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DATE/ 2019.10.23

不眠に過眠…睡眠障害とは何か?

 「睡眠障害」とは、「睡眠に何らかの異常のある状態」です。

 2014年に刊行された米国睡眠医学会による、睡眠障害国際分類(ICSD)の第3版(ICSD-3)では、睡眠障害を以下のように7分類に大別しています。

 【睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)】
1)不眠症
2)睡眠関連呼吸障害群
3)中枢性過眠症群
4)概日リズム睡眠・覚醒障害群
5)睡眠時随伴症群
6)睡眠関連運動障害群
7)その他の睡眠障害

「睡眠障害」の4大分類と主な症状

 上記で紹介したICSDの7分類は医学の専門家向けのため、筑波大学教授で筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構副機構長の櫻井武氏は、「睡眠障害」をメカニズムから理解しやすくするために、以下のように4分類に大別のうえ、さらに各症状などをわかりやすくまとめています。

 【睡眠障害の種類】(『睡眠障害のなぞを解く』より)
1)「不眠症」 夜眠れない:以下の4つのうち1つ以上あてはまり、それが週3回、3カ月以上続いた場合
・入眠障害…寝るまでに1時間以上かかる
・中途覚醒…一晩に2回以上党醒して、その後なかなか寝つけない
・早朝覚醒…朝の目覚めが普段より2時間以上早く、目覚めた後眠れない
・熟眠障害…ぐっすり眠ったという実感がなく、寝足りなさが常に残る

2)「過眠症」 日中に、仕事などの作業に支障をきたすような眠気を感じる
・ナルコレプシー…睡眠・覚醒パターンの乱れにより、強烈な眠気を感じる
・うつに伴う過眠症…うつ病は睡眠障害を伴うことが多く、不眠または過眠のかたちであらわれる
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)…気道の閉塞により睡眠が妨げられた結果、過眠が起こる
・特発性過眠症…原因不明の眠気を主訴とする過眠
・その他…概日リズム障害による過眠、感染症による眠気、薬物による眠気

3)「概日リズム障害」 睡眠と覚醒のリズムが乱れる
・睡眠相後退症候群…望ましい入眠時間よりもかなり遅れて眠り(午前3~4時)、朝起きられない(正午ころ起床)。このため社会生活に支障をきたす状態
・睡眠相前進症候群…寝る時刻が早くなり、夜起きていることができない
・非24時間睡眠覚醒症候群…体内時計が24時間よりも長いサイクルで睡眠と覚醒を繰り返すことにより、毎日少しずつリズムがずれる。夜更かし、朝寝坊、昼夜逆転などを定期的に繰り返す

4)「睡眠時随伴症」 睡眠中に異常な行動を伴う
・ノンレム睡眠時に起こる睡眠時随伴症…夢中遊行症、歯ぎしり、夜驚症、夜尿症、夜間摂食障害
・レム睡眠時に起こる睡眠時随伴症…レム睡眠行動障害

 そのうえで櫻井氏は、「おもな睡眠障害(=睡眠異常)は、不眠症と過眠症の2つ」と述べています。

近年の睡眠事情と「睡眠障害」の関係

 2018年に厚生労働省により発表された「国民健康・栄養調査(平成29年)」では、「40歳代で睡眠の状況に課題」とポイントに取り上げられています。そして「睡眠の状況」の項目では、以下の問と回答結果が公表されています。

 【1日の平均睡眠時間(20歳以上、性・年齢階級別)】
問:ここ1ヶ月間、あなたの1日の平均睡眠時間はどのくらいでしたか。
結果の概要:1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性35.0%、女性33.4%である。6時間未満の者の割合は、男性36.1%、女性42.1%であり、性・年齢階級別にみると、男女とも40歳代で最も高く、それぞれ48.5%、52.4%である。

