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『アンモナイト学入門』で迫る絶滅生物、「ぐるぐる」殻の謎
「アンモナイト」と聞くと、多くの人はぐるぐると殻を巻いた貝を思い浮かべるでしょう。恐竜と同様、よく知られた古代生物です。アンモナイトの化石は、現在でも建物の大理石中にも見つかります。たとえば、日本橋三越本店や日本橋高島屋などの大理石の壁には、よく見るとアンモナイトが隠れている場所があるそうです。
アンモナイトが登場するのは約4億年前(古生代デボン紀前期)。そこから約3億年後(新生代古代第三紀初期)に絶滅します。よく似た現生の生物に「オウムガイ」がいますが、これは約5億年前から現在まで生息しています。両者はよく似ていますが、アンモナイトはオウムガイよりもイカやタコに近い生物だったと考えられています。ちなみにイカ、タコ、オウムガイ、アンモナイトはいずれも同じ頭足類です。
アンモナイトは何を食べ、どのように生きていたのかのでしょうか。その姿は少しずつ明らかになってきました。こういったアンモナイトの進化や生態など、最新のアンモナイト研究について詳しく解説する本が『アンモナイト学入門:殻の形から読み解く進化と生態』(相場大佑著、誠文堂新光社)です。
著者の相場大佑(あいばだいすけ)氏は1989年、東京都生まれで、横浜国立大学大学院博士課程を修了しています。専門は古生物学、特に化石頭足類アンモナイトの分類・進化・古生態とのこと。これまでに2つの新種を発見していたり、三笠市立博物館学芸員の仕事をしていた時には「ポケモン化石博物館」を企画し、総合監修を務めたりしています。現在は公益財団法人深田地質研究所研究員として活動しています。
たとえば雌雄について。それまで別の属・種と認識されていた全く異なるアンモナイトが、1963年に雌雄のペアとされています。このことがセンセーショナルだった理由の一つは、ペアとみなすには無理がありそうなくらいに、殻の形や大きさが異なっていたからです。
雌雄ペアと見なされる条件には以下の基準があります。一つ目は、成長の途中までほとんど(あるいはまったく)見分けがつかないが、成長の後期に変化が現れること。二つ目は同じ祖先から進化してきた系統であること。三つ目は生息地域に重なりがあること。四つ目は化石が出る地層の年代が全く一緒であること。こういった条件を照らし合わせて、雌雄と考えるのに妥当であるペアが決定されています。
続いて何を食べていたのかという点について。貝形虫、有孔虫、浮遊性のウミユリ(サッコーマ)、切り刻まれたアンモナイトの顎器など、消化管があったと思われる場所から見つかっているそうです。ちなみに、共食いに関してはイカでも知られているので、それほど不思議なことではないようです。
ただし、切り刻むことに適した顎器を持っているわけではありません。切り刻まれた小さなアンモナイトの顎器が消化管から見つかることの理由は、まだよくわかっていません。また、アンモナイトが何に食べられていたのかといえば、確実にいえるところでは、コウモリダコ類、べレムナイト類(イカに似た頭足類)、アンモナイト、魚類です。
これは「二つの系統に共通した特徴は、それらに挟まれた系統も同様に有している」という考え方です。たとえば、ワニは卵を産み、鳥も卵を産みます。恐竜はその間に位置するので、きっと卵を産んだはず、と想定することができます。そうして、実際に卵の化石が発見され、のちにこれが裏付けられました。
アンモナイトで考えれば、現生頭足類の中でもっとも原始的な系統はオウムガイで、もっとも進化的な系統はイカです。この間にアンモナイトがいます。そこで、アンモナイトの腕の数が推測します。
イカは10本、オウムガイはオスが62本、メスが86~90本です。ただし、発生初期のオウムガイの腕の数は10本で、そこから分岐して数が増えることがわかっています。つまり、頭足類の腕の基本数は10本と考えることが自然です。ちなみにタコは進化の過程で2本が退化したそうです。また、2019年には、アンモナイトの祖先であるバクトリテスから進化して間もない石炭紀のイカ・タコの祖先の腕は10本だったことが明らかになりました。
