トランプ政権研究
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ政権の極端な身内主義と政治任命の遅れ
トランプ政権研究(3)政権スタッフと政治任命の遅れ
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、トランプ政権の編成について解説する。トランプ氏はホワイトハウスのスタッフを極端な身内主義で構成している。内閣人事は、大臣級は早々に決まったが、下位の課長クラスまでの政治任命スタッフは、まだ大半が埋まっていない。その結果、政権の実務に遅れが生じている。(全11話中第3話)
時間:9分39秒
収録日:2017年5月23日
追加日:2017年6月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ政権は極端な身内主義である


 さて、次にトランプ政権の編成について見ていきましょう。ドナルド・トランプ政権の政権移行チームは、極端な身内主義です。選挙戦中の側近だった人たち、例えばトランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏、デマゴーグのスティーブ・バノン氏、そして、軍人で極端な主張をするマイケル・フリン氏です。彼らを一番身近に置いています。そして、副大統領はマイク・ペンス氏です。彼はインディアナ州知事だった人です。大統領首席補佐官には、共和党の全国委員長であるラインス・プリーバス氏が就きました。彼は若手ですが、妥当な人選でしょう。

 ホワイトハウスのスタッフは非常に重要です。ホワイトハウスの中では、大統領執務室の隣に、一番大統領と近い補佐官に割り当てられる部屋があります。トランプ氏はそこに娘婿のクシュナー氏を置いています。さらにその隣にはバノン氏の部屋があります。バノン氏は、トランプ大統領は新しい大統領であり、既存の勢力を全部壊さねばならない、と主張し、アメリカという国の統治体制を破壊するのが私の主義だ、というような無茶苦茶ことを言っているのです。トランプ氏はバノン氏の主張にすっかりとらわれています。


●ナバロ氏は経済学のいろはを分かっていない


 さらに、ピーター・ナバロ氏というカリフォルニア大学の経済学教授が通商政策のトップに就きました。彼は一応、ハーバード大学出身の経済学者らしいのですが、それが私には信じられません。ナバロ氏によれば、貿易の不均衡は二国間で決まる以上、アメリカが赤字になっているのは通商相手のせいだ、と言うのです。ナバロ氏はそのように決め付けていますが、経済学のいろはが分かっていません。

 貿易というのは、マクロ経済のバランスで決まります。投資と貯蓄のバランスです。アメリカ人はあまり貯蓄しないといわれており、そうであれば投資はできません。そうすると生産性が下がり、競争力が弱まります。そのため、中国や他の国に貿易で負けるのです。これは、相手国が不公正かどうか、ということとは関係ありません。ところが、ナバロ氏はそういうことを平気で言い募り、「もしアメリカと中国が戦争したらどうなるか」といった内容の本(『米中もし戦わば』)を書いています。

 国家経済会議は、ゴールドマン・サックスの社長である、ゲーリー・コーン氏が委員...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