社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
なぜトヨタ車ばかりが売れるのか?
トヨタのクルマには特徴がないとか、カッコ悪いなどといわれたのは、いまや昔の話である。2020年度の車名別新車販売ランキングの乗用車ベスト10は、1位「ヤリス」、2位「ライズ」、3位「カローラ」、4位「アルファード」、5位「ルーミー」と、上位5位をトヨタ車が占め、ようやく6位にホンダ「フィット」が入った。トヨタの登録車の市場シェアは50%を超えた。トヨタのクルマがダサいと思っているのはオジサンたちで、若い人たちはトヨタのクルマをカッコいいと思っているのだ。
では、なぜトヨタ車ばかりが売れるのか。
ズバリ、2009年6月、豊田章男氏が社長に就任し、以来、「もっといいクルマをつくろうよ」と社内にいい続けてきたからにほかならない。トヨタのクルマはそれ以降、大きく変わった。
豊田氏は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)といわれる設計思想の改革に着手した。クルマを骨格から変え、例えばフォルクスワーゲン車に比べて高かった車高と重心を5センチも下げた。結果、走る、曲がる、止まるの基本性能、走行安定性が大幅に向上。デザインの自由度も増した。特徴あるフロントグリルなどを投入し、無難だが印象に残らないといわれたトヨタ車の“顔”に個性を加えていった。
トヨタのクルマが売れる理由は、ほかにもある。豊田氏は社長就任前から、トヨタのトップガンだった故・成瀬弘氏からドライビングスキルや車を評価する技術を学び、2013年以降、トヨタのマスタードライバーを務めている。自らを「最終センサー」と呼び、トヨタの全車種の責任者としてデザインや乗り心地をチェックする。
その感性、感覚を磨くため、いまも“モリゾウ”の名前で、現役ドライバーとしてステアリングを握っている。“モリゾウ”には、若い自動車ファンから圧倒的支持が寄せられている。
実際、近年のトヨタ車の評価は、海外でも高まっている。2020年のトヨタを象徴する車といえば、「ヤリス」である。2月に「ヴィッツ」を刷新するかたちで「ヤリス」が発売され、冒頭、触れたように2020年度新車ランキングで首位を獲得した。8月にはコンパクトSUVの「ヤリスクロス」、翌9月には豊田氏が「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」という思いをかけた「GRヤリス」と、そのラインナップを充実させてきた。2021年3月、「トヨタ ヤリス」は欧州のカーオブザイヤーに選ばれた。
環境対応や先進技術のアピールも、“モリゾウ”ならではだ。同5月21~23日、富士スピードウェイで開かれた24時間耐久レースには、豊田氏が参戦ドライバーの1人として、開発中の水素エンジンを搭載した「カローラ スポーツ」で出場した。水素エンジン車によるレース出場は、世界初だ。
「水素というと爆発のイメージを持たれていますので、安全を証明するためにも私がドライバーとして参加します」と、豊田氏は語っている。
自動車メーカーの社長のクルマ好きは、当たり前のことのようにも思われるが、ここまでクルマに心酔する社長は、世界の自動車メーカーを見渡してもほかにいない。完全にトヨタのイメージを一新した。
豊田氏が社長に就任して12年が経過した。豊田氏はいまも、「もっといいクルマをつくろうよ」といい続けている。そのブレない経営の意志が、トヨタのクルマを完全に変えたといっていい。トヨタのクルマが売れ続けるのは、トップの強いリーダーシップがあるからだ。
では、なぜトヨタ車ばかりが売れるのか。
ズバリ、2009年6月、豊田章男氏が社長に就任し、以来、「もっといいクルマをつくろうよ」と社内にいい続けてきたからにほかならない。トヨタのクルマはそれ以降、大きく変わった。
豊田氏は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)といわれる設計思想の改革に着手した。クルマを骨格から変え、例えばフォルクスワーゲン車に比べて高かった車高と重心を5センチも下げた。結果、走る、曲がる、止まるの基本性能、走行安定性が大幅に向上。デザインの自由度も増した。特徴あるフロントグリルなどを投入し、無難だが印象に残らないといわれたトヨタ車の“顔”に個性を加えていった。
トヨタのクルマが売れる理由は、ほかにもある。豊田氏は社長就任前から、トヨタのトップガンだった故・成瀬弘氏からドライビングスキルや車を評価する技術を学び、2013年以降、トヨタのマスタードライバーを務めている。自らを「最終センサー」と呼び、トヨタの全車種の責任者としてデザインや乗り心地をチェックする。
その感性、感覚を磨くため、いまも“モリゾウ”の名前で、現役ドライバーとしてステアリングを握っている。“モリゾウ”には、若い自動車ファンから圧倒的支持が寄せられている。
実際、近年のトヨタ車の評価は、海外でも高まっている。2020年のトヨタを象徴する車といえば、「ヤリス」である。2月に「ヴィッツ」を刷新するかたちで「ヤリス」が発売され、冒頭、触れたように2020年度新車ランキングで首位を獲得した。8月にはコンパクトSUVの「ヤリスクロス」、翌9月には豊田氏が「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」という思いをかけた「GRヤリス」と、そのラインナップを充実させてきた。2021年3月、「トヨタ ヤリス」は欧州のカーオブザイヤーに選ばれた。
環境対応や先進技術のアピールも、“モリゾウ”ならではだ。同5月21~23日、富士スピードウェイで開かれた24時間耐久レースには、豊田氏が参戦ドライバーの1人として、開発中の水素エンジンを搭載した「カローラ スポーツ」で出場した。水素エンジン車によるレース出場は、世界初だ。
「水素というと爆発のイメージを持たれていますので、安全を証明するためにも私がドライバーとして参加します」と、豊田氏は語っている。
自動車メーカーの社長のクルマ好きは、当たり前のことのようにも思われるが、ここまでクルマに心酔する社長は、世界の自動車メーカーを見渡してもほかにいない。完全にトヨタのイメージを一新した。
豊田氏が社長に就任して12年が経過した。豊田氏はいまも、「もっといいクルマをつくろうよ」といい続けている。そのブレない経営の意志が、トヨタのクルマを完全に変えたといっていい。トヨタのクルマが売れ続けるのは、トップの強いリーダーシップがあるからだ。
文=片山修
片山 修(ジャーナリスト)
愛知県名古屋市生まれ。経済、経営など幅広いテーマを手掛けるジャーナリスト。鋭い着眼点と柔軟な発想力が持ち味。長年の取材経験に裏打ちされた企業論、組織論、人事論には定評がある。著書に、『豊田章男』(東洋経済新報社)、『本田宗一郎と「昭和の男」たち』(文春新書)など多数。
片山 修(ジャーナリスト)
愛知県名古屋市生まれ。経済、経営など幅広いテーマを手掛けるジャーナリスト。鋭い着眼点と柔軟な発想力が持ち味。長年の取材経験に裏打ちされた企業論、組織論、人事論には定評がある。著書に、『豊田章男』(東洋経済新報社)、『本田宗一郎と「昭和の男」たち』(文春新書)など多数。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
「人的資本経営」という言葉が、よく聞かれるようになりました。端的にいえば、「人材=コスト」ではなく「人材=資本」として捉え、人を大切にしていこうという考え方です。
「人を大切にする」というのは別に新しい...
「人を大切にする」というのは別に新しい...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/11/06
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/24
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー・ミュージックエンタテインメント(ジャパン)は、アメリカのコロムビアレコードと1968年に創業した、日本初の外資とのジョイントベンチャーである。ソニーはもともとエレクトロニクスの会社だったが、今のソニーグルー...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/20


