トランプ政権研究
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ大統領の経済政策から見た再選の可能性
トランプ政権研究(10)自滅型の経済政策
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、トランプ大統領の経済政策から見た再選の可能性について解説する。トランプ氏が掲げる減税やインフラ投資は、実施されれば選挙民に被害を与えるだろう。しかし民主党復調の気配はなく、トランポノミクスの悪影響が出るのも遅れるため、トランプ氏再選の可能性は高い。(全11話中第10話)
時間:5分52秒
収録日:2017年5月23日
追加日:2017年7月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●経済成長戦略には整合的で緻密な実行プランがない


 それではドナルド・トランプ氏の再選があり得るのかについて、考えてみましょう。一番大きな問題は、経済の好調がどこまで続くかということです。やはり大統領のポジションは、経済が良ければそれだけ強くなります。今、アメリカ経済は好調です。あと1~2年は続くでしょう。しかしそれは、リーマンショックを克服し、構造改革をしてきたバラク・オバマ治世の総合的な経済政策の成果だというのが、フェアな見方です。日本やヨーロッパも同様のことを行ってきたため、世界全体が今、景気回復しています。

 確かにトランプ氏の経済成長戦略には、大変大きな目玉が並んでいます。大減税や1兆ドルのインフラ投資、保護貿易、規制緩和によって、4パーセントの経済成長を実現すると言っています。しかしこれらは非現実的であるばかりか、整合的で緻密な実行プランをいまだに全く欠いています。議会でも抵抗・反対があるでしょうし、簡単ではありません。


●選挙民が損をする自滅型の経済政策


 さらに、トランプ政策は実のところ、選挙民のためにはならないのです。仮にトランプ氏の目玉政策が実行されれば、どういうことになるでしょうか。4パーセントの経済成長を実現するために、1兆ドルのインフラ投資を行い、法人税を35パーセントから15パーセントに引き下げ、さらに所得税も大幅に引き下げる。こうしたことを聞かされれば、確かにウォールストリートは熱狂するでしょう。インフラ投資の恩恵を受ける企業、減税で得をする富裕層はたくさんいます。しかし、アメリカ経済の潜在成長率は過去10年間、良くても2パーセントです。つまり、4パーセントの経済成長をするために数々の大政策を打ち出すというのですが、それらが全て成功するなんて、絵に書いた餅です。

 仮に大規模なインフラ投資を実施するとすれば、財源の問題が浮上します。アメリカはすでに1兆ドル近い財政赤字です。ここにさらに1兆ドル(約110兆円)の赤字が加わるとすれば、財源は増税に頼るしかありません。それを負担するのは一般の勤労大衆です。ですから、勤労大衆が一番損をすることになります。

 また、大減税をすると金持ちや大企業は得をしますが、彼らが国内の勤労者のために投資するかどうかは分かりません。アメリカ企業はもともと海外に投資し、現地で生産した製品をアメリカに売り込む場...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