こうして、系統ブラケッティング法とアンモナイトの祖先に近い化石の情報から、アンモナイトの腕は10本である可能性が高いと結論づけられています。
アンモナイトの復元図は、1830年代にはアオガイというタコのなかまをモデルに描かれます。この復元図のアンモナイトは船のように海表面に浮かび、大きく発達した腕をうさぎの耳のように上向きに伸ばしています。つまり海に浮かぶ生き物として描かれています。
こののちオウムガイが知られるようになって、アンモナイトのモデルになります。20世紀に入ると、よりイカやタコに近づき、2010年にはついに10本腕で描かれるようになります。こうして、アンモナイトは時間をかけてその姿を少しずつ明らかにしてきました。
本書では、こうした研究の流れが細かく記されています。また、現在明らかになっていない部分については、「まだわからない」と端的に記されています。ただ、この「わからない」というところ、その謎にロマンを感じる方も少なくないのではないでしょうか。つまり、アンモナイトはまだまだ研究の余地が多く残されているのです。ぜひ本書を手に取って見てください。数億年前に絶滅した古生物の在り方、その謎が少しずつ「明らかになる」ことの面白さが体感できるはずです。
アンモナイトが登場するのは約4億年前(古生代デボン紀前期)。そこから約3億年後(新生代古代第三紀初期)に絶滅します。よく似た現生の生物に「オウムガイ」がいますが、これは約5億年前から現在まで生息しています。両者はよく似ていますが、アンモナイトはオウムガイよりもイカやタコに近い生物だったと考えられています。ちなみにイカ、タコ、オウムガイ、アンモナイトはいずれも同じ頭足類です。
アンモナイトは何を食べ、どのように生きていたのかのでしょうか。その姿は少しずつ明らかになってきました。こういったアンモナイトの進化や生態など、最新のアンモナイト研究について詳しく解説する本が『アンモナイト学入門:殻の形から読み解く進化と生態』(相場大佑著、誠文堂新光社)です。
著者の相場大佑(あいばだいすけ)氏は1989年、東京都生まれで、横浜国立大学大学院博士課程を修了しています。専門は古生物学、特に化石頭足類アンモナイトの分類・進化・古生態とのこと。これまでに2つの新種を発見していたり、三笠市立博物館学芸員の仕事をしていた時には「ポケモン化石博物館」を企画し、総合監修を務めたりしています。現在は公益財団法人深田地質研究所研究員として活動しています。
全く別の種とされていたものが実は雌雄だった
これまでに発見されたアンモナイトの種類は1万種を越えています。現在のイカやタコがおよそ700種であることから考えると、圧倒的な数です。また研究の際には比較的近い種であるイカやタコの生態を参考にしたり、殻を持ち見た目が似ているオウムガイも参考にされます。こうして現在までにさまざまなことがわかってきました。たとえば雌雄について。それまで別の属・種と認識されていた全く異なるアンモナイトが、1963年に雌雄のペアとされています。このことがセンセーショナルだった理由の一つは、ペアとみなすには無理がありそうなくらいに、殻の形や大きさが異なっていたからです。
雌雄ペアと見なされる条件には以下の基準があります。一つ目は、成長の途中までほとんど(あるいはまったく)見分けがつかないが、成長の後期に変化が現れること。二つ目は同じ祖先から進化してきた系統であること。三つ目は生息地域に重なりがあること。四つ目は化石が出る地層の年代が全く一緒であること。こういった条件を照らし合わせて、雌雄と考えるのに妥当であるペアが決定されています。
何を食べていたのか
突起をもつような殻装飾が比較的派手なアンモナイトは、浅海域に多い傾向があるようです。突起が多いことは、防御や安定性という面で役に立ったと考えられます。また泳ぐ際には、オウムガイと同様に、軟体部の腹側にあった漏斗から海水を噴射していたと考えられています。続いて何を食べていたのかという点について。貝形虫、有孔虫、浮遊性のウミユリ(サッコーマ)、切り刻まれたアンモナイトの顎器など、消化管があったと思われる場所から見つかっているそうです。ちなみに、共食いに関してはイカでも知られているので、それほど不思議なことではないようです。
