社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「サブスク」って何?わかりにくいカタカナ語
ニュースでも身近なやり取りでも、聞きなれないカタカナ語が原因で行き違いが起きたり、ストレスがたまることがあります。また、長すぎるからといって省略してしまうことで、さらに意味不明のやり取りが増えています。日常を囲むカタカナ言葉の世界、ちょっと振り返ってみませんか。
カタカナ語を使いたがる心理の一つは「単純にかっこいいから」というもので、その言葉を知らない人たちを威嚇するような意味がありました。それこそ最近よく使われている「マウンティング」ですね。
マウンティングは、もともとサルなどが自分の優位性を示すのに相手に馬乗りになる様子を指す言葉で、レスリング用語としても使われます。「マウンティング女子」が日常語として使われだしたのは沢尻エリカ主演のドラマ『ファーストクラス』(2014)以来ということですが、なじめない人も多いでしょう。
「かっこいい」と思う気持ちの奥には、一種の学術用語という権威だのみの心理もあります。ブランド名と同じように用いられるため、「わかる人にはわかる」ことがポイント。「日本語に言い換えてみてよ」と言ってもムダ、というケースです。
同じような使われ方のカタカナ語には、病院で使われる「インフォームドコンセント(納得づくでの治療)」、ビジネス用語の「プライオリティ(優先順位、優先権)」、オリンピック関連用語の「レガシー(次世代への遺産)」、観光業界の「インバウンド(日本を訪れた外国人旅行客)」などがあります。
「意識高い系」とからかわれた「ロハス(健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイル)」と、その元になった「サステイナビリティ(持続可能性)」。「なぜわざわざ英語で言う?」と感じずにいられない「ダイバーシティ(多様性)」、震災をきっかけに広がる「レジリエンス(復元力、弾性)」など、海外で提唱された概念には、新しい見せかけで古いものを見直す動きが案外多いものです。
仲間をあげればキリがありませんが、「アーカイブ(保存記録、記録保存館)」「エビデンス(証拠)」から「コミット(関わる、注力)」や「フィックス(決定)」まで、当たり前のことを新しく見せたい気持ちがカタカナ語を氾濫させているかもしれません。
問題は、このように長いカタカナ語の場合、必ず「サブスク」というふうに略されるところです。コンビニやリストラと同じ省略法ですが、口中をシャキッとさせる清涼菓子の名前と間違いそうですね。
最近の省略カタカナ語で、「それはないでしょ」と感じたのが「ソシャディ」。やはり新型コロナウイルスをきっかけに重視されるようになった「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」の略だそうです。先行する「ソーシャルゲーム(SNSを介したオンラインゲーム)」が「ソシャゲ」と略されていることからきたのでしょうが、「スマホでソシャゲ」しながら「ソシャディ」に気配りする姿、文字で書くとなんのことだかさっぱりわかりません。
もちろん略して意味がわかりやすくなったり、伝えやすくなることもあります。「コスパ(価格に見合った機能)」や「セクハラ(性的嫌がらせ)」が市民権を得ているのはその例ですね。
カタカナ語は、誰かが使っているとすぐ真似をしたくなるもの。一拍置いて、「相手を迷わせないか」「もともと日本語ではどういう言い回しだったか」を考えてから話すと、よい関係が結べそうです。
「マウンティング女子」はなぜ浸透したのか
新型コロナウイルス報道では、政府関係者や専門家などが聞きなれないカタカナ語で世のひんしゅくを買いました。「オーバーシュート(爆発的患者の増加)」や「ロックダウン(都市封鎖)」など、これまで聞いたことのない言葉が乱発されたからです。「パンデミック(世界的大流行)」や「クラスター(感染者集団)」だけでも大変なのに、新しいカタカナ語はなぜ使われたのでしょうか。カタカナ語を使いたがる心理の一つは「単純にかっこいいから」というもので、その言葉を知らない人たちを威嚇するような意味がありました。それこそ最近よく使われている「マウンティング」ですね。
マウンティングは、もともとサルなどが自分の優位性を示すのに相手に馬乗りになる様子を指す言葉で、レスリング用語としても使われます。「マウンティング女子」が日常語として使われだしたのは沢尻エリカ主演のドラマ『ファーストクラス』(2014)以来ということですが、なじめない人も多いでしょう。
「かっこいい」と思う気持ちの奥には、一種の学術用語という権威だのみの心理もあります。ブランド名と同じように用いられるため、「わかる人にはわかる」ことがポイント。「日本語に言い換えてみてよ」と言ってもムダ、というケースです。
同じような使われ方のカタカナ語には、病院で使われる「インフォームドコンセント(納得づくでの治療)」、ビジネス用語の「プライオリティ(優先順位、優先権)」、オリンピック関連用語の「レガシー(次世代への遺産)」、観光業界の「インバウンド(日本を訪れた外国人旅行客)」などがあります。
いつもの「出前」も「ウーバーイーツ」で新しく食べられる?
