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軍隊を持たない国は存在するのか?
「軍隊のない国」。日本が目指していながら達成できていない理想郷を手にしている国があるといいます。その国は、中南米のコスタリカ共和国。いったいどんな国なのか、その歴史的経緯について調べてみました。
国名の由来は、スペイン語の「豊かな(Rica)海岸(Costa)」。コロンブスが第4次航海時に名付けたもので、これ以降スペイン人が入植し始め、19世紀まで300年以上植民地時代が続きます。鉱物資源は持たないもののコーヒー栽培に適した土地で、9万ヘクタールのコーヒー園が国内に広がっています。
国民の識字率は96%(2013年UNESCO調べ)と高く、1998年に米国インテル社がマイクロチップ製造工場への投資を行って以降、外国企業の進出が相次いでいます。さらに義肢やカテーテルなどの医療器具の開発や生産、生命科学産業の成長が著しく、他の中南米諸国と比べると経済や治安は比較的安定し、「中米の楽園」と呼ばれています。
日本の外務省による分析では、「中米で最も安定した民主主義国」として、1949年に現行憲法が制定されて以降15代の大統領が民選で選ばれてきました。2021年現在の大統領は1980年生まれの若手政治家で、作家としても活動するカルロス・アルバラド・ケサダ氏です。
フィゲレスが実施した改革は徹底的で、「女性と非識字者が投票」できるようにし、「基本福祉法を施行」「銀行を国有化」しつつ、「共産党を非合法化」「すべての公教育を保証」して、新憲法の執筆を始めます。
軍の解体という思い切った改革については、H.G.ウェルズの『世界史大系』の影響が大きかったといいますが、「キューバ革命より深く、より人間的な革命だった」と、834の改革を布告したフィゲレスは1981年のインタビューで述べています。
1949年憲法が軍隊の保有を禁止して以来、フィゲレスの後継者らは無料の教育、無料の医療を実現し、環境の改善に予算を充ててきました。その結果が、1983年の「永世非武装中立」宣言であり、2009年以来3回連続の「地球幸福度指数」世界一なのです。
世界には同様に軍隊を持たない国が約30あるといわれます。たとえばバチカンはキリスト教精神による武力紛争の回避を提唱していますが、「スイス衛兵」と呼ばれる教皇直属の人々に守られています。スイス衛兵は100人規模の伝統的組織で、警察と軍を兼ね備えた働きをします。
パナマはアメリカ軍の侵攻後に軍が解体され、1994年憲法で軍の非保有を宣言しました。国家保安隊として国家警察、航空海上保安隊、国境警備隊が組織されています。
集団安全保障体制に参加している国としては、北大西洋条約機構(NATO)加盟のアイスランド、東カリブ海の地域安全保障システム(RSS)に加盟しているドミニカやグレナダなど4か国があります。
小国のなかには、特定の国家に防衛を依存している国家もあります。たとえばサンマリノの防衛はイタリアが、モナコの防衛はフランスが、マーシャル諸島やミクロネシア連邦、パラオの防衛はアメリカが責任と権限を持っています。
軍隊のない国に多少ともあこがれの気持ちがかき立てられるのは、ゴールがないと言われる軍備拡張競争にみんなが疲れている証拠ではないでしょうか。
コスタリカとはどういう国なのか
北にニカラグア、南東にパナマと国境を接し、南は太平洋、北はカリブ海に面する細長い国がコスタリカ共和国。恵まれた自然、野鳥の多さからバードウォッチングに世界中から観光客が訪れます。首都はサンホセ、人口は約499万人。一人当たりGDPは11,982ドルで世界61位(2020年)ですが、平均寿命、健康指標、健康格差、エコロジカル・フットプリントを測る「地球幸福度指数」では、2016年世界一とされています。国名の由来は、スペイン語の「豊かな(Rica)海岸(Costa)」。コロンブスが第4次航海時に名付けたもので、これ以降スペイン人が入植し始め、19世紀まで300年以上植民地時代が続きます。鉱物資源は持たないもののコーヒー栽培に適した土地で、9万ヘクタールのコーヒー園が国内に広がっています。
国民の識字率は96%(2013年UNESCO調べ)と高く、1998年に米国インテル社がマイクロチップ製造工場への投資を行って以降、外国企業の進出が相次いでいます。さらに義肢やカテーテルなどの医療器具の開発や生産、生命科学産業の成長が著しく、他の中南米諸国と比べると経済や治安は比較的安定し、「中米の楽園」と呼ばれています。
日本の外務省による分析では、「中米で最も安定した民主主義国」として、1949年に現行憲法が制定されて以降15代の大統領が民選で選ばれてきました。2021年現在の大統領は1980年生まれの若手政治家で、作家としても活動するカルロス・アルバラド・ケサダ氏です。
コスタリカはなぜ軍を持たなくなったのか
1838年の独立以来、コスタリカは軍備を持っていましたが、1944年から48年にかけての内戦を経て大統領の地位に就いたホセ・フィゲレス・フェレールが軍隊を廃止しました。つまり、軍隊を廃止するために私兵によるクーデターをもくろんだ。そのような矛盾する歴史が、端緒となったわけです。フィゲレスが実施した改革は徹底的で、「女性と非識字者が投票」できるようにし、「基本福祉法を施行」「銀行を国有化」しつつ、「共産党を非合法化」「すべての公教育を保証」して、新憲法の執筆を始めます。
軍の解体という思い切った改革については、H.G.ウェルズの『世界史大系』の影響が大きかったといいますが、「キューバ革命より深く、より人間的な革命だった」と、834の改革を布告したフィゲレスは1981年のインタビューで述べています。
1949年憲法が軍隊の保有を禁止して以来、フィゲレスの後継者らは無料の教育、無料の医療を実現し、環境の改善に予算を充ててきました。その結果が、1983年の「永世非武装中立」宣言であり、2009年以来3回連続の「地球幸福度指数」世界一なのです。
国独自の軍は持たない国はほかにもあるのか
コスタリカは憲法で軍隊の保有を禁止しましたが、非常時の徴兵も同時に規定されており、国家の治安は武装警察と沿岸警備隊が守っています。それでも予算は3億ドル、日本の491億ドル(2020年)と比べると、その少なさが分かるでしょう。世界には同様に軍隊を持たない国が約30あるといわれます。たとえばバチカンはキリスト教精神による武力紛争の回避を提唱していますが、「スイス衛兵」と呼ばれる教皇直属の人々に守られています。スイス衛兵は100人規模の伝統的組織で、警察と軍を兼ね備えた働きをします。
パナマはアメリカ軍の侵攻後に軍が解体され、1994年憲法で軍の非保有を宣言しました。国家保安隊として国家警察、航空海上保安隊、国境警備隊が組織されています。
集団安全保障体制に参加している国としては、北大西洋条約機構(NATO)加盟のアイスランド、東カリブ海の地域安全保障システム(RSS)に加盟しているドミニカやグレナダなど4か国があります。
小国のなかには、特定の国家に防衛を依存している国家もあります。たとえばサンマリノの防衛はイタリアが、モナコの防衛はフランスが、マーシャル諸島やミクロネシア連邦、パラオの防衛はアメリカが責任と権限を持っています。
軍隊のない国に多少ともあこがれの気持ちがかき立てられるのは、ゴールがないと言われる軍備拡張競争にみんなが疲れている証拠ではないでしょうか。
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