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仕事をするのに最適な「室温」とは?
コロナ禍を経て、自宅勤務を経験したことがある方も多いことでしょう。出勤時間がなくなったことで朝ゆっくり寝られる、自分の時間を使える、なんて声もありますが、一方で「オフィスって実は快適だったんだな」と気づく面も――。
WHO(世界保健機関)が2018年11月に出した勧告によると、冬の住宅の最低室内温度は18℃以上。これを下回ると健康に影響が出てくる、という温度です。新型コロナウイルス対応では何かと批判されがちだったWHOではありますが、世界基準として示した室温は納得感のある数字ですね。ただ、国土交通省が行った「住宅の温熱環境と健康の関連」という調査によると、居間でさえ平均室温は16.7℃。寝室は12.6℃、脱衣所は12.8℃でした(約2100世帯を対象に調査)。日本の家はWHOが示す基準に達していない!という現実が浮き彫りになっています。
じゃあ18℃あればいいのか、といえばさにあらず。WHOが示したのは健康という観点でした。仕事をするうえで快適な環境はずばり25℃。米コーネル大学の調査によると、室温を20℃から25℃に上げたところ、タイピングのエラーは44%減少したうえ、入力量は50%増えたとのことです。湿度という面では、「低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究」という早稲田大学の研究が参考になります。湿度が35%を下回ると人は不快感を感じるようになり、70%を超えると疲れを感じやすくなるそうです。
加えて、椅子や机の違いもいざ家で働いてみると如実に表れる部分かもしれません。自宅の椅子で8時間も9時間も働くと、腰が痛くなる、パソコンと目線の高さが合わない、なんて悩みもよく聞きます。毎日オフィスに通っていた頃は意識していなかったかもしれませんが、1日の1/3近くを過ごすオフィスは、働きやすい環境が整えられていたのですね。
コロナ禍が落ち着いたとしても在宅勤務という選択肢は残り続けています。社会情勢に合わせて在宅勤務や出社を選ばざるを得ない人達も多いことでしょうが、ゆくゆくは働きたい場所、一番パフォーマンスが発揮できる場所を1人1人が選べる、そんな働き方を選択できる会社が理想とされる日が来るのかもしれませんね。
寒さを我慢して働くのは「×」
わかりやすいところだと空調です。会社にもよりますが、オフィスは働きやすい室温に設定されていることでしょう。自宅の場合は自分次第のため、寒さを我慢しながら働いているケースもあるかもしれませんが、実はそれ、仕事のパフォーマンスにも影響大なんです。では仕事をするのに最適な室温、そして湿度はどれくらいなのでしょうか?WHO(世界保健機関)が2018年11月に出した勧告によると、冬の住宅の最低室内温度は18℃以上。これを下回ると健康に影響が出てくる、という温度です。新型コロナウイルス対応では何かと批判されがちだったWHOではありますが、世界基準として示した室温は納得感のある数字ですね。ただ、国土交通省が行った「住宅の温熱環境と健康の関連」という調査によると、居間でさえ平均室温は16.7℃。寝室は12.6℃、脱衣所は12.8℃でした(約2100世帯を対象に調査)。日本の家はWHOが示す基準に達していない!という現実が浮き彫りになっています。
じゃあ18℃あればいいのか、といえばさにあらず。WHOが示したのは健康という観点でした。仕事をするうえで快適な環境はずばり25℃。米コーネル大学の調査によると、室温を20℃から25℃に上げたところ、タイピングのエラーは44%減少したうえ、入力量は50%増えたとのことです。湿度という面では、「低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究」という早稲田大学の研究が参考になります。湿度が35%を下回ると人は不快感を感じるようになり、70%を超えると疲れを感じやすくなるそうです。
実は法律で定められていた温度と湿度
と、ここまで科学的なアプローチで最適な温度、湿度を探ってみましたが、1972年に定められた労働安全衛生法の事務所衛生基準規則5条3項に以下のような内容があります。「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない」。実は50年近く前から法律上働きやすい環境にするよう、具体的な温度と湿度が示されていたのですね。WHOの発表やコーネル大学、早稲田大学の調査よりも前に労働安全衛生法が定められたわけですが、後の調査結果に近しい値が規定されていた、ということになります。加えて、椅子や机の違いもいざ家で働いてみると如実に表れる部分かもしれません。自宅の椅子で8時間も9時間も働くと、腰が痛くなる、パソコンと目線の高さが合わない、なんて悩みもよく聞きます。毎日オフィスに通っていた頃は意識していなかったかもしれませんが、1日の1/3近くを過ごすオフィスは、働きやすい環境が整えられていたのですね。
コロナ禍が落ち着いたとしても在宅勤務という選択肢は残り続けています。社会情勢に合わせて在宅勤務や出社を選ばざるを得ない人達も多いことでしょうが、ゆくゆくは働きたい場所、一番パフォーマンスが発揮できる場所を1人1人が選べる、そんな働き方を選択できる会社が理想とされる日が来るのかもしれませんね。
<参考サイト>
・WHO HOUSING AND HEALTH GUIDELINES
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/277465/WHO-CED-PHE-18.10-eng.pdf
・住宅の温熱環境と健康の関連
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323205.pdf
・Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2004/10/warm-offices-linked-fewer-typing-errors-higher-productivity
・低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究
Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity | Cornell Chronicle https://news.cornell.edu/stories/2004/10/warm-offices-linked-fewer-typing-errors-higher-productivity
・事務所衛生基準規則 第2章 事務室の環境管理(第2条-第12条)|安全衛生情報センター
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-36-2-0.htm
・WHO HOUSING AND HEALTH GUIDELINES
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/277465/WHO-CED-PHE-18.10-eng.pdf
・住宅の温熱環境と健康の関連
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001323205.pdf
・Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2004/10/warm-offices-linked-fewer-typing-errors-higher-productivity
・低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究
Study links warm offices to fewer typing errors and higher productivity | Cornell Chronicle https://news.cornell.edu/stories/2004/10/warm-offices-linked-fewer-typing-errors-higher-productivity
・事務所衛生基準規則 第2章 事務室の環境管理(第2条-第12条)|安全衛生情報センター
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-36-2-0.htm
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