んでいるといわれる若者も多く来店するようになり、売り上げは前年度を大きく上回ったと報告が出ています。

経営陣が驚かされた「焼き芋」の売り上げ5位

 今後のコンビニの在り方に一石を投じた実験店ですが、単品売上金額ランキングの5位に「焼き芋」がランクインしたことがファミリーマート陣営を驚かせているようです。焼き芋……昔でこそ秋冬の風物詩でしたが、昨今はドン・キホーテやスーパーマーケットでも専用機の中で温められているのが見られるようになっていますよね。

 しかし、これはファミリーマート陣営には驚きだったようです。9月、実験店舗の売り上げが好調であることを発表した際、記者からの「焼き芋の好調は何故か?」という質問に、常務執行役員の佐藤英成商品・物流・品質管理本部長は、「なぜ売れているかはわからない」と回答しています。

 とはいえ、焼き芋は元々人気の食べ物ですよね。カロリーこそ高いですが、食物繊維にビタミンCも豊富、腸内も活性化してお通じにも吉。腹持ちも良く、何より美味しい。コンビニエンスストアに限らず外食産業に頼るとどうしても野菜が不足しがちですし、需要はかなりあるのではないでしょうか。

必要は発明の母、焼き芋機の技術革新

 そんな焼き芋がいつの間にか季節を問わずスーパーで手軽に買えるようになったのは、技術革新のお陰でした。2000年代以前はガス式の焼き芋機が主流で、安全面を考慮して外で使うことを想定して作られていたそうです。そこに屋内でも使える焼き芋機を作って欲しいという依頼があり、電気式の焼き芋機が誕生、これが好評であちこちに設置されるようになりました。

 また、2017年には日用家電「焼き芋メーカー」なるものまで飛び出して注目を浴びています。一見小型のホットプレートのようですが、焼き芋を作るための専用プレートが付属しており、20センチの芋が2本ほど焼けるようです。ドン・キホーテや家電量販店で売上が伸びており、開発元からは予想外の大ヒットだとコメントが出ていました。

全ファミマで焼き芋が食べられる日はやってくる?

 にわかに注目株となっている焼き芋ですが、今すぐ全国のファミリーマートで買えるようになるかというと、そう簡単にはいかないようです。ファミリーマートは、統合を進めているサークルKサンクスが以前焼き芋を販売していたことがあるので、什器や仕入路線はあるものの、すぐに全国約1万7000店舗に安定的に焼き芋を供給するのは難しいという見解を示しました。

 また、お弁当の鮭の切り身から卵焼きまで大きさを揃えるコンビニエンスストアで、違う大きさの焼き芋を同一の値段で売って良いものだろうかというジレンマもあるようです。それならお肉屋さんのように量り売りではどうでしょう?と簡単にはいかないのかもしれませんが、全国どこでも食べられるようになってくれる日が来るのは、焼き芋ファンとして嬉しい限りです。
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