さて、カタカナ語は「古いものを新しく見せる」ときにも便利に使われます。たとえば「オンデマンド」は注文生産のことですし、オンラインで注文すればいい「ウーバーイーツ」など、ネットと電話の違いはありますが、日本語では単純に「出前」で済んでしまいます。「意識高い系」とからかわれた「ロハス(健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイル)」と、その元になった「サステイナビリティ(持続可能性)」。「なぜわざわざ英語で言う?」と感じずにいられない「ダイバーシティ(多様性)」、震災をきっかけに広がる「レジリエンス(復元力、弾性)」など、海外で提唱された概念には、新しい見せかけで古いものを見直す動きが案外多いものです。
仲間をあげればキリがありませんが、「アーカイブ(保存記録、記録保存館)」「エビデンス(証拠)」から「コミット(関わる、注力)」や「フィックス(決定)」まで、当たり前のことを新しく見せたい気持ちがカタカナ語を氾濫させているかもしれません。
「セクハラ」がなければ「就活セクハラ」も伝わらなかった
近年話題の「サブスクリプション」は、一定料金を支払うことで、一定期間サービスを使う権利を得られるというビジネスモデル。日本に昔からある言い回しでは「会員権」に近いのですが、「~し放題」というサービスとして親しまれるようになりました。問題は、このように長いカタカナ語の場合、必ず「サブスク」というふうに略されるところです。コンビニやリストラと同じ省略法ですが、口中をシャキッとさせる清涼菓子の名前と間違いそうですね。
最近の省略カタカナ語で、「それはないでしょ」と感じたのが「ソシャディ」。やはり新型コロナウイルスをきっかけに重視されるようになった「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」の略だそうです。先行する「ソーシャルゲーム(SNSを介したオンラインゲーム)」が「ソシャゲ」と略されていることからきたのでしょうが、「スマホでソシャゲ」しながら「ソシャディ」に気配りする姿、文字で書くとなんのことだかさっぱりわかりません。
もちろん略して意味がわかりやすくなったり、伝えやすくなることもあります。「コスパ(価格に見合った機能)」や「セクハラ(性的嫌がらせ)」が市民権を得ているのはその例ですね。
カタカナ語は、誰かが使っているとすぐ真似をしたくなるもの。一拍置いて、「相手を迷わせないか」「もともと日本語ではどういう言い回しだったか」を考えてから話すと、よい関係が結べそうです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
“死の終りに冥し”…詩に託された『十住心論』の教えとは
空海と詩(4)詩で読む『秘蔵宝鑰』
“悠々たり悠々たり”にはじまる空海『秘蔵宝鑰』序文の詩文。まことにリズミカルな連呼で、たたみかけていく文章である。このリフレインで彼岸へ連れ去られそうな魂は、選べる道の多様さと迷える世界での認識の誤りに出会い、“死...
収録日:2024/08/26
追加日:2024/11/23
国家は助けてくれない…「三田会」誕生への大きな経験
独立と在野を支える中間団体(6)慶應義塾大学「三田会」の起源
中間集団として象徴的な存在である慶應義塾大学「三田会」について考える今回。三田会は単に同窓会組織として存在しているわけではなく、「公」に頼れない場合に重要な役割を果たすものだった。その三田会の起源について解説す...
収録日:2024/06/08
追加日:2024/11/22
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
大転換期の真っ只中にいるわれわれにとって、日本の特性を強みとして生かしていくために忘れてはいけないことが二つある。一つは日本が森林山岳海洋島国国家であるというその地理的特性。もう一つは、日本文化の根源としての縄...
収録日:2020/02/05
追加日:2020/09/16
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
謎多き紫式部の半生…教養深い「女房」の役割とその実像
日本語と英語で味わう『源氏物語』(1)紫式部の人物像と女房文学
日本を代表する古典文学『源氏物語』と、その著者である紫式部は、NHKの大河ドラマ『光る君へ』の放映をきっかけに注目が集まっている。紫式部の名前は誰もが知っているが、実はその半生や人となりには謎が多い。いったいどのよ...
収録日:2024/02/18
追加日:2024/10/14
対談 | 林望/ロバート キャンベル