社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.02.02

お酒を飲める人が「あえて飲まない」理由とは

 若者の飲酒離れが進み、成人ひとりあたりのアルコール消費量は年々減少傾向にあるのは多くの人が知る事実でもあります。お酒を飲む人が減ったことに相まって、コロナの影響も相まって飲み会自体が減ったことで、その風潮に拍車をかけていることは疑う余地もないでしょう。

 しかし、最近ではお酒は飲めるけど、あえて飲まない選択をしている人が増えていることをご存じでしょうか? お酒を飲まないライフスタイルを選ぶソバーキュリアスというライフスタイルが注目を浴びているのです。

ソバーキュリアスとは?

 2019年頃の欧米で生まれた概念で、お酒を飲まずにシラフでいることを楽しむライフスタイルを指します。ルビー・ウォリントンによって2018年(日本では2021年)に出版された『飲まない生き方 ソバーキュリアス』という本が注目を浴び、いま日本でも話題になっています。

 厚生労働省の調査によると、飲酒習慣がある(1合以上の飲酒を週3日以上行う)人は1999年と2019年で比べてみると、20代、30代は男女ともに低下していて若者のお酒離れが顕著であることがうかがえます。その中で、お酒は飲めるけどあえて飲まないと答える人の割合は若い世代ほど多く、20代では男女とも約27%を占めるとのこと。つまり、この時点で20代の3割程度にはソバーキュリアスの考え方が広まってきていると言い換えることもできるのです。

あえてお酒を飲まない理由は?

 お酒が好きな人からすれば「なんで飲めるのに飲まない選択をするのか?」と思うかもしれません。お酒を飲むと気分が楽しくなってコミュニケーションも円滑になるなどメリットを感じる人もいるでしょう。

 しかし、お酒は時として健康に悪影響をもたらしますし、飲み過ぎた時には余計な対人トラブルを引き起こすこともあります。さらに、飲み会に参加すればそれなりの金額がかかってしまいますし、飲み過ぎてしまえば、翌日の二日酔いで貴重な時間も消費してしまうことにも。お酒を飲まなければ避けられるこうしたデメリットと距離を置けること、それはお酒を飲まない選択をする大きなメリットということができるでしょう。

 とはいえ、ソバーキュリアスの人は禁酒や断酒のような意味合いでお酒と距離をとるわけではありませんので、人によっては嗜む程度にお酒を飲む人もいます。その世情を反映するように、最近ではノンアルコールカクテルやアルコール度数を抑えた微アルコールテイストのお酒も次々と登場しています。ソバーキュリアスの人は自分がお酒と適切な距離をとって楽しむことで、人生を豊かにするツールとして捉えていると考えられます。

誰もが食事を楽しめるように

 いかがですか? ソバーキュリアスの考え方が新しいと感じる方もいるかもしれませんが、すでに20~30代には浸透しつつある考え方ではないかと感じました。飲食店でもノンアルコールカクテルのメニューを用意している店も多く、お酒を飲む人、飲まない人どちらも楽しめる環境は作られつつあるでしょう。それぞれがアルコールの楽しみ方を選べる、新しい形が浸透していけばいいなと思っています。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化

浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
2

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために

「腸脳相関」という言葉がある。健康には腸内環境が大切といわれるが、腸で重要な役割をしている物質が脳にも存在することが分かっている。「バランスの良い食事」が健康ひいては睡眠にも大切なのは、このためだ。人生は寝るた...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も

「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も

平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー

18世紀に「国家連合」というアイデアが生まれたのだが、そのアイデアの発端はフランスの聖職者・外交官のサン=ピエールであった。一方、モンテスキューは集団安全保障的な考え方から「小共和国による連合」「連邦国家」の方向...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/15
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
4

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道

「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道

禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ

禅とは己事究明の道であるとして、本当の己は何かを究明していく。インドから伝わった仏教を中国が受容するには仏典漢訳の手続きがあり、経典のことばを尊ぶ傾向が生まれる。経典よりブッダ自身に学ぼうとしたのが禅の芽生えで...
収録日:2024/08/09
追加日:2025/01/20
藤田一照
曹洞宗僧侶