テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.04.14

『二千円札』はどこへ消えた?

 みなさんは、二千円札を覚えていますか。お札といったら、千円札、五千円札、一万円札が一般的ですが、かつて二千円札というものが発行されていました。できてからしばらくは、「月に何回か目にしたことがある」という方も少なくないでしょう。集めようと思えば一年に20枚くらい集められるといった状況でしたが、今はすっかり見なくなってしまいました。では、一体どこに行ってしまったのでしょうか?

二千円札は記念紙幣ではない

 二千円札が発行されたのは2000年7月のこと。第26回主要国首脳会議(沖縄サミット)と同時に生まれました。西暦の数字とマッチしていることから記念紙幣のように思えますが、そうではなく、その後も発行を続けるということを見越したものでした。

 二千円札はどのくらい発行され、人の手に渡ったのでしょうか。製造された数はおよそ8億8千万枚だそうです。すべてが出回ったというわけではないと思いますが、一時期は5千円札よりも流通したといいます。しかしその後、流通する二千円札の数はどんどん減っていき、2003年から製造中止となってしまいました。

意外と便利な二千円!?

 では二千円札にはどんな意味があったのでしょうか。ネットや書籍などでも見かけますが、それは「2」という数字に関するものです。

 日本では、それまで千円札の次は五千円札でした。一方、海外では20セント硬貨、20ポンド紙幣といったように、2のつくお金が日常的に使われています。もし日本にも二千円札があれば、おつりを出すときに役立ちます。二千円分買ったときは二千円札を1枚出せば済みますし、千円買って五千円札を出したときは二千円札2枚、というふうにやりとりすると、お札の枚数は少なくて済む、ということです。つまり、アメリカでいうドル札が10、20、50とあるように、より合理的に計算ができるのでは、というのもひとつの狙いだったのかもしれません。

なぜ製造中止になったのか?

 そんな狙いもあった?二千円札でしたが、なぜ製造中止になったのでしょうか。調べていくと、いろいろとわかってきました。実は二千円札が出回り始めてから、おつりがわかりづらい、という苦情が多くあったそうです。お客さん側の不満が大きいので、コンビニや飲食店では二千円札を出さないという決まりをつくるところもあったとか。それではますます二千円札が出回らなくなりますね。

 さらに、ATMによる二千円札の対応の遅れや、両替機や自動販売機の未対応といった事態に、「使い勝手が悪い」というマイナスイメージも定着してしまいました。

 「日本人は2という数字に弱いのでは」という説もあるそうですが、昔は二銭、二十円紙幣などがあったので、その真偽は謎のまま。

二千円札が4000万枚以上流通している県がある

 でも、二千円札の数は変わらないのだから、どこかに存在しているはず。実は、二千円札が4000万枚以上流通していると言われている県があります。それは沖縄県。自動販売機でも対応していて、お店やATMでも手に入れることができるそうです。

 二千円札発行と同じ年にサミットが行われた場所であること、沖縄の守礼門が描かれていることからか、沖縄では二千円札普及のために力を入れているのだとか。また、本土復帰前には米ドル(20ドル札)を使っていたことから、県民がその利便性をわかっており、使い慣れていたのかもしれない、ということでした。調べていくと、結構複雑な事情もからんでいそう。奥が深いです。

 それから、ごくたまにですが、都内の私鉄に設置されている自動券売機で手に入ることもあるそうです。もし出てきたら大事にしまっておきたい、かも。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

健診結果から考える健康管理・新5カ条(5)コレステロールは運動では減らない

コレステロールは中性脂肪と混同されがちだが、まったく異なる性質の脂(あぶら)である。コレステロールには、消化酵素になるなど3つの使い道があるが、摂り過ぎると運動しても簡単になくならないため、血管の変化を引き起こし...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/13
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
3

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!

『法華経』といえば紀元1世紀から3世紀に成立したといわれる大乗仏教の代表的経典である。厳しい修行や哲学的思索を行う出家が中心だった当時のインド仏教に対し、誰もが平等に成仏できると説く『法華経』は画期的なものだった...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/04
鎌田東二
京都大学名誉教授
4

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

近代イスラエルの誕生:その苦闘の背景(1)

 国防において、科学・芸術・産業の追究において、イスラエル人が示す桁外れの熱意。その根源は、民族がたどった歴史にあると島田晴雄氏は言う。現代のイスラエル精神に直接影響を及ぼした近代イスラエルの成立過程を2回に分...
収録日:2013/10/04
追加日:2014/07/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(1)アメリカ史の教訓とは

トランプ関税の影響は、今後、どのように広がっていくのだろうか? 過去の大きな構造変化や金融環境の変化が各国の「株価リターン」にどのような影響を与えたのかを分析しつつ、今後を考えるヒントがないかを検証していく。第1...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員