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ネットに名前や顔を公開する?世代の認識の違い
「ネット上匿名 vs 実名」の論争は、ネット上で絶えることのない話題ですが、この5月に目新しい意見として、SNSで次のような投稿がありました。
「気づいてない人も結構いるんだけど、"ネットでは本名を絶対に書かない"って意識を持っているのは"'90~'00年代のネット文化"で育った人だけだぞ」(2019年5月15日)
投稿者によると、「それより上の世代も下の世代も本名がデフォ」(デフォルト)。「匿名な人は自分の周りも匿名だから見落としがち」だけれど、「匿名の方が異質」だというものでした。
すぐ「ネチケット(死語)の世代ですね。」と同意があり、「今の時代は、本名を出さずともユーチューバーなら顔だので特定されちゃう」との指摘。たしかに2008年に上陸したFBでは実名(本名)が要求されるし、インスタグラムでも実名(らしい)アカウントが目立つようになりました。また、メインのアカウントに対し、「裏垢」「サブ垢」と呼ばれる別アカウントを持つことが増えていたりという風潮も目立ちます。
パソコン通信の時代からのネット・ユーザーからは「匿名ではなくハンドルネームを名乗ることが面白かったのだ」との意見も飛び出し、ネット発言の醍醐味は前向きなロール・プレイングだという「仮想空間」議論にもつながっています。
少し、知人に意見を求めたところ、実名でのリスクと恩恵といった事象を聞くことができました。
・よくわからずに実名でTwitterを登録して、いろいろつぶやいていたら、ストーカーっぽくリアルにつきまとわれて、怖くなってアカウントを削除しました。(40代女性)
・すすめられるままにFacebookに登録したら、実名のため、元カノに見つけられ、困ったことに!(30代男性)
・ヤフオクの始まりの頃、登録を実名のアルファベットでしてしまい後悔していたのですが、逆に信用度があがって、良い取引ができています。悪いことはできないですが(50代男性)
そもそもネット上の匿名/実名では、何が争われているのでしょうか。「匿名派」が主張するのは、個人情報保護の必要性、実名を開示する危険性です。「実名派」はそれに対して、匿名ゆえのネット・リテラシーの低さ、相次ぐ「バイトテロ」問題を筆頭に、モラルの低い発言の膨大さがネット言論全体の質を左右していると言います。
では、実際にネット上匿名:実名の比率はどのぐらいなのでしょうか。少し古い情報ですが、2014年の「情報通信白書」(総務省)によると、SNSの利用状況と匿名・実名比率は以下のように発表されています。
・Facebook:利用率41.1%、匿名10.1%、実名29.8% 両方(複数アカウント)1.2%
・Twitter:利用率40.2%、匿名30.2%、実名7.8%、 両方(複数アカウント)2.2%
・チャット系SNS(LINE/WhatsApp/Skepe等):利用率41.6%、匿名20.8%、実名18.1%、両方(複数アカウント)2.7%
・掲示板:利用率25.5%、匿名22.0%、実名1.5%、 両方(複数アカウント)2.0%
・ブログ:利用率31.5%、匿名26.7%、実名2.5%、 両方(複数アカウント)2.3%
国際比較すると、Facebookの利用率が83.5%に上るアメリカでは匿名12.6%、実名67.0%、両方3.9%と圧倒的に実名派が多く、最も匿名率の高い掲示板でさえ匿名24.3%に対し実名16.6%、両方6.0%と、名前の開示を進めています。
各国をFacebookで比べてみると、
フランスは匿名19.8%、実名50.0%、両方3.8%で合計73.6%が利用、イギリスは匿名10.9%、実名68.5%、両方3.8%で83.2%が利用、シンガポールでは匿名17.6%、実名67.3%、両方7.3%の92.2%が利用、韓国では匿名12.3%、実名57.4%、両方6.5%の76.2%が利用です。
世界的に見て日本の匿名好きは際立っており、「法的なプライバシー保護の不整備度合いや対応の遅れも一因(実名利用におけるリスクが高く、法的な歯止めが効きにくい)」だが、「インターネットの普及発展過程において、匿名利用による掲示板が大いに用いられたこと」が原因だと、「ガベージニュース」では分析しています。
1. SNSで知り合う人たちのほとんどは信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:1.6/11.3/51.0/36.1
・アメリカ:22.1/37.3/21.4/14.2
・ドイツ:13.4/33.5/28.3/24.8
・イギリス:22.5/45.8/18.9/12.6
2. SNS以外のインターネットで知り合う人たちのほとんどは信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:1.4/12.8/51.4/34.4
