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トランプ政権研究
トランプ大統領の4つの経済政策の現状
トランプ政権研究(8)主要経済政策の分析
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、トランプ大統領の主要な経済政策について解説する。目玉である大幅な減税と大規模なインフラ投資には、財源の問題が浮上している。オバマケアを廃止して提出された共和党案も、上院での可決は不透明だ。今年度予算は最近になってようやく議会で承認された。(全11話中第8話)
時間:9分59秒
収録日:2017年5月23日
追加日:2017年6月29日
収録日:2017年5月23日
追加日:2017年6月29日
≪全文≫
●税制改革はお金持ちが得をする政治である
ドナルド・トランプ氏は、いわば目玉商品として、主な経済政策を提示しています。これが今どのような状況になっているか、見てみましょう。第1に、税制改革です。法人税、所得税ともに、思い切った減税をすると言っています。確かに減税をすれば、景気刺激効果があります。しかし減税は、大企業と金持ちが得をする政策です。税率を思い切って引き下げると、税収は減ります。税収が減れば、政府を運営する財源はどこから持ってくるのか、これに関して今、全く答えが出ていません。これはトランプ氏が選挙戦中から言っていたことですが、具体案がないままです。こうして政権発足100日を迎えたわけですが、ここまで何一つ公約は実現していません。
そうした中、スティーブン・ムニューチン財務長官が4月26日、税制改革案を提示しました。それによれば、法人税は35パーセントから15パーセントに引き下げられます。これはものすごい引き下げです。日本の法人税(法人実効税率)は今30パーセント前後、イギリスは約20パーセントです。法人税が非常に低いため、資金運用家が集まっている都市としては、香港とシンガポールがあります。シンガポールは約17パーセント、香港は約16パーセントで、アメリカはこれを上回る減税をするという、驚天動地のことを言っているわけです。また、個人所得税も税区分を3つに単純化する。最高税率を思い切って引き下げる。さらに相続税も廃止する。これらは、ものすごくお金持ちが得をする政治です。
しかし、財源のことを考えれば、結局、どこかで増税せざるを得ません。そして、増税の負担を負うのは、トランプ氏を支持した労働者層です。あるいは、長期の債券を発行するということもありますが、アメリカ経済は借金経済です。したがって、税制改革案は出ましたが、今後どうなるのかは見えません。
●インフラ投資の財源として100年債の発行が示唆されている
第2に、トランプ氏は選挙公約で、1兆ドルのインフラ投資をすると言っていました。アメリカは世界最大の設備が整った国で、道路も通信も世界最大です。しかしそれらは、何十年も前につくられたもので、メンテナンスが間に合わず、ものすごく劣化しています。
こうしたことを考えると、確かに1兆ドルの投資は、時代の要請に合っているように見えます。景気刺激効果も莫大でしょう。...
●税制改革はお金持ちが得をする政治である
ドナルド・トランプ氏は、いわば目玉商品として、主な経済政策を提示しています。これが今どのような状況になっているか、見てみましょう。第1に、税制改革です。法人税、所得税ともに、思い切った減税をすると言っています。確かに減税をすれば、景気刺激効果があります。しかし減税は、大企業と金持ちが得をする政策です。税率を思い切って引き下げると、税収は減ります。税収が減れば、政府を運営する財源はどこから持ってくるのか、これに関して今、全く答えが出ていません。これはトランプ氏が選挙戦中から言っていたことですが、具体案がないままです。こうして政権発足100日を迎えたわけですが、ここまで何一つ公約は実現していません。
そうした中、スティーブン・ムニューチン財務長官が4月26日、税制改革案を提示しました。それによれば、法人税は35パーセントから15パーセントに引き下げられます。これはものすごい引き下げです。日本の法人税(法人実効税率)は今30パーセント前後、イギリスは約20パーセントです。法人税が非常に低いため、資金運用家が集まっている都市としては、香港とシンガポールがあります。シンガポールは約17パーセント、香港は約16パーセントで、アメリカはこれを上回る減税をするという、驚天動地のことを言っているわけです。また、個人所得税も税区分を3つに単純化する。最高税率を思い切って引き下げる。さらに相続税も廃止する。これらは、ものすごくお金持ちが得をする政治です。
しかし、財源のことを考えれば、結局、どこかで増税せざるを得ません。そして、増税の負担を負うのは、トランプ氏を支持した労働者層です。あるいは、長期の債券を発行するということもありますが、アメリカ経済は借金経済です。したがって、税制改革案は出ましたが、今後どうなるのかは見えません。
●インフラ投資の財源として100年債の発行が示唆されている
第2に、トランプ氏は選挙公約で、1兆ドルのインフラ投資をすると言っていました。アメリカは世界最大の設備が整った国で、道路も通信も世界最大です。しかしそれらは、何十年も前につくられたもので、メンテナンスが間に合わず、ものすごく劣化しています。
こうしたことを考えると、確かに1兆ドルの投資は、時代の要請に合っているように見えます。景気刺激効果も莫大でしょう。...