社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
自分で気づきにくい「歯ぎしり」の影響と対策
歯ぎしりはなぜ起きるの?
「歯ぎしりしていたよ」と他人に指摘されたり、逆に家族の歯ぎしりの音が気になったりした経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。「ブラキシズム」とも呼ばれる歯ぎしりは、睡眠中に起きる現象なので、本人には自覚がないことがほとんどです。しかし、ときには周囲の人の安眠妨害になるほど大きな音の歯ぎしりもあり、治したいと悩む方も少なくありません。歯ぎしりの原因はまだ詳しくわかっていませんが、主に次の2点ではないかといわれています。
強いストレス:人間は起きているときでも、強いストレスを感じると歯を食い縛ることがよくあります。このため、精神的な疲労が蓄積すると睡眠中にも歯ぎしりが多くなると考えられています。こうすることで不安や不満など、マイナスの感情を解消しようとしているのです。
噛み合わせの悪さ:上下の歯の噛み合わせが悪く、一部の歯だけが強めに合わさっていたり詰め物などが出っ張りすぎていたりすると、歯ぎしりが出やすくなるといわれます。特に歯の治療後は噛み合わせが変化して歯ぎしりが出やすくなるようです。
歯ぎしりの種類と気になる影響
実は、歯ぎしりには3つの種類があるのでご紹介しましょう。グラインディング:歯ぎしりのなかで最も多い症状で、上下の歯をこすり合わせるタイプです。下顎に力を込めて左右に何度も動かしてしまうため、そのたびに「ギリギリ」という音が出ます。
クレンチング:上下の歯を同じ位置で強く食い縛るタイプです。顎を動かさないので、音がほとんど出ません。このため、歯ぎしりしているとは気づきにくい症状です。
タッピング:あまり多くない症状で、上下の歯をぶつけ合わせるタイプです。下顎を食事のときのように上下に動かして噛み合わせるため、そのたびに「カチカチ」という音が出ます。
歯ぎしりのなかでもグラインディングとクレンチングは特に強い力で噛み締めるため、歯や顎に悪影響が出やすいです。主なリスクには次のようなものがあります。
歯の摩耗:歯ぎしりのときに出る力には個人差がありますが、ガムを噛むときの10倍近くになるともいわれます。このため、人体で最も硬いとされる歯のエナメル質さえもすり減ってしまうのです。エナメル質が摩耗すると、歯が欠けたり割れたりしやすくなります。
歯周組織のダメージ:歯ぎしりの負担は、歯を支える歯茎などの歯周組織にも悪影響を与えます。歯茎が弱ると歯周病菌が繁殖して歯周病を発症しやすくなるほか、歯茎や顎の骨までダメージが広がって痛みが出る「咬合性外傷」に発展することもあります。
顎関節症:歯ぎしりの強い力で顎の関節が変質してしまい、顎が「カクカク」と鳴ったり口が開きにくくなったりします。症状が深刻化すると、顎を動かすたびに痛みが出ることも。顎の関節に違和感や不快感が出て、さらに食い縛ってしまうという悪循環に陥りやすいです。
自分が歯ぎしりしているとわかったら
歯ぎしりは睡眠中に起きるため、自覚することが難しい症状です。しかし、歯ぎしりをしている人にはいくつかのサインが現れます。歯や顎に次のような特徴が見られるときには、知らない間に歯ぎしりをしているかもしれません。・顎に疲労感がある、顎の関節に痛みがある
・歯にへこみがある、歯が欠けている
・頭痛や肩こりがひどくなっている
・歯茎の内側に硬いこぶがある
歯茎の内側のこぶは「骨隆起」と呼ばれ、歯ぎしりの強い力を受け続けた顎の骨が盛り上がってできたものです。骨隆起自体に悪い影響はありませんが、かなり強い歯ぎしりのサインといえます。
もし歯ぎしりしているとわかったときには、以下のような方法で対策しましょう。
歯ぎしり用のマウスピースを使う:スプリント療法と呼ばれる、歯科医院で受けられる保険適用の治療法です。歯型を取ってマウスピースを作成し、上下の歯にはめてから眠ります。歯が直接ぶつからないので歯のダメージを防げるうえ、歯ぎしりの音も出なくなります。
矯正治療・補綴治療を受ける:噛み合わせが悪くて歯ぎしりが出る場合は、歯並びを整える矯正治療や、詰め物などの高さを調整する補綴治療が効果的です。無理のない噛み合わせに改善することで、歯ぎしりの頻度や強さが軽減されることもあります。
また、ストレスのかからない生活を心がけることも大切です。眠る前にはリラックスして、意識的に歯や顎まわりの緊張を解くようにすると、穏やかな睡眠が得られるでしょう。
<参考サイト>
歯ぎしりの原因はストレス?~対策と治療法~│栄スワン歯科・矯正歯科
https://www.sakae-swan.com/example/column/post23/
歯ぎしり・食いしばり治療│西大路御池デンタルクリニック
https://nishioji-oike.daieikai.or.jp/treatment/hagishiri/
歯ぎしりの原因はストレス?~対策と治療法~│栄スワン歯科・矯正歯科
https://www.sakae-swan.com/example/column/post23/
歯ぎしり・食いしばり治療│西大路御池デンタルクリニック
https://nishioji-oike.daieikai.or.jp/treatment/hagishiri/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
公共図書館では質の高い「レファレンス」サービスを提供しているが、活用する人は限られている。だが、実は全国の図書館ネットワークを縦横無尽に活用できる、驚くほどに便利な仕組みなのだ。今回は図書館のレファレンスで何が...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/15
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11


