テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.12.16

コンビニ3強時代、各社のいまの状況は?

 コンビニ業界は、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3つのチェーンが日本全国で陣取り合戦をしています。業界トップはセブンイレブンですが、2019年7月からスタートさせたスマホ決済アプリ「セブンペイ」に対して不正アクセスがあった影響で、ややイメージを悪くしたこともあってやや苦戦状態のようです。一方ファミリーマートはサークルKサンクスを統合したことにより、一気に店舗数を増やしました。ローソンはヒット商品を連発して追い上げています。

 ここではそれぞれの現状を少し詳しく見てみましょう。

コンビニは日本に5万8千店、最多はセブンイレブン

 各コンビニ店舗数を見てみましょう。ファミリーマートの「2019年統合レポート」によると、2019年2月末時点で以下のとおり(数字は国内店舗数)。

1位 セブンイレブン:20,876
2位 ファミリーマート:16,430
3位 ローソン:14,859
4位 ミニストップ:2,197
5位 デイリーヤマザキ:1,473
6位 セイコーマート:1,202
7位 コミュニティ・ストア:509
8位 JR東日本(New Days):492
9位 ポプラ:475
合計:58,313

 日本国内のコンビニ店舗は58,313店あり、そのうちの約36%がセブンイレブン、約28%がファミリーマート、25%がローソンということになりました。この3社でおよそ9割を占めています。コンビニの寡占状態が分かる数字となりました。

 またチェーン全店売上高で比較すると、セブンイレブンは4兆8980億円、ファミリーマート2兆9820億円、ローソン2兆2360億円となっています。セブンイレブンが2兆円近い差をつけてトップです。業界全体としては、以前よりは伸び幅を縮小しつつも伸びています。ただし都市部ではほぼ飽和状態にあり、海外展開を加速する方向に向かっているようです。

 また、人手不足に伴う24時間営業の問題など、今後もこれまでと同じ形態で経営できるかどうかは未知数です。

ローソンの「バスチー」「悪魔のおにぎり」などなど売れ筋

 日経トレンディ(2019年12月号)が発表した「2019年ヒット商品ベスト30」では、13位にローソンの「バスチー(バスク風チーズケーキ)」が選ばれています。2019年3月の発売後3日間で売上100万個を突破し、9月15日時点ではシリーズ累計2450万個以上の売上となっているとのこと。このヒットに反応してセブンイレブンもバスクチーズケーキを発売するなど、「バスク風チーズケーキ」のブームが起こっています。ちなみに「バスク地方」とはフランスとスペインにまたがる地域。バスク風チーズケーキというと、表面を黒く焦がしたほろ苦い味わいが魅力のチーズケーキです。

 また、同ランキング18位には同じくローソンの「悪魔のおにぎり」が累計5600万個売れてランクインしています。この販売数はなんと20年間不動のトップだったツナマヨを抜き去った数字とのことです。「悪魔の」としたネーミングの意味は、病みつきになる味と時代に逆行する「カロリー」「脂質」「糖質」によるものとのこと。

 冷凍食品も賑わっています。セブンイレブンは冷凍食品の販売面積を広げた店舗を増やしています。またこういった店舗では90品目もの冷凍食品が売られ、冷凍食品の売上は150%増とのこと。こういった動きにあわせて、ファミリーマートやローソンでも冷凍食品はどんどん増えています。

「省力化」「データ統合」「多様性への対応」が鍵

 コンビニは今後どうなっていくのでしょうか。人材不足は直近の問題です。この点について、ファミリーマートはキャッシュレス比率を上げることで店舗業務の省力化が可能だと考え、ファミペイ事業を拡大しようとしています。また、この事業を金融や広告・マーケティング事業にまで展開することを検討したいとのこと。

 また、セブン&アイ・ホールディングスの執行役員で、デジタル戦略部シニアオフィサーである清水健氏によると、セブン銀行や百貨店、といった購買データがバラバラに存在している状況から、7ID(セブンID)を中心にしたデータの統合を進め、分析し、個々の顧客の潜在的な要望を先回りして提供すると言います。実際に2018年6月には「セブン&アイ・データラボ」が立ち上げられ分析が始まっています。

 ローソンに関しては、これまでにも「ナチュラルローソン」や「ローソンストア100」など他のコンビニとはやや違った展開をしています。この点からも分かりますが、多様化への意識が強いようです。ローソン統合報告書2019では「全国どこでも買える基本的な商品が数多く揃っていて、その上に地域性、多様性を表現するような商品・サービスがある、そうしたバランスをどのように取り、新しい価値を付加できるか、ということにチャレンジしたい」としています。

<参考サイト>
・統合レポート2019│ファミリーマート
https://www.family.co.jp/content/dam/family/ir/library/annual/document/UFHD_AR19J_all.pdf
・統合報告書2019│LAWSON
http://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/annual_report/ar_2019.pdf
・セブン&アイ経営レポート│セブン&アイ・ホールディングス
https://www.7andi.com/ir/file/library/mr/pdf/20190626_all_a.pdf
・ファミマとローソンが追い上げ、セブンのひとり勝ちにストップ/コンビニ6社・2020年2月期中間決算
https://www.ssnp.co.jp/news/distribution/2019/10/2019-1024-1653-14.html
・第1回 新たなコンビニのあり方検討会 事務局説明資料(コンビニの現状と課題)2019年6月28日|経済産業省 商務・サービスグループ
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/new_cvs/pdf/001_03_00.pdf
・ローソン「バスチー」人気沸騰 チーズスイーツブームの先駆けに|日経トレンド
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00242/00015/
・ローソン「悪魔のおにぎり」 ツナマヨを抜き去り累計5600万個|日経トレンド
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00242/00020/?i_cid=nbpnxr_index
・スーパーにはない独自商品が大幅増 2019年は“コンビニ冷食元年”の年!|SankeiBiz
https://www.sankeibiz.jp/business/news/190224/bsd1902240902002-n1.htm
・セブン&アイ・ホールディングスが目指す究極のサービス体験の最終形態とは? その時必要な人材は誰か|キーマンズネット
https://www.keyman.or.jp/kn/articles/1912/06/news069.html
・ローソンの“スゴい戦略” コンビニ業界3位ながら独自路線で成長中|WEZZY
https://wezz-y.com/archives/68193
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム

「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長
2

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発

日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉

現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
4

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題

社会的時差ボケの発生には、働き方も大きな影響をもっている。特にシフトワークによって不規則な生活リズムを強いられる業種ではその回避が難しい。今回は、発がんリスク、メンタルヘルスの不調など、シフトワークが抱える睡眠...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/30
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長