テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.11.26

増える「おひとりさま老後」必要な資金とは

 65歳以上は高齢者とされますが、この高齢者に占める「一人暮らし」の割合は、令和2年(2020年)の段階で男性は15.0%、女性22.1%となっています。さらに総務省の試算では、令和22年(2040年)には男性20.8%、女性24.5%まで増加するようです。「おひとりさま老後」の場合、一般的に夫婦二人の場合よりも経済的にも厳しい状況になるという話もあります。ここでは、「おひとりさま老後」に必要な資金について考えてみましょう。

平均値で毎月およそ2万円不足する

 総務省統計局の資料「2022年(令和4年) 家計の概要」には、「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支」が報告されています。これによると、老後の実収入は平均134,915円であるのに対して、支出は消費支出143,139円+非消費支出12,356円となっています。ここでの非消費支出とは「税金や社会保険料など」のことです。

 つまり支出の合計15.5万円に対して、収入は13.5万円なので、平均で考えると毎月およそ2万円程度は不足することになります。毎月2万円ということは1年で24万円、20年後の85歳までにはおおよそ480万円が基本的な生活上で不足します。さらに、この調査では住居費が占める割合は8.9%(金額では1万3000円程度)です。賃貸で生活する場合は、ここにあと数万円が毎月上乗せされることになります。

 他の内訳としては、食料費が最も多く26.2%(3万7000円程度)、次いで交際費が12.5%(1万8000円程度)、水道・光熱費10.3%(1万5000円程度)、交通・通信費が10.2%(1万5000円程度)です。さらにいえば、この計算に含まれているのは生活上のごく基本的なもののみです。比較的大きな出費でありかつ、必要となる可能性が高い「入院・介護費用」「住宅リフォーム代」などは含まれていません。このことから実際にはもっと大きな金額が必要だと考えていいでしょう。ただしあくまで平均なので、住むエリアや年齢によって差異はあります。

投資や節約だけでなく「労働」が大事

 先に「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支」における収入の平均を134,915円と示しましたが、この収入の90%は年金が占めています。2021年(令和3年)において厚生年金保険(第1号)の、65歳以上での平均月額は14万3965円です。男女別では、男性が16万3380円、女性が10万4686円です。厚生年金保険(第1号)とは企業に勤めていた人が該当します。一方国民年金を見ると、平均月額は5万6368円、男女別だと男性5万9013円、女性5万4346円となっています。

 年金収入で足りない分をどう補うか。退職金をそれなりにもらった人ならば、ある程度はまかなえるかもしれません。また貯蓄や投資、生活費の節約という手段は早めから行っておきたいところです。あとは退職後も何かしらの「労働」をして稼ぐしかありません。ただし特に「おひとりさま老後」の場合、退職後もあえて「労働」をすることには、経済的な必要性以上の意味があります。

 老後に完全に一人になることは認知症のリスクを高めたり、孤独死につながったりするリスクが高くなります。また引きこもれば運動不足になり、自分一人の食事はいい加減になっていきます。いったんこのスパイラルに入ると、状況を好転させるためのハードルはより高くなります。老後の「労働」は、他者とコミュニケーションを取り、社会と接点を持ち続けながら心身の健康を保つことを可能にします。経済的必要性から発するものではありますが、「おひとりさま老後」の人が「老後も働く」ことは、前向きに生きるためには必要なものと捉えてもいいのではないでしょうか。

<参考>
1 高齢者の家族と世帯|内閣府
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_1.html
2022年(令和4年) 家計の概要|総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2022np/pdf/summary.pdf
高齢男女をめぐる状況|男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h23/zentai/html/honpen/b1_s05_01.html
令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf
おひとりさまの老後に必要な資金は?平均消費支出の解説や資産を増やす方法│常陽銀行
https://www.joyobank.co.jp/woman/column/201507_04.html
おひとりさまの老後に必要なお金はいくら? 老後資金はどうやってつくればいい?|ファイナンシャルフィールド
https://financial-field.com/oldage/entry-234953
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?

東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
2

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点

猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事
3

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
中西輝政
京都大学名誉教授
4

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原

『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
堀口茉純
歴史作家
5

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事