テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.05.30

ドライバーが次世代車で最も重視するポイントは〇〇

 もしあなたがクルマを購入するとしたらどんなことを重視しますか。価格、デザイン、ボディタイプ、メーカー、燃費、運転のしやすさなどクルマ選びのポイントはいくつもありますね。

 誰もがクルマを今後絶対に買わないとは言い切れません。"いつかのマイカー"を思い浮かべながら、買うつもりになってシミュレーションしてみるのはいかがでしょうか。

BMWが600名のドライバーに「次世代車に関する意識調査」

 ビー・エム・ダブリュー株式会社は2020年4月11日から4月12日にかけて、「次世代車に関する意識調査」を実施しました。対象者は「1か月に1度以上自動車に乗る」「20歳~69歳の男女」600名のドライバー。目的は地球環境保護に向けた次世代車普及のためです。

 質問内容は大きく「クルマ選びの基準」「次世代車の購入検討に関して」「コスト意識に関して」「今後乗りたいクルマに関して」「自動車の環境意識」の5つです。順番に調査結果を解説していきます。

「経済的な要素」が大きく影響

 「クルマ選びの基準」については、結論から言うと、クルマ選びで重視する基準を約9割が「価格」と回答しました。次いで2位が「燃費」、3位「ボディタイプ・サイズ」となりました。

 年齢によって重視するポイントに違いがあることもわかりました。若い層ほど「デザイン性」を気にかけ、年齢を増すほどに「安全性能」や「環境性能」を重視する傾向あるようです。

 調査結果をもう少し詳しく見ていきましょう。「次に車の購入・買い替えをするときに重視するのはどのような点ですか?」という質問に対して、88.5パーセントが「価格」と回答。「燃費」が74.5パーセント、「ボディタイプ・サイズ・大きさ(積載人数、積載量)」は53.3パーセントでした。

 この「価格」と「燃費」のスコアが高いという結果から、クルマ選びでは「経済的な要素」が大きく影響することがよくわかります。

重視ポイントは世代間ギャップ

 「車の購入・買い替えをするときに重視するのはどのような点ですか?」という質問に対して、「デザイン性」と回答した年代の内訳は20代と30代が56.7パーセント、40代は55パーセント、50代は48パーセント、60代になるとガクッと下がって40パーセントとなります。

 逆に「安全性能」については60代がもっとも高く69.2パーセント、50代は63.3パーセント、40代は50.8パーセント、30代は52.5パーセント、今度は20代はガクッと下がって29.2パーセント。

 「環境性能」も「安全性能」と同じような傾向があり、60代は36.7パーセント、50代は27.5パーセント、40代・30代は20パーセント、20代は12パーセントでした。

 このように年齢によって重視するポイントは異なります。特に20代には顕著な傾向があると言っていいでしょう。

「環境にやさしい車」を買いたいけれど…

 「次世代車の購入検討に関して」も見てみましょう。こちらも結論から言いますと、「できることなら環境にやさしい車に乗りたいと思っているドライバーが多くいる」ことが分かりました。「価格を気にしなくてよいとしたら、環境にやさしい車と一般的なガソリン車のどちらが欲しいと思いますか?」という質問に対して、なんと73.8パーセントもの人が「環境にやさしい車」、「どちらかというと環境にやさしい車」と回答したのです。

 この質問のポイントは「価格を気にしなくてよいとしたら」という前置きがあることですね。価格がネックになっていることを想定していることが分かります。次の2つの質問がそのことを如実に表しています。

 1つ目は、「『次世代車』に乗らない理由はなんですか?」という質問です。質問の対象者はガソリン車のドライバーです。すると、「車両本体価格が高いから」という回答が最も多く48.3パーセント、次いで32.6パーセントが「ガソリン車に不満が無いから」と回答しました。

 2つ目は、「次世代車」に対して魅力を感じないと回答した151名に対して、『次世代車』に対して、なぜ「魅力を感じない」と答えたのかを質問しました。すると、「車両本体価格が高い」という回答がダントツで多く55パーセントでした。やはり次世代車を普及する上で最大のネックは車両本体価格なのでしょう。

20代はランニングコストを気にしない

 「コスト意識に関して」では、7割以上がランニングコストを重視していることが分かりました。ただし、「クルマ選びの基準」と同様にここでも世代間ギャップがあらわれました。とくに20代の回答傾向が顕著で、ランニングコストで検討する人はわずか4割という結果でした。

 もう少し、詳しく調査内容を見ていきましょう。「車の購入・買い替えを検討するときに、初期費用だけでなく、ランニングコストも含めて価格を比較しますか?」という質問に対して、70.3%が「ランニングコストを詳細に検討する」と回答。このことから、全体としては、車体の本体価格だけでなくランニングコストも考慮しているドライバーが少なくないことが分かります。

