テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.05.31

「カメラ」から「健康」へ~富士フィルムの華麗な転換

 技術革新によって消え去る商品やサービスは少なくない。そのサービスが屋号や会社名になっていたらどうだろうか?ヨドバシカメラはもはやカメラ屋ではなく、カメラも扱う家電量販店であり、amazonを猛追する通販サイトでも知られるようになっている。

コダックと富士フイルムの明暗

 かつて写真フィルムは、コダック、アグフア、富士フイルム、コニカの4社の寡占状態になっており、高い利益性を誇っていた。フィルムからデジタルへと技術革新は写真業界にとってかつてない変化にさらされることとなった。

 カメラ本体からプリントなど写真の様々な分野に、デジタル技術の波が押し寄せたのは90年代からである。緩やかに始まったデジタル化という技術革新による変化において、コダックがとった戦略と富士フイルムの戦略は、その後両者の明暗を大きく分けることとなる。

 コダックは、多角化を行いながらも、あくまで本業である写真事業を重んじ、一方、富士フイルムはデジタル化の脅威から、多角化によって自社の技術を他の業界へ展開する多角化戦略をとる。結果、コダックは破綻し、富士フイルムは第二の創業とも言える業態転換に成功する。

トータルヘルスケアの富士フイルム

 2000年から激減しはじめたカラーフィルムの売上をみて、当時の富士フィルム社長・古森重隆氏は、自社技術を用いた業態転換の先として、ヘルスケア事業を選択した。

 ヘルスケア分野については、長らく画像診断の分野に進出していたが、そこに留まることなく、新たな分野への進出が必要と考えた。治療から、事前に病気を防ぐ予防領域を、新規事業の対象に捉えたのだ。

 そして2007年、写真フィルムの研究開発を通して培ってきた技術を生かして開発されたスキンケア商品化粧品「アスタリフト」の大ヒットで大きな成功を収める。主領域での業態転換の成功による企業延命は、かつてのインスタント写真「チェキ」の再ブームにもつながる。

 技術革新や市場環境の変化に、これまで成功してきた本業を捨て、多角化を進めることには様々な困難がつきものである。この12年間の富士フイルムの再生に学ぶことは大きい。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性

印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/10
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員
2

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

編集部ラジオ2025(14)なぜAI時代に文芸評論が甦るのか

どんどんと進む社会のAI化。この大激流のなかで、人間の仕事や暮らしの姿もどんどん変わっていっています。では、AI時代に「人間がやるべきこと」とはいったい、何なのでしょうか? さらにAIが、驚くほど便利に何でも教えてく...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/07/10
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
3

なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る

なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る

今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期

なぜ思春期に注目するのか。この十年来、10歳だった子どもたちのその後を10年追跡する「コホート研究」を行っている長谷川氏。離乳後の子どもが性成熟しておとなになるための準備期間にあたるこの時期が、ヒトという生物のライ...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/05
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
4

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(3)正岡子規と高浜虚子の「リアリズム」

正岡子規の死後、高浜虚子が回想で述べた師・子規との論争。そこに「リアリズムとは何か」のヒントが隠されていると江藤淳氏は言う。子規と虚子、それぞれの「リアル」とは何か、そしてどちらが本当の「リアル」なのか。近代小...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/09
與那覇潤
評論家
5

グリーンランドに米国の軍事拠点…北極圏の地政学的意味

グリーンランドに米国の軍事拠点…北極圏の地政学的意味

地政学入門 ヨーロッパ編(10)グリーンランドと北極海

北極圏に位置する世界最大の島グリーンランド。ここはデンマークの領土なのだが、アメリカの軍事拠点でもあり、アメリカ、カナダとヨーロッパ、ロシアの間という地政学的にも重要な位置にある。また、気候変動によってその軍事...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/07/07
小原雅博
東京大学名誉教授