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知性が感じられないトランプが大統領になった本当の理由
多くの日本人が感じているトランプ大統領の謎
トランプ大統領が就任して1カ月半が経ちました。相次ぐ側近の辞任やマスコミ批判、繰り返されるTwitterでの暴言など、毎日ネタが尽きることはありません。中でも世界が注目しているのは、中東やアフリカなど、合計7カ国からの入国を禁止した大統領令の発令ではないでしょうか。アメリカといえば、日本人の多くが「心が広く、国籍や人種を超えて全てを受け入れる自由の国」という良いイメージをもっていると思います。
それにも関わらず何故その自由の国アメリカにおいて、トランプ氏のような人物が大統領になったのか?その源流は何なのか?今、この問いに明確な答えを与えている1冊の本が注目されています。
新潮社から出版されている森本あんり氏の『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』という一冊です。
アメリカ人の4人に1人は天動説を信じている!?
本のタイトルにある「反知性主義」とはどんな考え方なのでしょうか。たとえば、日本人なら誰もが信じて疑わない「地動説」。“地球は丸くて、太陽の周りをまわっている”という説ですが、日本人にとっては当たり前のこの常識も、アメリカでは2017年の現在においても約4人に1人が知らない、もしくは信じていないということです。つまり、彼らの中にはいまだに地球が平らで空が動いている「天動説」を信じている人もいるのです。「進化論」についても同様です。“人は神から作られた”と信じていると人が過半数を超えたのは、なんと一昨年の2015年なのです。これらに大きく影響しているのが「反知性主義」です。
宗教はインテリだけのものではない
では、「反知性主義」はいつごろから始まったのでしょう。それに関連する出来事として、アメリカ合衆国建国前の1700年代前半にあった、2つの大きな変化をあげることができます。1つは人口増、もう1つは印刷技術(メディア)の広がりです。
印刷技術の発達により、これまで高度な知性をもつ一部の人々(司祭、神父、牧師など)にしか許されなかったキリスト教の説教や伝道活動が、そうでない人々にも広がり始めました。
中でもイングランド国教の牧師ジョージ・ホイットフィールドは、貧しく学もありませんでしたが、とにかく演説がうまく、印刷メディアを活用して、多くのキリスト教徒の心を掴んでいきました。
宗教とは「人工的に作り上げられた知」よりも、むしろ「素朴で謙遜な無知」の方が尊い
という基本的な一般大衆の感覚とともに、知的で文化的な古いヨーロッパとは違い、アメリカという新しい地には原始の知に回帰したい、という「信仰復興(リバイバル)」が大きな流れができるのです。
この信仰復興こそがアメリカの地に根付く「反知性主義」のはじまりだ、と森本氏は指摘しています。
アメリカ大統領選にも影響を及ぼした反知性主義
本書においては、この反知性主義はアメリカ大統領選においても大きな影響を及ぼしていると指摘しています。1828年の「読み書きのできるアダムス」VS「戦のできるジャクソン」。
1952年の「知のスティーブンソン」VS「戦のアイゼンハワー」。
いずれも反インテリ=反知性主義的な候補者が勝利しているのです。
森本氏は、“アメリカ社会には昔も今も(中略)知識人の「タテマエ」と一般大衆の「ホンネ」とがぶつかり合う社会である”と指摘しており、今回の「ヒラリー」VS「トランプ」の大統領選をまさに象徴するフレーズとなっています。
この本が出版されたのは2015年。
「アメリカの大統領は頭がよければつとまるというものではない。」という一文も見受けられる本書は、まさに謎めいたトランプ大統領の誕生を理解するのにうってつけの一冊です。
トランプ大統領の言動に怒りが抑えきれない人は、一度この本を読んでみてはいかがでしょうか?トランプ本人の問題でなく、アメリカ社会が生み出した大統領なのだと改めて納得することができるかもしれません。
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