●寮室に掲げられた「大忍」の書
政経塾寮室に掲げられている「大忍」の書。開塾前に、塾主自らが筆をとったものです。
塾生に贈る言葉としては「最初は大忍やな」と語った塾主。「塾生たちが良き日本の国づくりを進める政治家になる道程は、たやすいことではない。大いなる生みの苦しみを経、志のために耐えなければならない」。この書には、そうした塾主の熱い願いと思いやりが凝縮されています。
「大忍」――それは「志のために忍ぶ」という、一つの精神を表しているのです。
●リーダーには大きな忍耐が必要/佐野尚見・野田佳彦
佐野 やはり会社の経営でも、責任者になればなるほど、我慢することが多くなってくるし、大きなことを考えなければいけない。3万人の社員がいれば、一家族3人か4人いるから、10万人になりますし、協栄会社があると40万か50万ぐらいの大きな家族になるわけですね。そのことを考えると、彼らのことも考えて仕事していくと、相当我慢をしていかなければならないことも多い。そういう意味で「大忍」なんじゃないかなと。私は、松下電器にいた時は、大忍というような言葉も知りませんでしたし、政経塾に来て初めて知りました。考えてみたらそういうことではないかと。
それから、松下さんは、おそらく事業をやりながら日本のことを考えていたのでしょう。事業をやりながら、社会のこととか、国のこととか、人間のこととか、世界のことも考えておられたから、それはやはり相当大きな忍耐力を持ってやられていたのではないですか。
松下電器の電器を売りながら天下国家を考えるという中においても、大きな大忍があっただろうと思うし、私たちの日常の業務の中で、あえて言えば大忍というのがあったかもしれないと私は思っています。
野田 いや、これは塾生の頃は全然分からなかったですね。「大忍」という額が寮室にあるのです。研修をやっていても思い通りにいかないし、叱られたりもする、日々忍耐の生活ですよね。だから、「忍」や「忍耐」だったら分かるけれど、なぜ「大きく忍ぶ」のかというのが、当時は分からなかったですね。
だけど、それがだんだん分かってきたのは、政治家になってからです。政治家でも皆、忍耐ですよ。国会の答弁などで耐える人は、何か心の中に忍を入れたり、手のひらに自分で書いている人もいましたよね。忍耐、忍、そこまではい...