テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.09.28

実は生産終了になっている人気車種

 自動車業界は今「100年に一度の変革期」と言われるような大きな変化が起きています。CASEと呼ばれる、電動化や自動化を中心とした動きが中心にあります。この状況に対応するために自動車のプラットフォーム自体も新しくする必要が生まれています。こうした流れを受けてここ数年、廃止される車種が多岐にわたっています。ただし廃止される細かい理由はメーカーや車種によっても様々です。ここでは、惜しまれつつも生産終了になった車種はどんなものなのかみてみましょう。

トヨタエスティマは2019年に終了

 トヨタは2017年に約60車種あったモデルを2025年までに30車種までに絞り込むと打ち出したのち、2020年5月からは全ての販売店で全車種を購入できるようにしました。この先は電動化に向けて大きくシフトするようです。この流れを受けて、多くの車種を廃止(生産終了)しました。例えばエスティマ、マークX、ウィッシュ、アイシス、SAI、プレミオ、アリオン、プリウスα、タンク、ポルテ、スペイドといった車種は近年廃止された車種がすでに廃止されています。

 トヨタ・エスティマは2019年10月に生産を終了しました。Lサイズミニバンの代表として1990年の発売以来およそ30年間にわたり販売されました。2000年には年間売り上げ12万台を越えて年間売り上げ3位という人気ぶり。現在、ミニバンのメインストリームにいるアルファード/ヴェルファイアも、エスティマのエンジンやプラットフォームをベースにしています。2015年にアルファード/ヴェルファイアがモデルチェンジされて人気を高める一方で、エスティマは廃止の方向となりました。

 この理由は、少子高齢社会の日本では、ミニバン需要は今以上に伸びないということも絡んでいるようです。この先は売れている、もしくは売りやすい車種に絞るという選択がされたと考えていいでしょう。また販売系統が異なる点以外は、アルファードとほぼ同じ車種であったヴェルファイアに関しても、今後廃止の流れにあります。

日産キューブ、ホンダオデッセイ、三菱パジェロ

 日産ではキューブ、ジューク、ティアナなどが廃止。ホンダではオデッセイ、レジェンド、クラリティ、シビックなどに加え、看板スポーツカーNSXも2022年12月で終了することが発表されています。また三菱を代表するオフロードSUV、パジェロはパリ・ダカールラリーで優勝するなどして有名でしたが、2019年8月に販売終了しています。

 日産キューブは1998年発売。名前の通り四角くて可愛いイメージのある車で、背が高くて乗りやすく、また運転もしやすいコンパクトカーとして大人気でした。日産はノートやセレナなど国内市場でもかなり売れている車種があります。しかし、国内でのメーカー別販売順位(軽自動車を含む)では、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツについて5位と、やや低迷しています。こうした状況から国内市場では車種を絞り込んで合理化したい思惑があるようです。

3大軽トラだったホンダ・アクティ

 軽トラックの世界でも同様のことが起きています。軽自動車は日本の8つの自動車ブランドが販売してきました。しかし実際のところ、オリジナルの車種はダイハツ・ハイゼットトラック、スズキ・キャリイ、ホンダ・アクティの3車種だけで、あとはOEM生産。日産のNT100クリッパートラック、三菱ミニキャブトラック、マツダスクラムトラックの3種はスズキ・キャリイのOEM、スバル・サンバートラック、トヨタ・ピクシストラックはダイハツ・ハイゼットトラックのOEMです。

 この3大軽トラの一角だったホンダ・アクティは2021年4月に生産を終了しました。6月までは生産すると思われていたようですが、前倒しの生産終了となっています。軽トラックは安いもので約70万円程度から販売されている薄利多売の車種である上に、用途が特殊です。また2020年の軽トラックの届出台数は1990年の40%とのこと。市場がここ30年で大きく縮小していることがわかります。これは日本の農業就業人口の減少と関係しています。

 また、ダイハツとスズキはOEM生産をおこないますが、ホンダは日本の自動車メーカーでは唯一、OEMを行わないこだわりのメーカーです。この先もアクティがOEMで他社から出ることもなさそうです。こういった背景から、2019年に生産終了がアナウンスされると、2020年度の届出台数は前年比1.5倍になりました。

 このように自動車メーカーは今、大胆な選択と集中を行い、変革期を乗り越えるべく闘っています。これまでにも多くの車種がリストラされてきました。今後ももう少しこの流れは続くようです。しかし数年後、あたらしい時代の車の姿がはっきり見えてきた時、またきっとワクワクするはずです。今はそういった、再生の谷間の時代と言えるのかもしれません。

<参考サイト>
ついに完売目前!! エスティマはなぜ見捨てられたのか?|ベストカーWeb
https://bestcarweb.jp/news/102382
トヨタ「ヴェルファイア」がほぼ廃止へ? アルファード人気に押された姉妹車の行く末|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/369186
販売終了した日本車メーカーの車種まとめ!ロールーフミニバンやセダンなど|cobby
https://cobby.jp/integrated-model.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?

トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授