・アメリカ:18.6/40.5/25.6/15.3
・ドイツ:9.3/34.9/32.7/23.1
・イギリス:15.2/47.0/25.3/12.5
3. インターネットで知り合う人たちについて、信頼できる人と信頼できない人を見分ける自信がある
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:2.5/18.1/48.7/39.7
・アメリカ:26.0/40.7/21.0/12.3
・ドイツ:18.0/39.1/25.7/12.2
・イギリス:23.1/48.0/20.1/8.9
日本人のネットに対する警戒心は、欧米とはケタ違いです。そして、それもこれも「自分が見分ける自信がないから」と白状しているところが、リテラシーを築き損なっている証拠になるでしょう。ただし、オフラインでの信頼度調査の結果もご紹介します。
4. ほとんどの人は信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:2.8/30.9/46.2/20.1
・アメリカ:20.8/42.9/25.1/11.2
・ドイツ:19.6 /48.4/22.7/9.3
・イギリス:18.0/52.4/22.42.2
5. 自分は信頼できる人と信頼できない人を見分ける自信がある
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:4.2/32.4/43.9/19.5
・アメリカ:28.6/46.1/18.6/6.2
・ドイツ:26.2/51.5/15.1/2.2
・イギリス:26.3/54.8/14.8/4.1
日本人は、他人も全く信頼していなければ自分の判断力についても信を置けない、他国と比べても稀有な国民性を持っているようです。これでは確かに、日々のストレスは募る一方ですね。
「気づいてない人も結構いるんだけど、"ネットでは本名を絶対に書かない"って意識を持っているのは"'90~'00年代のネット文化"で育った人だけだぞ」(2019年5月15日)
投稿者によると、「それより上の世代も下の世代も本名がデフォ」(デフォルト)。「匿名な人は自分の周りも匿名だから見落としがち」だけれど、「匿名の方が異質」だというものでした。
すぐ「ネチケット(死語)の世代ですね。」と同意があり、「今の時代は、本名を出さずともユーチューバーなら顔だので特定されちゃう」との指摘。たしかに2008年に上陸したFBでは実名(本名)が要求されるし、インスタグラムでも実名(らしい)アカウントが目立つようになりました。また、メインのアカウントに対し、「裏垢」「サブ垢」と呼ばれる別アカウントを持つことが増えていたりという風潮も目立ちます。
パソコン通信の時代からのネット・ユーザーからは「匿名ではなくハンドルネームを名乗ることが面白かったのだ」との意見も飛び出し、ネット発言の醍醐味は前向きなロール・プレイングだという「仮想空間」議論にもつながっています。
そもそもネット上匿名:実名の問題は?
結局、この投稿も「匿名と実名、どちらがいいのか」の問題に対する決め手としては機能せず、やはり議論は振り出しに戻ってしまいます。少し、知人に意見を求めたところ、実名でのリスクと恩恵といった事象を聞くことができました。
・よくわからずに実名でTwitterを登録して、いろいろつぶやいていたら、ストーカーっぽくリアルにつきまとわれて、怖くなってアカウントを削除しました。(40代女性)
・すすめられるままにFacebookに登録したら、実名のため、元カノに見つけられ、困ったことに!(30代男性)
・ヤフオクの始まりの頃、登録を実名のアルファベットでしてしまい後悔していたのですが、逆に信用度があがって、良い取引ができています。悪いことはできないですが(50代男性)
そもそもネット上の匿名/実名では、何が争われているのでしょうか。「匿名派」が主張するのは、個人情報保護の必要性、実名を開示する危険性です。「実名派」はそれに対して、匿名ゆえのネット・リテラシーの低さ、相次ぐ「バイトテロ」問題を筆頭に、モラルの低い発言の膨大さがネット言論全体の質を左右していると言います。
では、実際にネット上匿名:実名の比率はどのぐらいなのでしょうか。少し古い情報ですが、2014年の「情報通信白書」(総務省)によると、SNSの利用状況と匿名・実名比率は以下のように発表されています。
・Facebook:利用率41.1%、匿名10.1%、実名29.8% 両方(複数アカウント)1.2%
・Twitter:利用率40.2%、匿名30.2%、実名7.8%、 両方(複数アカウント)2.2%
・チャット系SNS(LINE/WhatsApp/Skepe等):利用率41.6%、匿名20.8%、実名18.1%、両方(複数アカウント)2.7%
・掲示板:利用率25.5%、匿名22.0%、実名1.5%、 両方(複数アカウント)2.0%
