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DATE/ 2023.02.15

覚えのない宅配は「代引詐欺」?対処法とは

 コロナ禍のステイホーム期間を機に、通販サイトで買い物をする機会が増えたという人は多いでしょう。そうした中、玄関先でお金を支払う代引サービスを悪用した「代引詐欺」と呼ばれる詐欺が横行し、相談件数が増えているといいます。

 今回は「代引詐欺」に遭わないための注意点、遭ってしまった場合の対処法を解説します。

代引詐欺とはどんなもの?

 宅配で荷物が届いた時に、その場で宅配業者に現金で支払う代引サービス。今ほどネットショップが一般的でなかった時代からあるサービスなので、家族の誰かが荷物を代引で注文後、たまたま自分が受け取ることになり、(しぶしぶながら)立て替えた……なんて経験をした人も多いのではないでしょうか。

 最近は決済方法が多様化したことで、代引サービスを積極的に利用する機会は減ってきているかもしれません。しかし代引は注文したあとで支払うので、今月はクレカを使いたくない、商品が届くタイミングでお金を準備したい、確実に荷物を受け取りたい、といった時には便利です。

 しかし昨今は、「宅配業者から“代引の商品をお届けします”といわれたけど、注文した覚えがない」「私が家にいない間に家族から、自分宛の代引の荷物を受け取ったという連絡が来た。帰宅して中身を確認したら、頼んでもいないものでびっくりした」といったように、注文していないはずの荷物が突然届き、つい支払ってしまった……という事例が増えているといいます。これが代引詐欺です。

 中でも特に増えているのが、Amazonからの荷物を装った代引詐欺。いくつかの被害事例を見てみると、以下のような特徴があるようです。

・支払料金は数千円~数万円程度
・伝票に架空の連絡先が記載されている
・Amazonの注文履歴に頼んだ形跡がない(誰かが自分の名前を使っている)

 荷物の中身を見ればすぐに「詐欺だ」と気づけますが、とはいえその場で荷物を開封するわけにもいかず、そのまま受け取ってしまう人がほとんどでしょう。Amazonはもともと利用者が多くリピートして使う人も多いため、突然荷物が届いたとしても、あまり警戒心を抱かずについ支払ってしまうかもしれません。

 消費者庁が運営する国民生活センターによると、こうした代引詐欺は年々増えており、また送られてくるものも衣料品から雑貨、スマートフォン用品など多岐にわたっているとしています。

犯人の狙いはAmazonポイントか

 犯人はどのようにして荷物を送ってきているのかというと、Amazonの『ギフト』という発送方法を利用しているのではと考えられています。犯人は何かしらの方法で送り先の氏名と連絡先を入手すると、『ギフト』という形で商品を購入、支払方法を『代引』に設定して発送しているのです。

 ギフトなのに代引を設定……というのは違和感がありますが、システム上可能なので、犯人はそれを悪用しているわけです。

 では、犯人はなぜこのようなことをしているのでしょうか。一説には「Amazonポイントを不当に得ること」だといわれています。

 Amazonポイントは、購入金額に合わせたポイント数が、支払いが完了したタイミングで付与されるものです。誰かへのギフトとして購入した商品なら、通常は発送者=購入者ですので、当然、購入かつ発送した本人にポイントが付与されます。

 しかしこれが「代引設定」されると、発送者≠購入者ではなくなります。その結果、Amazonポイントは購入者(代引で支払う人)ではなく、犯人(発送者)に付与されることになるのです。代引で支払った後に詐欺だと気づいて返品・返金の手続きが完了する前に、付与されたAmazonポイントを使いこもうという手口なのです。

 とはいえ、金額に対して付与されるAmazonポイントは、せいぜい数十円、多くても数百円程度。詐欺としてはあまり効率的とは思えません。そのため、代引詐欺は単なる「イタズラ目的」ではないかという見方もあります。

代引詐欺の明確な意図は不明

 こうした代引詐欺が横行する背景には、やはり通販サイトの利用増加が一因とされます。

 しかし被害が増えているとはいえ、被害金額がさほど高額ではないために、あまり表沙汰になっていないのが実情。そもそもアカウントやクレカを乗っ取って搾取するのと違い、どこかの会社の商品を送りつけて支払わせたところで、犯人に金銭的なメリットはほとんどありません。それが、この代引詐欺の不気味なところです。

 警察も、このようなトラブルが多発していることは把握しているものの、捜査状況を公表していないため「誰が」「何のために」やっているのかは、今のところ不明となっています。

代引詐欺に遭わないためには?

 まずは大前提として「不審な荷物は受け取らない」ということ。届いた荷物に心当たりがない場合、宅配業者(ドライバー)の人にそのように伝えればそのまま持ち帰ってもらえることができます。家族や同居人にも、届く予定の荷物があるかないか、ない場合は受け取らない旨を、しっかり共有しておくことが何よりも大切です。支払方法を「クレジットカード」限定にしておけば、代引の荷物が来ても「おかしい」とすぐ気づけるので、オススメです。

 もしも荷物を受け取って料金を支払ってしまった場合は、通販サイトに連絡して、返品・返金の手続きをしてもらいましょう。Amazonではこうした代引詐欺に対するサポートがあり、返金は同額のAmazonギフト券か、または銀行口座への振込のようです。

 それでも解決しない、ひっきりなしに代引詐欺の荷物がやってくるなどという場合は、国民生活センターか近くの消費者センター、あるいは警察に相談しましょう。

 犯人の意図がどうであれ、金銭的な被害があり、かつ被害者にストレスを与えている時点で、代引詐欺は非常に悪質です。同様の被害がこれ以上増えないためにも、対処方法はしっかり押さえておきましょう。

<参考サイト>
・代引きで身に覚えのない荷物が送られてきた(独立行政法人国民生活センター)
https://www.kokusen.go.jp/t_box/data/t_box-faq_qa2019_05.html
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