テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.01.30

40代に増加する「大人のひきこもり」の実態

 島根県が2014年5月に公表した「ひきこもり等に関する実態調査報告書」によると、地域の中でひきこもっている人の年齢は、40歳代が一番多く、40代以上の比率が53%に達していることがわかりました。また、2017年5月に佐賀県が公表した「ひきこもり等に関する調査結果」でも、年代別では、60歳以上が一番多く、次いで40歳代、50歳代となっており、中でも40歳代男性が一番多いということがわかっています。これがすべての都道府県にあてはまるとは限りませんが、日本中で「大人のひきこもり」が増えており、大きな社会問題になっているのは間違いありません。

仕事の「空白期間」を続ける人たちが多い

 大人のひきこもりは、なぜ増えているのでしょうか。その大きな原因は「社会からの離脱」です。何らかの理由で仕事を辞め、次の仕事がなかなか決まらずに、いつのまにかひきこもりになってしまう人が多いといいます。『大人のひきこもり』を書いた池上氏の印象では、ひきこもり状態にある人たちの3分の2くらいは、就職の失敗や、再就職できなくなるなどの理由から「空白期間」を続ける人たちだといいます。

社会構造が、大人のひきこもりを増やす

 そこには、いくつかの社会的な問題があります。いったん社会を離脱するとなかなかリスタートラインに立てない壁が、今の日本には厳然とたちはだかっているのです。また、自己責任論のなかで他者に迷惑をかけてはいけないと思う気のやさしい人たちが、社会の隅に追いやられている現実もあるといいます。ハローワークやブラック企業などが、彼らの立ち直りを阻害している面も否めません。会社を辞めてしまえば、会社とも社会とも縁が切れ、ひきこもりになってしまう。そして、そこから立ち直るのは難しいというのが、今の日本社会の構造なのです。

 ひきこもりには、もう一つ大きな理由があります。ひきこもりの方々のなかには、トラウマ、ADHD、自閉症、慢性疲労症候群、緘黙症(かんもくしょう)などが障がいとなり、社会に出ていけない人が多くいるのです。この問題を解決していくことも大きな課題です。

ひきこもる人は外に出る理由を探している

 大人のひきこもりを解決するために、行動を起こしている人々がいます。静岡県浜松市の「ぴあクリニック」「訪問看護ステーション不動平」や、かつて町民の9%弱がひきこもりだった町・秋田県藤里町にできた福祉の拠点「こみっと」などです。また、創造的な対話の空間を創る「フューチャーセッション」が、ひきこもりの解決に大きく役立つこともわかってきたといいます。ひきこもりフューチャーセッションからは、「ひきこもり大学」といった新たな場も生まれてきています。

 多くのひきこもり当事者たちは「外に出る理由」を探しています。こうした取り組みや場はいずれも、彼らが外に出る理由をつくっているのです。一歩を踏み出すことから、ひきこもりの解決は始まるのです。

<参考文献>
・『大人のひきこもり』(池上正樹著、講談社現代新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候

古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦

高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員