●良いところを探す
見方、考え方を相手が変えるのではなく、自分の側から変えていくということも必要。相手が変わるという場合も、自分から変えていくということも必要。両方とも必要。
ということは行き詰まるということは、必ず通じる。どんなことにも通じる。だから一方的に見ず、各面から見る。そうしたら必ず、良いところがある。その良いところを使おう。そうしないと、世間が狭くなる。世間が狭くなったらいけない。世間はもう広大無限だから、いくらでも君一人ぐらい容れることは日本でできる。日本で容らないなら、今度は君、サハラ砂漠に行ったらいくらでもできる。そこでもいい。
だから、自分の小さい頭で判断して、決定したらいけない。僕らでも一応決定しないといけないことは決定するけれど、次の瞬間には、間違っているんじゃないかと反省して、間違っていたら取り替える。そうして、私の今日がある。だから、君もそう思うなら、前途洋々たるものだな。
●「あかん」でも「ええ」と思う
君の言う通りだと思いますね。運の強さをそう信じることによって、楽になる。「俺はもうあかん、何をしてもあかん」などと思ったらいけない。「あかん」でも「ええ」と思うようにする。
第一、ここの塾に入ったということは、もう運が強い証拠です。私はそう思う。自ら悲観して、自らを不幸せにする人は、結構な状態にあっても「いや、もう俺はあかん」と言う。そんなことになったら、もうおしまいです。といって、あまりに信じすぎて、それが重荷になってもいけない。正当に判断することが大切ですね。
私の場合、なんでもないのに「運が強い」というわけではない。私は二回、経験している。当然、死んでいるところだった。にもかかわらず、こうやって生きて、ここまでやってきたということは、これは「運が強い」というふうに思わなかったらうそです。正直に、素直に考えてそうなのであって、誇張でもなんでもない。
●毎日姿見を見て、おじぎの仕方や笑い方を練習しろ
野田 実際に政治家になるのは、非常に難しいとは思いますけれども、まあ地道に努力していくしかないと思っています。
松下 今からその準備をしているの?
野田 はい。
松下 うん。なかなかね、政治家になるのは、仕事よりも(難しい)。
野田 はい。
松下 政治家になるということは、難しい。政治そのものが難しいということがあるけれど、政治家になるのが難しい。何が難しいのかというと、選挙がある。選挙に通ることが難しい。今、どの政治家でも自分が選挙に打って出て、当選するかしないかということが問題。だから、当選するということが、もう一番大きなヤマ。それも越さないとできない。だから、政治家になるという人は、もう政治、即選挙。政治とは、選挙である。選挙に通らないことには、政治家になれないということ。そう考えると、君が政治家になるのなら、いつかは政治に行く時期もあるかと思うけれど、それを十分考えた方がいい。
そうだな、君は政治家になったら、ここにいる人に皆、応援してもらわなくては。応援してくれるか(笑)
野田 まあ、お願いいたします(笑)
松下 それを、一人でも反対するようなことはあってはいけない。君が政治家になるのを応援しようということでなければ。たった一票でも取ってあげるというように、お互いがそうでないといけない、政治家をやる人は。政治家にならない人でも「応援してやる」と言ってもらわないといけないな。それを出た者も忘れないようにしないといけない。それは君、おじぎはどのようにしてするとか、おじぎの仕方まで練習しなければいけない。毎日、鏡を見て、にこっと笑って、こう笑ったら良くなったかとか、判断する。
あんた、姿見持っとるか。
野田 はい?
松下 姿見な。
野田 姿見ですか? 最近あまり見ていないです(笑)―― 最近あまり見ていません。
松下 あかん。それは、姿見を買って、見なさい(笑)
それで、笑い方でも「こういう顔したらいけないな」「こういう笑い方したらいいんだ」と。それは、人に批判を受ける。批評してもらうというぐらい、しなければいけない。そのぐらいのことをやらなければいけない。勉強をすると思っても、「なんやあの男、なんや好かんな」と思ってもらうようではいけない。そういうことも君、考えておかないといけない。姿見でも見て。はたの連中に笑われる。「あれ、何しとんのやと。姿見ばかり見て。あれ、何しとるのや」と。「俳優でもやるのか」と思われるぐらい、やっていなければいけない。
だから、政治家は、政策の内容がいいということは第一。けれど、それよりも大事なものは、当選するということ。当選するというのは、当選する人。当選する人よりも、選挙をする人。選挙を...