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DATE/ 2023.04.30

私有地の「無断駐車」どう対処すべき?

 禁止されているところに車を停める無断駐車。公道での無断駐車の場合には道路交通法の規定で取り締まることができますが、私有地での無断駐車については警察が介入しにくいため、公道と同じような対応ができるのでしょうか?

私有地での無断駐車は罪に問える?

 前述の通り、公道であれば道路交通法違反として刑事罰の対象となります。しかし、私有地はあくまでも個人が管理している土地や駐車場となるため、刑事罰ではなく民法上の不法行為という扱いになります。

 つまり、刑事罰として取り扱うことができないために警察は民事不介入の原則により介入がしづらい、という現状があるのです。では野放しにするしかないのか、というとそういうわけではなく、損害賠償を求める裁判を起こすことは可能です。つまり、警察ではなく私人同士で解決する問題だということになります。

無断駐車された時にやってはいけないこと

 自分の駐車場や土地に無断駐車された時に、レッカー車で強制移動させたり、タイヤを動かせないようにロックしたり、タイヤを抜いたりするのはやめましょう。これは「自力救済の禁止」という原則により、逆に実力行使した側に損害賠償を求められることがあります。

 この「自力救済の禁止」とは、私人の権利を侵された時に公的な手続きを経ずに、自らの力で解決させることです。私たちの権利は法律で守られているため、それを侵された時には公的な手続きをとる必要があります。その段階を飛ばして自分の力で解決させるということは、広い意味でいえば武力や暴力で解決するのも許してしまうことになってしまうのです。そのため、上記のような車を動かせなくする措置は自力救済にあてはまってしまうため、原則としては認められていない、ということになります。もしレッカー車で移動させたり、タイヤを動かせないようにした時に車にキズがついた、車が使えない状態になった場合には、車の所有者から損害賠償を請求される恐れもあります。

 納得できない、と思う人も多いでしょうが、こうした対応は行わないようにしましょう。私有地に無断駐車された場合にはどんな対処法があるのでしょうか?

無断駐車の対処法は?

 まずは無断駐車されないように事前の対策をしておくことが大切です。「無断駐車禁止の看板や張り紙を掲示する」など、私有地であることと駐車禁止であることをわかるようにしておくようにしましょう。張り紙だけでなく、カラーコーンやコーンバーなど物理的に駐車できないようにするのも効果的です。たまに「駐車したら罰金をいただきます」とありますが、これは法的な拘束力はないためにトラブルになりかねませんので、避けた方が良いでしょう。

 もし無断駐車されてしまったら「駐車禁止であること、すみやかに移動することを書いた警告文をワイパーに挟む」ようにしましょう。窓ガラスに貼ってしまうと粘着が残ってしまう可能性があり、車に傷をつけられたとトラブルの種になる可能性もあるので、なるべく傷つけないように気を付けることが重要です。

 また長期にわたる無断駐車や、度々にわたる無断駐車の場合には、「無断駐車された日時がわかるように写真を撮影しておく」ことも大切です。車種やナンバーと合わせて警察や弁護士に相談することで、所有者を調べてもらって公的な手続きを踏むことができるので、問題を解決へ導くことができるでしょう。

事前の対策が肝要

 知らない道を走っている人にとっては、その道が公道か私有地なのかがわかりづらい場合もあります。まずは私有地だとしっかりわかるように掲示をすることが、トラブルを防ぐもっとも効果的な方法といえます。それでも解決しない場合には実力行使ではなく法的な手続きを踏む、ということを覚えておきましょう。

 逆に車を駐車させる場所を探している人も、私有地と書かれているところに駐車するとトラブルに巻き込まれる可能性があります。駐車が許可されている場所を探して停めるようにしましょう。
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