社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.08.17

車の免許はマニュアルで取る必要はあるのか?

 運転免許をお持ちの方はよくご存じだとは思いますが、運転免許の取得にあたって、AT(オートマ)限定か、非AT限定というという選択があります。非AT限定免許とは、いわゆるギアチェンジをマニュアル(手動)で行う車種に乗ることができるというものです。これまで、AT限定より非AT限定、いわゆるMT(マニュアル)免許取得がよいとされた風潮があったのですが、近年は事情が変わってきているようです。

ATとMT新車登録と免許の比率

 非AT限定の免許を取得して、一般乗用車の購入という状況になると、MT(マニュアル)車よりは、AT(オートマ)車が圧倒的に多いという事実に気づかされます。

 日本自動車販売協会連合会のデータなどによると、1985年において新車登録シェアの半数に満たなかったAT車ですが、2019年において国産乗用車の約99%まで拡大。MT車は1%程度という状況です。

 しかし、運転免許統計に見る新規免許取得者数の比率は、全国平均でAT:MT=7:3、東京の教習所においてはAT:MT=8:2という比率。つまり、AT車に乗りつつも、いまだ免許は非AT限定を取得するひとが多いことがうかがえます。

非AT限定免許の選択理由

 MT車よりAT車が圧倒的に多いのに、新規に運転免許を取得する場合、AT限定ではなく、非AT限定免許を選ぶ人が一定の割合で存在するのはなぜなのでしょうか?

 一昔前であれば、ドライビングの腕を競う的な見地から「男ならMT」であるとか、「どちらでも乗れるように」と親に勧められるケースがありましたが、今は、新車でMT車を探すのが難しい状況にあり、AT免許取得のほうが教習価格も安価で合理的な選択ということができます。

 ひとつ非AT限定免許取得の理由があるとしたら、軽バンや軽トラックといったカテゴリーでMT車が多いというように、職業によって必須となるケースです。田舎暮らしを始めるとよくわかるのですが、農作業で必須となる軽トラックのほとんどがMT車です。自分用の軽トラックを購入するのであればAT車という選択もありますが、レンタルや中古市場ではMT比率が高いため、AT限定解除したという話もよく聞きます。

非AT限定免許選択のもう一つの理由

 オートマ(AT)では味わえない、マニュアル(MT)ならではの味わいという境地が、もう一つの理由になります。ドライビングにおける車との一体感という魅力には、十分すぎる価値があるようです。オーディオの世界で、CDからレコードに回帰したり、真空管アンプなどデジタルからアナログを選択する趣味性にも通じる世界です。残る牙城として、中古市場にあるMT名車が残っている限り、MTを乗れる運転免許を取っておくことは、その趣味を嗜好する人にとって価値あることなのです。

<参考サイト>
運転免許統計(令和2年版)│警視庁
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo/r02/r02_main.pdf
今や全体の1%のみ 国産乗用車のMT販売比率を調べてみた│car & レジャー WEB
https://car-l.co.jp/2021/01/19/47617/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
3

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
4

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
5

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14