 ただし、世代別でみると、20代の42.5パーセントが「ランニングコストはあまり検討しない」、「ランニングコストについて考えたことが無い」と回答。「クルマ選びの基準」の結果から分かる通り、20代は約9割が自動車の購入検討時に価格を重視しているにもかかわらず、ランニングコストに対して意識が薄いようです。

「次世代車」に乗っている人は「経済的に余裕がある」イメージ

 「次世代車ドライバーのイメージ」については「『次世代車』に乗っている人に対してどのようなイメージを持ちますか?」という質問に対して、75.8パーセントが「好感的なイメージ」と回答。また、「「次世代車」に乗っている人に対してどのようなイメージを持ちますか?」という質問に対しては、第1位「経済的に余裕がある」、次いで「スマート」、「先進的」という結果になりました。

 続けて「今後乗りたいクルマに関して」。「今後乗りたいと思う車のエンジン機構はどれですか」という質問に対して、全体の58.3パーセントが「今後、次世代車、もしくはハイブリッドカーに乗りたい」と回答。現在ガソリン車に乗っているドライバーも、49.6パーセントが「次世代車・ハイブリッドカーに乗りたい」と述べ、約半数が次世代車やハイブリッドカーへの乗換を検討していることが分かりました。

 一方で、現在「次世代車・ハイブリッドカー」のドライバーで「ガソリン車に乗り換えたい」という人も、数パーセントですが、僅かながらいることも分かりました。でも大多数は「今後も次世代車に乗りたい」と答えています。

Nox(窒素酸化物)とPM(ススなどの粒子状物質)を知っていますか

 最後に「自動車の環境意識」についてですが、クルマの大気汚染物質の影響を知っている人はわずか約2割にとどまりました。

 「自動車から排出される大気汚染物質」の知識についても、CO2(二酸化炭素)のことは「名前・影響ともに知っている」と回答した人が62.5パーセントと全体的によく理解されているものの、Nox(窒素酸化物)とPM(ススなどの粒子状物質)はそれぞれ25.5パーセント、22.8%と非常に少ないことが分かりました。

 また、傾向として、次世代車・ハイブリッドカードライバーに比べて、ガソリン車ドライバーの方が「自動車から排出される大気汚染物質」について理解・認知度が低く、環境意識が薄いことが分かりました。

ガソリン車より◯◯円高い

 調査結果の結論としては、次世代車あるいはハイブリッドカーに乗りたいと思っている人はたくさんいるものの、車体価格が高くて乗れないということです。実際のところ、どのくらい価格は違うのでしょうか。

 たとえばホンダフィット。ホンダのホームページによると、ガソリン車のフィットで最安値の「BASIC」は新車で「155万円」ほど。いっぽう、ハイブリッド車の「e:HEV BASIC」は「199万円」ほどです。だいたい45万円ほど次世代車の方が高いことが分かります。

 燃費はガソリン車は「20.4km/L」(WLTCモード)、ハイブリッド車は「29.4km/L」(WLTCモード)と表示されています。ハイブリッド車の方が燃費は圧倒的にいいですね。乗り方に左右されますが、年間で2~3万円ほどハイブリッド車の方がお得だろうと言われています。フィットはガソリン車もハイブリッド車もどちらもエコカー減税の対象ですが、ガソリン車は「25パーセント減税」なのに対してハイブリッド車は「免税」です。

 とはいえ、やはりハイブリッド車は車両価格が高額なので、ガソリン車に比べてそれほどは「お得感」が感じられないのが現状でしょう。普及していくためには「次世代車・ハイブリッドカーの方がお得なんだ」とユーザーが思えるかどうかです。

 ビー・エム・ダブリュー株式会社の調査結果から分かる通り、圧倒的に多くのユーザーは「次世代車・ハイブリッドカー」の購入や乗換を希望しています。すぐに車両価格が大幅に下がることは考えにくいですが、技術進歩によって燃費等は向上し、ランニングコストはだんだん下がってきています。こうしてお得感が増していくことで、いずれは次世代車がスタンダードになっていくのでしょう。

<参考サイト>
・-次世代車に関する意識調査- クルマ選びの“理想”と”現実“のギャップが明らかに!ドライバーの7割以上が「環境にやさしいクルマ」を求める一方…約9割が「価格」、次いで「燃費」を重視│PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000057174.html
・フィット(e:HEV)│HONDA
https://www.honda.co.jp/green-tax/lineup/fit-hybrid/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム

「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長
2

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発

日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉

現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
4

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力

自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力

モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性

なぜモンゴルがあれほど大きな帝国を築くことができたのか。小さな部族出身のチンギス・ハーンは遊牧民の部族長たちに推されて、1206年にモンゴル帝国を建国する。その理由としていえるのは、チンギス・ハーンの圧倒的なカリス...
収録日:2022/10/05
追加日:2023/01/07
宮脇淳子
公益財団法人東洋文庫研究員