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DATE/ 2019.03.26

「SNSストーカー」に遭わないための5つの心得

 最近、「ネットストーカー」という言葉をよく見かけるようになりました。その被害が多発しているからです。ネットストーカーとは何か。被害に遭わないようにするにはどうすればいいのか。わかりやすく解説していきます。

ネットストーカーとは何か

 みなさんもご存知のようにストーカーとはしつこくあとをつけまわしてくる人のことです。そのネット版が「ネットストーカー」です。とくにSNSを通じてネットストーカー行為におよぶ犯罪が続出しています。

 おそろしいことに、エスカレートするとネットの世界を飛び出して、ネットストーカーからリアルのストーカーに進化し、SNSに記載された位置情報などをたよりにして自宅に押し寄せてくるケースもあるそうです。

引越しを検討する事態にまで発展

 総務相も「国民のための情報セキュリティサイト」という記事で18の事例のひとつとして「ネットストーカーに注意」と警告しています。ここに掲載されている具体例を見てみましょう。要約してお伝えします。

 女性のNさんは、SNSを日常的に利用していました。ある日、面識のない男性から「僕とつきあってください」というメッセージが届きました。しつこかったため「迷惑ですので、もうメッセージしないでください」と伝えると事態は急変。脅迫的なメッセージが送られたり、Nさんを誹謗中傷する投稿が行われたりするようになり、Nさんの自宅住所を把握していることを知らせるメッセージまで来たといいます。結局、Nさんは、SNSのアカウントを削除し、引越しを検討することになりました。

犯罪の境界線

 ネットストーカーの行為はどこからが犯罪になるのか。ストーカー規制法によると、「監視していると告げる行為」、「面会や交際、復縁等義務のないことを求める」、「拒否しているにもかかわらず、何度もファクシミリや電子メール・SNS等を送信してくる」「中傷したり名誉を傷付けるような内容を告げたりメールを送る」等が該当します。

 罰則としてストーカー行為をした者は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」、また、禁止命令等に違反した者は「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されます。

 上記のNさんに行った男性のケースもあきらかにストーカー規制法に違反していることがわかります。被害に発展した分岐点は「迷惑ですので、もうメッセージしないでください」と伝えた時点でしょう。その後に男性は急変しました。

Nさんの対応は正しかったのか

 ではNさんはどう対処すればよかったのか。警視庁のサイトでは「防犯の心構え」として「面会や交際の要求」があった場合、「はっきりと拒否の姿勢を示す」とあります。これをみるとNさんの対応は正しかったように思えます。

 また、「拒否しているにもかかわらず、何度もファクシミリや電子メール・SNS等を送信してくる」場合の対応について「余分な会話はせず、相手に「電話をかけてこないで下さい。」「警察に訴えます。」など、毅然とした態度で拒絶の意思を伝える」とあります。

 一方、犯罪行為にあたる「著しく粗野又は乱暴な言動をすること」の項目では「ストーカーは、交際などの要求を拒まれると、乱暴な行動をとります」とあります。毅然とした態度は必要だけれども、相手が乱暴になる可能性があるということです。

SNS利用者が覚えていくべき5つの心得

 Nさんはかなり判断の難しい局面に置かれていたわけです。これが正しいという対応策はなく、その場その場でとるべき対応は変わるようです。いずれにしても、「SNSストーカー」に対して、SNS利用者は次に挙げる5つの心得を覚えておくとよいでしょう。

・プロフィールや写真から場所や個人情報を特定されないように注意すること
・相手の要求には、はじめから毅然とした態度で拒否すること
・要求を断ったときに相手が乱暴になる可能性があることを知っておくこと
・すみやかに警察や信頼できる人に相談し、自分だけで抱え込まないこと
・SNSへの投稿をやめ、アカウントの削除も検討すること

 ということで、SNSを利用しているみなさん、そこにはネットストーカーが存在する可能性があることもどうかお忘れなく。

<参考サイト>
・国民のための情報セキュリティサイト│総務省
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/enduser/case/06.html
・ストーカー規制法│警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/dv/kiseho.html
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授