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DATE/ 2023.05.07

それまだ乗るの?車の買い替え理由5選

 従来、車の寿命は10年10kmが基準と言われてきました。最近では性能や耐久性が向上したこともあり寿命はもっと長くなっているようです。こうなるとなかなか買い替える理由がなくなってきたようにも感じます。一般的にはどういったタイミングで買い替える人が多いのでしょうか。統計などを見ながら状況を見てみましょう。

半数の人は「古くなったら」買い替える

 中古車輸出事業を中心とする株式会社ENGは直近一年間で車を買い替えた人を対象に、買い替え理由などに関する調査を行っています(2022年11月24日から25日、対象1028人、インターネット調査)。これによると、買い替えた理由のトップ5は複数回答で多い順に以下の通りとなっています。

1位「車体が古くなったから(48.2%)」
 買い替えのもっとも大きな理由は車が「古くなった」と感じた点にあるようです。およそ回答者の半数、48.2%の人が「車が古くなったから」と回答しています。車体の塗装が剥げたり、タイヤの交換時期がきたりした点が具体例として挙げられています。

2位「車検や保証が切れるタイミングだったから(27.9%)」
 続いて多かったのは車検のタイミング。車検は一般的な乗用車の場合は新車登録後3年、その後2年ごととなっています。車検を受ける際には業者に支払う代金だけでなく、重量税や自賠責保険料なども必要になることから、それなりに大きな出費となります。このタイミングで買い替える人も多いようです。もちろん車検時にパーツ交換といったことが発生すれば、それだけ費用はかさみます。

3位「燃費代が高くなったから(10.7%)」
 この回答に関連するものに「環境問題に配慮したかったから(5.8%・全体で8位)」もあります。燃費代を気にする人もハイブリッド車や電気自動車に買い替えた人は多いのではないでしょうか。特に燃費代はじわじわと生活を圧迫する問題でもあります。現在では経済的な問題と環境問題の双方の側面から、化石燃料ではない選択肢を選ぶ人が増えているようです。

4位「メンテナンス費用が割高になったから(10.3%)」
 古くなれば、メンテナンスするたびに少しずつパーツ交換が必要になったりします。また、関連する回答に「故障で交換する部品が生産終了になったから(7.8%・全体で6位)」というものもあります。車種にもよると思われますが、生産終了した車種などで他の車種とパーツを共有していないものの場合、特に大きな理由となりうるかもしれません。ともあれ、この点についてもやはり古い車で特に問題になる点と言えます。

5位「特に理由はない(8.6%)」
 これは「気分的にそろそろだと思ったなど」が具体例として挙げられています。おそらく「飽きた」といったことや、「欲しいと感じる車が発売された」といった気分的な理由だと思われます。もちろん車は道具であるとともに、楽しむものでもあります。新鮮味を求めて、また生活に余裕がでてきたことで、もともと欲しかった車に買い替えるといったこともあるでしょう。

およそ25%が5年で買い替えている

 ここまで見てきたことを通して考えると、おおよそどの理由に関してもやはり「古さ」が大きく関わっていることがわかります。では実際に何年くらいで買い替える人が多いのでしょうか。同調査によれば以下の通りとなっています。

~1年(5.4%)
~3年(13.8%)
~5年(24.9%)
~7年(18.0%)
~10年(17.2%)
~13年(12.2%)
14年以上(8.5%)

 ボリュームゾーンとしては、5年で一度ピークが来て、そこから10年経過した時点までが多いようです。次に走行距離もみてみましょう。

~1万キロ(5.3%)
~3万キロ(12.8%)
~5万キロ(17.9%)
~7万キロ(14.9%)
~10万キロ(21.1%)
~15万キロ(18.6%)
16万キロ以上(9.4%)

 10万キロから15万キロといったところで21.1%から18.6%と一つのピークがあるようです。それらに次いで5万キロでも17.9%の人が買い替えています。ここも一つ注目するポイントです。

5年5万キロがひとつの乗り換えピーク

 ここまでを見てみると、5年辺りで一度目の買い替えピークがあります。5年経過時点は新車購入からちょうど二度目の車検を迎えるタイミングです。また購入後5年経過した頃には、自身の状況にも変化が起きている可能性もあります。たとえば25歳で車を購入した人は5年後の30歳には結婚しているかもしれません。

 またこの5年後には子供が産まれている可能性もあります。この点に関しては、実際に先のアンケートの回答では7位に「家族が増えた、引越しをしたなどの事情(5.9%)」といった理由も入っています。さらに1年1万キロという一般的な計算で行けば、この5年経過した車は5万キロ走っています。5万キロも比較的多いゾーンでした。つまり、5年5万キロが一つのポイントと言えそうです。

車の寿命は毎年伸びている

 新車で買った場合、新しければ新しいほど中古車として買い取られる際のリセールバリューは高いですが、5年くらいであればそこまでリセールバリューは下がりません。これが次の新車を買う原資にもなります。また、ローンについても5年で組むことは多いようです。こう考えると5年5万キロでの買い替えは、無理がない買い替え方といえるのかもしれません。

 一方で、走行距離でのボリュームゾーンを見ると、5年5万キロを越えても乗り続けて10万キロ、15万キロを越えて乗り続ける人も多いことがわかります。また、最近の車はしっかりとメンテナンスを行っていけば、20万キロ以上でも問題なく走るという話もあります。

 自動車検査登録情報協会による令和4年(2022年)の調査では、普通自動車の平均車齢(自動車の最初の登録からの経過年数・人間でいう平均年齢)は9.03年となり、28年連続で過去最高齢となったとのこと。ちなみに平均使用年数(人間でいう平均寿命に類似)は普通自動車で13.84年となり、10年前(平成24年・2012年)に比べて1.68年伸びています。車は年々長く乗られるようになっているようです。

<参考サイト>
【自動車の買い替えに関する調査を実施】10年10万キロよりも早期に買い換える人も?買い替えで後悔しないために、まず必要なこととは?|PRTimes
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000069758.html
わが国の自動車保有動向|一般財団法人 自動車検査登録情報協会
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授