テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.03.24

日本で唯一!山口市がタイムズ紙に選ばれた理由

日本から唯一選出された山口市

 アメリカの代表的な新聞のひとつであるニューヨーク・タイムズ紙は、毎年1月に観光先としておすすめの世界中のスポットを発表しています。この2024年版「52 Places to Go in 2024(2024年に行くべき52か所)」に、日本で唯一選ばれたのが、山口県山口市です。しかも、1番目の「皆既日食の道」が観測できる北米、2番目のオリンピック開催を控えるパリに続く、3番目に紹介されるという注目度の高さ。

 日本の観光名所といえば、歴史ある名刹が建ち並ぶ京都や奈良、雄大な自然が広がる北海道や沖縄などがよく取り上げられますよね。山口市は少々意外な感じがしますが、どのような点が評価されたのでしょうか。

 山口市を推薦したのは、フォトグラファーでライターのクレイグ・モド氏です。アメリカ出身で日本在住のモド氏は日本各地を旅して回っており、日本の大都市以外にも精通しています。モド氏が2023年に推薦した岩手県盛岡市は、「2023年に行くべき52か所」でロンドンに続く2番目に紹介され、大きな注目を集めました。

 そんなモド氏が語る山口市の魅力は、「西の京都とも呼ばれる歴史的な文化遺産を持ち、観光公害に悩まされることが少ないコンパクトな都市」という点。山口県はかつて大内氏という一族が統治しており、大内氏が館を築いた土地は京都とよく似た地形でした。そこで大内氏はこの地形を生かし、西の京都といわれる風雅な町をつくりあげました。山口市はそんな大内文化をはじめとする歴史遺産を、落ち着いた静かな環境で観光できるところが評価されているのです。

魅力あふれる山口市のスポットやイベント

 それでは、具体的な山口市の魅力はどのようなところにあるのでしょうか。「2024年に行くべき52か所」で紹介されているスポットやイベントを見てみましょう。

 瑠璃光寺五重塔:大内氏26代当主・盛見(もりはる)が、兄・義弘の供養塔として嘉吉2(1442)年に建立した五重塔。大内文化の代表的な建造物で、日本に現存する五重塔では10番目に古く、国宝に指定されています。五重塔は瓦屋根がほとんどですが、瑠璃光寺五重塔は珍しい檜皮葺き屋根。このタイプの屋根を持つ五重塔は全国に4基しか現存していません。悠然とした反りの屋根と上層に向かうほど細くなるシルエットが優美な、日本三名塔のひとつです。2024年3月現在、「令和の大改修」を行っているため見学できなくなっていますが、普段は五重塔に安置されている秘仏・阿弥陀如来坐像の特別拝観ができるほか、オリジナルの空間アートプログラムや改修工事のライブ中継など、レアなプログラムを体験できるチャンスになっています。

 洞春寺:大内氏の次に山口市を統治したのが毛利氏です。洞春寺は戦国大名として毛利氏を隆盛に導いた12代当主・元就の菩提寺で、永亀3(1572)年に現在の萩市で創建され、幕末期に山口市へと移転しました。山門と観音堂が重要文化財に指定されています。敷地内にある陶芸工房「水ノ上窯」では陶芸体験に参加できます。

 湯田温泉:伝説によれば、大内氏30代当主・義興(よしおき)の時代に見つかったとされる温泉地。白狐が足の傷をいやしたといわれます。1日に約2,000トンも湧き出るという豊富な湯量を誇り、泉質は肌なじみのいいアルカリ性単純温泉。神経痛、関節痛などの痛みや、冷え性、疲労回復などに効果があるほか、美肌の湯としても人気です。

 山口祇園祭:大内氏が京都から招いた八坂神社のお祭りで、7月20日から27日にわたって開催されます。鷺(さぎ)に見立てた頭と羽をつけて舞う「鷺の舞」の奉納から始まり、お神輿が御旅所(神様の巡行の目的地)まで練り歩く御神幸があり、神様を八坂神社へお返しする御還幸で幕を閉じます。約600年の伝統を持つ山口市の夏の風物詩です。

 このほかにコーヒーショップや食事処も紹介されており、歴史遺産もグルメもゆったり楽しめる山口市。県知事や市長も国内外の観光客の受け入れに前向きなコメントを発表しており、大きな盛り上がりを見せそうです。今年のGWや夏休みは、山口市を訪れてみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・NHK 「行くべき52か所」に山口市を選定 ニューヨーク・タイムズ
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20240110/4060019100.html
・山口市 ニューヨーク・タイムズ紙「2024年に行くべき52カ所」に「山口市」が選ばれました!!
https://www.city.yamaguchi.lg.jp/soshiki/21/152652.html
・おいでませ山口へ ニューヨーク・タイムズ紙「2024年に行くべき52カ所」に「山口市」が選ばれました!!
https://yamaguchi-tourism.jp/feature/detail_119.html
・萩往還 NewYorkTimes誌「2024年に訪れるべき52か所」
https://www.hagioukan.com/wp/2024/01/15/20240115/
・日刊ゲンダイ NYタイムズ「行くべき旅行先」3番目に山口市が!昨年2番目の盛岡市は絶大な集客効果
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/334670
・大内文化まちづくり 大内文化とは
https://ouchi-culture.com/about/
・湯田温泉 湯田温泉の歴史
https://yudaonsen.com/yudaonsen/history/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

EVが電気を運ぶ…モビリティの変化と非常時のレジリエンス

EVが電気を運ぶ…モビリティの変化と非常時のレジリエンス

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(6)モビリティとエネルギーの融合

現在、電気自動車(EV)の開発、普及が急速に進んでいる。それはつまり、道路上で車が電気を運んでいるということを意味する。これからのサステナブルな電力供給を考える上で、この状況は重要な意味を持っている。リアル空間の...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/05/18
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
2

ウクライナ戦争は何年続く…世界史が物語る戦争の不可思議

ウクライナ戦争は何年続く…世界史が物語る戦争の不可思議

世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(1)長期戦の歴史と「ピュロスの勝利」

2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻。両者の攻防は1年が経過してもなお続いているが、いったいこの戦争はどのような終結を迎えるのか。さらなる長期化の可能性を考えたとき、過去に長期化した戦争の歴史を振り返ること...
収録日:2023/02/28
追加日:2023/03/29
山内昌之
東京大学名誉教授
3

「バカげたアイデア」が成功する!? カギは不満と情熱と改善

「バカげたアイデア」が成功する!? カギは不満と情熱と改善

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(5)スタートアップ成功の秘訣:前編

Yコンビネーターで経験を重ね、紆余曲折を経てOpenAIの事業を成功させたサム・アルトマン。彼のように、革新的で、多くのユーザーに愛されるサービスを生み出すためには、どのようなマインドセットが必要なのだろうか。「素晴ら...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/05/17
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

【会員アンケート企画】人間力を高めるために大切なものは?

【会員アンケート企画】人間力を高めるために大切なものは?

編集部ラジオ2024:5月15日(水)

今回の会員アンケート企画では「人間力を高めるために大切なものは何か?」というテーマでご意見をいただきました。

そもそも「人間力」とは? これは、ある意味ではどのようにも考えられる難しい問いです。しかし...
収録日:2024/05/08
追加日:2024/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家