ただし、切り刻むことに適した顎器を持っているわけではありません。切り刻まれた小さなアンモナイトの顎器が消化管から見つかることの理由は、まだよくわかっていません。また、アンモナイトが何に食べられていたのかといえば、確実にいえるところでは、コウモリダコ類、べレムナイト類(イカに似た頭足類)、アンモナイト、魚類です。
足はおそらく10本だった
アンモナイトの軟体部(殻の中にあった本体)はほとんどの場合、化石になりません。生き物の軟組織を構成するタンパク質は分解されやすく、ほとんどの場合、化石になる前に腐ってしまうからです。こうしたことから、さまざまな状況をもとに推測するしかないのです。また、このときには「系統ブラケッティング法」という研究方法が重要になってきます。これは「二つの系統に共通した特徴は、それらに挟まれた系統も同様に有している」という考え方です。たとえば、ワニは卵を産み、鳥も卵を産みます。恐竜はその間に位置するので、きっと卵を産んだはず、と想定することができます。そうして、実際に卵の化石が発見され、のちにこれが裏付けられました。
アンモナイトで考えれば、現生頭足類の中でもっとも原始的な系統はオウムガイで、もっとも進化的な系統はイカです。この間にアンモナイトがいます。そこで、アンモナイトの腕の数が推測します。
イカは10本、オウムガイはオスが62本、メスが86~90本です。ただし、発生初期のオウムガイの腕の数は10本で、そこから分岐して数が増えることがわかっています。つまり、頭足類の腕の基本数は10本と考えることが自然です。ちなみにタコは進化の過程で2本が退化したそうです。また、2019年には、アンモナイトの祖先であるバクトリテスから進化して間もない石炭紀のイカ・タコの祖先の腕は10本だったことが明らかになりました。
こうして、系統ブラケッティング法とアンモナイトの祖先に近い化石の情報から、アンモナイトの腕は10本である可能性が高いと結論づけられています。
少しずつ明らかになっていく生態
このように、アンモナイトについてはさまざまなことがわかってきました。また、ごくわずかですが、ドイツでは軟体部の化石も見つかっています。これによると、目の部分であったり食道や胃と解釈できるものが残っていたりします。アンモナイトの復元図は、1830年代にはアオガイというタコのなかまをモデルに描かれます。この復元図のアンモナイトは船のように海表面に浮かび、大きく発達した腕をうさぎの耳のように上向きに伸ばしています。つまり海に浮かぶ生き物として描かれています。
こののちオウムガイが知られるようになって、アンモナイトのモデルになります。20世紀に入ると、よりイカやタコに近づき、2010年にはついに10本腕で描かれるようになります。こうして、アンモナイトは時間をかけてその姿を少しずつ明らかにしてきました。
本書では、こうした研究の流れが細かく記されています。また、現在明らかになっていない部分については、「まだわからない」と端的に記されています。ただ、この「わからない」というところ、その謎にロマンを感じる方も少なくないのではないでしょうか。つまり、アンモナイトはまだまだ研究の余地が多く残されているのです。ぜひ本書を手に取って見てください。数億年前に絶滅した古生物の在り方、その謎が少しずつ「明らかになる」ことの面白さが体感できるはずです。
<参考文献>
『アンモナイト学入門:殻の形から読み解く進化と生態』(相場大佑著、誠文堂新光社)
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/science/85247/
<参考サイト>
相場大佑氏のX(旧Twitter)
https://x.com/ammo_ammo_ammo?
『アンモナイト学入門:殻の形から読み解く進化と生態』(相場大佑著、誠文堂新光社)
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/science/85247/
<参考サイト>
相場大佑氏のX(旧Twitter)
https://x.com/ammo_ammo_ammo?
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