 【睡眠で休養が十分にとれていない者の割合の年次比較】
問:ここ1ヶ月間、あなたは睡眠で休養が十分とれていますか。結果の概要:ここ1ヶ月間、睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は20.2%であり、平成21(2009)年からの推移でみると、有意に増加している。

 これらの調査結果から、少なくとも日本人成人の20%が慢性的な睡眠不足であり、近年は増加傾向にもあることがうかがえます。睡眠不足のすべての人が不眠症とはいえませんが、睡眠不足は不眠症だけではなく、過眠症などの「睡眠障害」をも発生させる大きなリスクファクターでもあります。

 なお、「睡眠障害」の原因はさまざまではありますが、主な原因に以下の5点が挙げられています。
1)心理的原因:何らかのストレスに関連して起こる(家族や親友の死、仕事上の問題など)
2)身体的原因:身体の病気や症状が原因で起こる(痛みやかゆみを伴う疾患、喘息発作や頻尿など)
3)精神医学的原因:精神や神経の病気や症状が原因で起こる(不安、抑うつなど)
4)薬理学的原因:服用している薬、アルコール・カフェイン・ニコチンの摂取などが原因で起こる
5)生理学的原因:睡眠を妨げる環境により起こる(時差ボケ、ライフスタイルの変化など)

「睡眠障害」の予防と対処

 櫻井氏が、「どんな動物も睡眠なしでは生きられない。眠らなければ免疫力、記憶力が低下し、健全な精神も全身機能も維持できない」「睡眠は多少のコントロールは効くものの生まれ持った体質は変わらない」「不足した睡眠は翌日の睡眠で補う。他のもので代用することはできません」と断言しているように、睡眠は心身の機能にとって重要な存在です。

 同時に、睡眠はコントロールが難しい生理的な状態でもあるため、「睡眠障害」を抱えた人の悩みは大きく、改善のための方策も一人ひとり時期や状況によって異なってきます。しかも、睡眠に意識が向きすぎたり「睡眠障害」に対する不安自体が大きくなりすぎたりすると覚醒レベルを上げてしまい、さらに「睡眠障害」の状況を強化してしまう危険性があります。

 そこで櫻井氏は、眠るスキルの向上を提唱し、「より良い睡眠をとるTips」11点を挙げています。

 【より良い睡眠をとるTips】(『最新の睡眠科学が証明する必ず眠れるとっておきの秘訣!』より)
1)眠りにこだわりを持たない
2)寝室を眠ること以外に使わない
3)15分間眠れなかったら居間に戻る
4)必要以上に早く寝ようとしない
5)適切な時間に眠気が起こるような生活をする
6)朝、光を浴びて体内時計をリセットする
7)昼寝の理想は20分以内
8)睡眠薬は「眠れる」体験を得られたら卒業する
9)睡眠の評価は睡眠自体で行ってはいけない
10)昼間に適度な運動をする
11)自分にとって最適な睡眠時間を知る

 生活環境や生活習慣によって難しいこともあるかもしれませんが、「睡眠障害」に心あたりのある人や良い睡眠をとりたい人は、ぜひできるところから試してみてください。そして、それでも「睡眠障害」が改善しない場合や自己判断で睡眠薬に頼る前などには、「睡眠障害」の専門医に診てもらうことも、積極的に取り入れてみてほしいと思います。

<参考文献・参考サイト>
・「睡眠障害」、『イミダス 2018』(島悟・佐藤恵美、集英社)
・『睡眠障害国際分類 第3版』(米国睡眠医学会著、日本睡眠学会診断分類委員会訳、ライフ・サイエンス)
・『睡眠障害のなぞを解く』(櫻井武著、講談社)
・平成29年「国民健康・栄養調査」の結果 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
・睡眠障害の原因|不眠・眠りの情報サイト スイミンネット
https://www.suimin.net/step1/cause/
・『最新の睡眠科学が証明する必ず眠れるとっておきの秘訣!』(櫻井武著、山と溪谷社)
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