●就任演説は保護主義一色だった
ドナルド・トランプ政権の滑り出しはどうだったのか、思い出してみましょう。2017年1月20日、大統領就任式がありました。この時、ホワイトハウスの前の広場に集まった人の数は、あるメディアの発表によれば、約90万人でした。これはバラク・オバマ氏の就任式の時の半分です。しかも今回は、同数以上の人がワシントン周辺ならびに全国各地で抗議運動をしました。こんな大統領は前代未聞です。トランプ大統領はこの時の報道を根に持って、メディアをうそつき呼ばわりしました。自分の就任式には最大の観衆がいた、と言うのです。しかし、これはうそです。そんなことはありません。誰だってテレビを見れば分かります。
就任演説は何とも品が悪く、保護主義一色でした。アメリカ製品を買え、アメリカ人を雇用しろ、というものです。歴代44人の大統領は皆、就任式で歴史に残るような名言、あるいは哲学的に深みのある言葉を言っています。しかしトランプ大統領からは、そうした言葉は一言もありませんでした。
●大統領令によって議会を一切通さずに命令する
そして大統領になるやいなや、大統領令を出し始めました。日本の首相はそのようなものは出せませんが、アメリカの大統領にはそれができるのです。議会の審議・承認が不要で、大統領が自分で書けば、いろいろなことができてしまいます。大統領令には根拠法となるものがあるようで、例えばInternational Emergency Economic Powers Act(国際緊急経済権限法)がよく使われます。大変なことが起き、大統領に頼む以外にないような緊急事態に発動される法律です。こうしたものを根拠法として用いて、どんどん大統領令を発行するわけです。4月末、就任後100日間までに、大統領令と、これよりは効力が低いですが大統領覚書(合わせて約40~50件)、議会を一切通さずに直接命令しているのです。
さらに、トランプ大統領は各国首脳に次々と電話をしました。一番驚いたのは、蔡英文台湾総統に電話をしたことです。これはビッグニュースになりました。というのは、中国から見れば台湾は、例えば日本の鹿児島県のような一地方都市で、独立国家として認めていません。国連でも台湾には代表権はありません。アメリカのような大国の大統領が、例えば鹿児島県知事に電話をするというような事態ですから、中国は驚きました。
次にトランプ氏...