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40代に増加する「大人のひきこもり」の実態
島根県が2014年5月に公表した「ひきこもり等に関する実態調査報告書」によると、地域の中でひきこもっている人の年齢は、40歳代が一番多く、40代以上の比率が53%に達していることがわかりました。また、2017年5月に佐賀県が公表した「ひきこもり等に関する調査結果」でも、年代別では、60歳以上が一番多く、次いで40歳代、50歳代となっており、中でも40歳代男性が一番多いということがわかっています。これがすべての都道府県にあてはまるとは限りませんが、日本中で「大人のひきこもり」が増えており、大きな社会問題になっているのは間違いありません。
ひきこもりには、もう一つ大きな理由があります。ひきこもりの方々のなかには、トラウマ、ADHD、自閉症、慢性疲労症候群、緘黙症(かんもくしょう)などが障がいとなり、社会に出ていけない人が多くいるのです。この問題を解決していくことも大きな課題です。
多くのひきこもり当事者たちは「外に出る理由」を探しています。こうした取り組みや場はいずれも、彼らが外に出る理由をつくっているのです。一歩を踏み出すことから、ひきこもりの解決は始まるのです。
仕事の「空白期間」を続ける人たちが多い
大人のひきこもりは、なぜ増えているのでしょうか。その大きな原因は「社会からの離脱」です。何らかの理由で仕事を辞め、次の仕事がなかなか決まらずに、いつのまにかひきこもりになってしまう人が多いといいます。『大人のひきこもり』を書いた池上氏の印象では、ひきこもり状態にある人たちの3分の2くらいは、就職の失敗や、再就職できなくなるなどの理由から「空白期間」を続ける人たちだといいます。社会構造が、大人のひきこもりを増やす
そこには、いくつかの社会的な問題があります。いったん社会を離脱するとなかなかリスタートラインに立てない壁が、今の日本には厳然とたちはだかっているのです。また、自己責任論のなかで他者に迷惑をかけてはいけないと思う気のやさしい人たちが、社会の隅に追いやられている現実もあるといいます。ハローワークやブラック企業などが、彼らの立ち直りを阻害している面も否めません。会社を辞めてしまえば、会社とも社会とも縁が切れ、ひきこもりになってしまう。そして、そこから立ち直るのは難しいというのが、今の日本社会の構造なのです。ひきこもりには、もう一つ大きな理由があります。ひきこもりの方々のなかには、トラウマ、ADHD、自閉症、慢性疲労症候群、緘黙症(かんもくしょう)などが障がいとなり、社会に出ていけない人が多くいるのです。この問題を解決していくことも大きな課題です。
ひきこもる人は外に出る理由を探している
大人のひきこもりを解決するために、行動を起こしている人々がいます。静岡県浜松市の「ぴあクリニック」「訪問看護ステーション不動平」や、かつて町民の9%弱がひきこもりだった町・秋田県藤里町にできた福祉の拠点「こみっと」などです。また、創造的な対話の空間を創る「フューチャーセッション」が、ひきこもりの解決に大きく役立つこともわかってきたといいます。ひきこもりフューチャーセッションからは、「ひきこもり大学」といった新たな場も生まれてきています。多くのひきこもり当事者たちは「外に出る理由」を探しています。こうした取り組みや場はいずれも、彼らが外に出る理由をつくっているのです。一歩を踏み出すことから、ひきこもりの解決は始まるのです。
<参考文献>
・『大人のひきこもり』(池上正樹著、講談社現代新書)
・『大人のひきこもり』(池上正樹著、講談社現代新書)
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