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DATE/ 2020.12.07

トイレットペーパー「三角折り」はすべきか?

 ホテルや公共施設、飲食店などのトイレを使用した時、トイレットペーパーが「三角折り」されていることがあります。三角折りは「清掃済みの合図」として清掃のマニュアルに組み込まれていることが多いようです。たしかに、清掃済み一番でトイレを使うのは、清々しい気持ちもします。ただし、清掃とは関係なく利用者が三角折りにする行為には問題もあるようです。ここでは、トイレットペーパー「三角折り」の是非について考えてみましょう。

利用者が「三角折り」すると感染症リスクが高まる

 2017年にとある病院での「トイレットペーパーを三角折りにしないで下さい」という張り紙がツイッターにアップされ、話題となりました。リツイート数は2万4千回以上となるなど、かなり反響があったことがわかります。アップされた写真では、「患者さんへお願い」と題して、「用を足した後の手を洗う前に、トイレットペーパーを折ると、便中や尿中(感染している場合)の細菌などの微生物が付着し、細菌感染する可能性が高くなることがあります」と警告しています。

 たしかに病院にはさまざまな疾患の患者さんが訪れること、また免疫力が低下している人も利用することが考えられます。一般の施設以上に感染症への注意を払う必要があることはいうまでもありません。特にトイレという空間は絶えず水が存在することから、菌の温床になりやすいようです。実際に2013年2月には福岡の病院で共同トイレを感染源として、ノロウイルス胃腸炎が発生し、約20人が院内感染するという事態が起こっています。

「三角折り」の起源はホテルの清掃説が有力

 病院では特に意識しなければならない点ではありますが、これは公共施設や飲食店など、他のトイレであっても同じように意識した方がいいでしょう。トイレでの感染リスクが高い感染症としては、ノロウイルス胃腸炎や、腸管出血性大腸炎、サルモネラ、ロタウイルスなどがあげられます。もちろん新型コロナウイルスに関しても危険視されています。このため、多くの医療施設を中心にホームページや張り紙などで、三角折りをやめている旨掲示されているとのこと。

 「三角折り」の起源としては、アメリカで「三角折り」を「ファイヤー・ホールド」と呼び、消防士が緊急時にすぐにトイレットペーパーを掴めるように生まれたとの説があります。しかし、この真偽はわかっていません。どちらかといえばデマではないか、との見方が強いようです。また、47NEWSの記事によると、「三角折り」の英語訳は、“fire hold” ではなく “Hotel toilet paper folding” と記すそうです。このことから同記事では、欧米では基本的にホテルのトイレのみで行われている慣習と考えられると記しています。

 実際に、日本では帝国ホテルが発祥ではないかとの話もあるようです。産経ニュースが問い合わせに同ホテル広報担当者は、「よく問い合わせがありますが、記録として残っているものはありません」と否定した上で、「現在もオペレーションとして三角折りはしています」との回答があったそうです。発祥かどうかはわかりませんが、やはりホテルでの清掃業務の一環としてはあるようです。

利用者は「三角折り」しないでおこう

 「三角折り」されているトイレットペーパーを見ると、清潔な感じがすることは確かです。しかしこう感じるのは、私たちが「細かい気持ちの行き届いた清掃直後の場所である」という意味をそこに読み取るからです。つまり「三角折り」は、そもそもトイレが清掃済みであることをアピールするためのもの。次に使う人への配慮という気持ちはあるかもしれませんが、これは感染症のリスクを高めます。利用者は何もしないほうがいいでしょう。

<参考サイト>
・コロナ禍におけるトイレットペーパー“三角折り”の是非、折られた部分を破り捨てる派も|47NEWS  https://www.47news.jp/culture/entertainment/oricon/5431849.html
・【ニュースの深層】トイレットペーパー三角折り、感染症リスク高まるの? 起源も諸説…自動作成マシーンも登場-|産経ニュース
https://www.sankei.com/premium/news/170625/prm1706250024-n1.html
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