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DATE/ 2022.06.21

世界最速はどこ製?エレベーター速度TOP5

 エレベーターのボタンを押すだけで、わたしたちは地上(地下)何十階といった場所へ自在にアクセスできます。この裏でエレベーターはかなりのスピードで動いています。また、世界にはさまざまな高層建築があります。高層建築ではエレベーターが必須ですが、それらは超高速であることに加えて安全であることも必須です。では世界の高層建築ではどういったエレベーターが活躍しているのでしょうか。ここではスピードに注目して、トップ5を見てみましょう。

超高速エレベータートップ5

 エレベーターやエスカレーターの保守点検業務を中心に事業を展開する京都エレベータのサイトには、世界の高速エレベータートップ5が掲載されています。まずはこのランキングをベースにしてそれぞれ少し詳しく見てみましょう。まずは5位から。

第5位 横浜ランドマークタワー(日本)
 地上273m(69階展望フロア)まで最大分速750mで移動します。分速750mは時速45km。日本国内でもっとも早いエレベーターです。ちなみに東京スカイツリーのエレベーターは、分速600m(時速36km)。こちらは世界第6位のスピードとのこと。横浜ランドマークタワーのエレベーターは三菱製、東京スカイツリーのエレベーターは東芝製です。

第4位 台北101(台湾)
 台北101は地下5階、地上101階からなる超高層ビル。高さは509.2mです。2007年にドバイのブルジュ・ハリファに抜かれるまで世界一高いビル(電波塔などを除く)でした。中にはショッピングセンター、オフィス、レストランなどさまざまな施設が入っています。地上から展望台のある89階(地上382m)まで37秒で移動します。スピードは分速1,010m、時速60.6km、東芝製です。

第3位 広州国際金融センター(中国)
 広州国際金融センターは広州西塔とも呼ばれ、広州東塔と呼ばれるCTFファイナンスセンターと対をなしています。中国の広州にある高層ビルで、1階から66階までがオフィス。69階から98階がホテル、99階と100階が展望台とのこと。地上から95階のホテルロビー(440m)までの移動時間は43秒。スピードは分速1,200m、時速72km、日立製です。

第2位 上海タワー(中国)
 上海タワーの高さは632m。電波塔などを除いた「高層ビル」としての高さでは、現在のところ世界第2位です。エレベーターの速さは分速1,230m、時速73.8km。地下2階から地上119階までの移動にかかる時間は53秒。1分弱で100階以上の高さまで移動できます。こちらは三菱製です。

第1位 CTFファイナンスセンター(中国)
 CTFファイナンスセンター(Chow Tai Fook Finance Centre、広州周大福金融中心、広州東塔)の高さは530m。地下5階から地上111階まである超高層ビルです。エレベーターのスピードは分速1,260m、時速75.6km。2019年には世界最速のエレベーターとしてギネス記録に認定されています。また、これだけ早いと振動や騒音、耳づまりなども気になるところ。製造元の日立は、高速鉄道技術を活用したカプセル構造の乗りかごや、耳づまりを緩和するための気圧制御方式といった最新技術を駆使してこういった問題をクリアしているようです。

 ギネス記録に認定されている日立のエレベーターをはじめ、速度トップ5のエレベーターはいずれも日立、三菱、東芝といった日本を代表する企業のものでした。高速エレベーターの世界では日本企業にかなり高い技術力があり、シェアも大きいようです。日立は1960年代後半に当時の超高層ビル「霞ヶ関ビルディング」に超高速エレベーターを納入するなど、ながらくこの分野をリードしています。現在中国では超高層ビルの建設ラッシュが続いています。日本の技術が発揮される機会はまだまだありそうです。

日本国内の高速エレベーター5選

 日本国内に目を移してみましょう。国内にあるエレベーターでの最速は世界で第5位だった横浜ランドマークタワー(三菱製)の分速750m(時速45km)。2位は世界第6位の東京スカイツリー(東芝製)とサンシャイン60(三菱製)かと思われます。これらは分速600m(時速36km)です。続いておそらく4位に入ると思われるのは、大阪を代表する超高層ビル、あべのハルカス(地上60階、高さ300m)のものです。資料を見ると最速で分速360m(時速21.6km)、三菱製です。同じく六本木ヒルズ森タワー。こちらも最速で分速360m(時速21.6km)で、あべのハルカスのものと同等のスピード、東芝製です。

 その他、調べられた範囲では、東京都庁のエレベーターもそれなりに速いです。展望室のある45階までは専用エレベーターで55秒。速度は分速240m(時速14.4km)。東京の昔ながらのシンボル東京タワーの三菱製エレベーターは分速だと約200m(時速12km)。メインデッキ150mに到着するまでの時間は45秒、秒速だと3.33mとなります。東京タワーの高さ333mと同じ数字が並ぶのは偶然ではないかもしれません。また、北海道を代表する五稜郭タワーは分速210m(時速12.6km)、30秒で展望台に着きます。

 ここに挙げた国内の高層ビルは、三菱製もしくは東芝製のエレベーターが使われているようです。ちなみに一般的なマンションのエレベーターのスピードは分速45m(時速2.7km)が主流とのこと。速いものでも分速60m(時速3.6km)から90m(時速5.4km)といったところです。高層ビルのエレベーターがどれだけ早いかわかります。

<参考サイト>
世界のエレベーターランキングTOP5【速さ編】|京都エレベータ
https://www.kyoto-elevator.com/blog/2021/12/15/speedtop5/
台北101展望台|TAIPEI navi
https://www.taipeinavi.com/miru/1/
中国・広州の超高層複合ビル「広州周大福金融中心」に納入した日立製エレベーターが世界最高速としてギネス世界記録™に認定|HITACHI
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/09/0927.html
ビルの超高層化が進む中国を舞台とした、世界最高速エレベーターへの挑戦|HITACHI
https://social-innovation.hitachi/ja-jp/case_studies/elevator_china/
広州周大福金融中心(Chow Tai Fook Finance Centre)|Elevator Journal No.28 2020. 1
https://www.n-elekyo.or.jp/about/elevatorjournal/pdf/Journal28_06.pdf
エレベーター・エスカレーター|三菱電機ビルソリューションズ株式会社
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/case/01_abeno_harukas.html
六本木ヒルズ森タワー|東芝エレベーター株式会社
https://www.toshiba-elevator.co.jp/elv/case/new/054.html
ビジネス・導入事例 五稜郭タワー株式会社様 高層タワー用エレベーター|三菱電機
https://www.mitsubishielectric.co.jp/business/area/hokkaido/installations/detail01.html
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