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リーダーとして、経営者として、全てをありのままに

松下幸之助の人づくり≪1≫真のリーダーとは(9)鳴かぬならそれもなおよしホトトギス―自然体の経営

松下幸之助
パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者
概要・テキスト
「鳴かぬなら――ホトトギス」。家康は「鳴くまで待とう」、秀吉は「鳴かせてみせよう」、そして信長は「殺してしまえ」と詠んでみせた。しかし、松下幸之助の場合は「それもなおよし」なのである。会社が不調のときも心配なものは心配、「これが世の中だ」と達観し、全てをありのままに受け入れた幸之助の自然体の経営観に迫る。(第1章9話目)
時間:12:39
収録日:2015/06/17
追加日:2015/12/07
カテゴリー:
≪全文≫

●人生に悩みはつきもの


 「これはいい、うまくいっている」というときは晴天で、「ちょっと、おかしいぞ」と言って、煩悶したり、疑問が起こってきたりするのは、梅雨になって雨が降っているようなものです。しかし、そういうことの繰り返しでしょうね。私でも、人は「松下さん、あんた、えらい成功しましたな」と言うけれども、私自身は毎日煩悶したり、「ここはいかんな」と考えたり、一喜一憂しているわけです。その一喜一憂の連続が私の本当の姿です。傍から見たら「えらいうまくいっておるな。新聞見たかて、もう非常にもうけておるな。品物もよく売れとるなあ」ということになるけれども、その実情は傍が言うようなものではなしに、随所に問題がある。それが人生というものでしょうね。それを問題がないようにするのは、自分で「これが世の中だ」というふうに悟りを開かないといけない。

 私はよく「一番心配するのが社長の仕事だ」と言うのです。社長というものはどこの会社でも一番心配している。晩に心配で胸がつかえて、ご飯が食べられない。食べてもおいしくないというような状態が続いたりする場合がある。だから「かなわんな」と思う。けれども、その「かなわんな」と思うことが社長の役職なのです。社長が心配もなしにやっているというのだったら、それは本当の社長ではない。そんな社長では会社はうまくいかない。

 仮に世間から「いい会社だ」と言われているような会社があって、そこに新しい社長が来たとする。その時に「やっぱりいい会社だな。これは具合いいな。いい会社へ入った」と思うような社長だったらもう駄目です。新しく来た社長が立派な人だったら、「『いい会社』と世間では言ってるが、入ってみたら問題だらけだ。これは直さなきゃいかん」ということで、そこから心配が出てくるわけです。その日から、それが3年続く、3年間心配に次ぐ心配です。そうやっているうちに、その会社がコロッと変わって、立派になるわけです。だから社長というのは、いわば心配するために存在するようなものです。「心配するのはかなわん」というのだったら、社長を辞めたらいい。

 私自身はそういうことを社長の時も会長の時も考えてきました。今はもう社長も会長も辞めて、相談役です。けれども私がつくった会社だし、皆もそういうふうに思っている。だから寸刻も安心していることはできない。心配に次ぐ心配を...
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