・ブログ:利用率31.5%、匿名26.7%、実名2.5%、 両方(複数アカウント)2.3%
国際比較すると、Facebookの利用率が83.5%に上るアメリカでは匿名12.6%、実名67.0%、両方3.9%と圧倒的に実名派が多く、最も匿名率の高い掲示板でさえ匿名24.3%に対し実名16.6%、両方6.0%と、名前の開示を進めています。
各国をFacebookで比べてみると、
フランスは匿名19.8%、実名50.0%、両方3.8%で合計73.6%が利用、イギリスは匿名10.9%、実名68.5%、両方3.8%で83.2%が利用、シンガポールでは匿名17.6%、実名67.3%、両方7.3%の92.2%が利用、韓国では匿名12.3%、実名57.4%、両方6.5%の76.2%が利用です。
世界的に見て日本の匿名好きは際立っており、「法的なプライバシー保護の不整備度合いや対応の遅れも一因(実名利用におけるリスクが高く、法的な歯止めが効きにくい)」だが、「インターネットの普及発展過程において、匿名利用による掲示板が大いに用いられたこと」が原因だと、「ガベージニュース」では分析しています。
日本人はネット人脈を警戒しているだけではなかった!
また、最新版「情報通信白書」(平成30年版)では驚くべき数字を見つけました。「オフラインやオンラインで知り合う人の信頼度(国際比較)」です。1. SNSで知り合う人たちのほとんどは信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:1.6/11.3/51.0/36.1
・アメリカ:22.1/37.3/21.4/14.2
・ドイツ:13.4/33.5/28.3/24.8
・イギリス:22.5/45.8/18.9/12.6
2. SNS以外のインターネットで知り合う人たちのほとんどは信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:1.4/12.8/51.4/34.4
・アメリカ:18.6/40.5/25.6/15.3
・ドイツ:9.3/34.9/32.7/23.1
・イギリス:15.2/47.0/25.3/12.5
3. インターネットで知り合う人たちについて、信頼できる人と信頼できない人を見分ける自信がある
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:2.5/18.1/48.7/39.7
・アメリカ:26.0/40.7/21.0/12.3
・ドイツ:18.0/39.1/25.7/12.2
・イギリス:23.1/48.0/20.1/8.9
日本人のネットに対する警戒心は、欧米とはケタ違いです。そして、それもこれも「自分が見分ける自信がないから」と白状しているところが、リテラシーを築き損なっている証拠になるでしょう。ただし、オフラインでの信頼度調査の結果もご紹介します。
4. ほとんどの人は信頼できる
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:2.8/30.9/46.2/20.1
・アメリカ:20.8/42.9/25.1/11.2
・ドイツ:19.6 /48.4/22.7/9.3
・イギリス:18.0/52.4/22.42.2
5. 自分は信頼できる人と信頼できない人を見分ける自信がある
(国名:そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そうは思わない)
・日本:4.2/32.4/43.9/19.5
・アメリカ:28.6/46.1/18.6/6.2
・ドイツ:26.2/51.5/15.1/2.2
・イギリス:26.3/54.8/14.8/4.1
日本人は、他人も全く信頼していなければ自分の判断力についても信を置けない、他国と比べても稀有な国民性を持っているようです。これでは確かに、日々のストレスは募る一方ですね。
<参考サイト>
・ガベージニュース:諸外国別に見るソーシャルメディアの実名・匿名の利用実態(2014年)
http://www.garbagenews.net/archives/2189125.html
・平成30年版情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/index.htm
・ガベージニュース:諸外国別に見るソーシャルメディアの実名・匿名の利用実態(2014年)
http://www.garbagenews.net/archives/2189125.html
・平成30年版情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/index.htm
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