●シリアへのミサイル攻撃は即決された
習近平・中国国家主席との夕食会が終わる頃、ドナルド・トランプ氏から「今、シリアにミサイル攻撃をしたところだ」と報告があったようです。アメリカ側の報道では、習氏は理解を示したということですが、本当のところは分かりません。確かに夕食会のあった時刻、東地中海に展開していたアメリカの駆逐艦、ポーターとロスから、60発のトマホークが発射されました。正確に言えば、1発は失敗してしまったので59発ですが、それらがシリアの政府軍基地に着弾したのです。
トランプ氏はこうした重大な決定を、即座に下してしまいました。決定的なきっかけは、愛娘のイヴァンカ氏が見せた1枚の写真だったそうです。それは、サリンのような毒ガスで死んだ子どもの写真でした。トランプ氏は、これはひどいとすぐに反応したのです。彼はもともと、文字を読むのが嫌いで、映像人間なのですが、同時に非常に情緒的な人間でもあります。それゆえ、こうした決定は非常にトランプ氏らしいとはいえます。
しかし、外国を相手にミサイルをたたき込むわけですから、本当は多くの関係者とよく相談し、慎重かつ緻密に行わなければならないはずです。ところが、フロリダにいたマイク・ペンス副大統領など、ごく少数の側近だけと話をして、すぐに決めてしまいました。もちろん議会に報告する義務があるわけですが、ペンス氏がミサイル発射の数分前に一言だけ知らせた、という顛末だったようです。
●やるときはやるのだという意思の表明
もちろんロシアは直ちに抗議しましたが、その後は特別な抗議をしているわけではありません。アメリカでは、このシリア空爆はかなり高い評価を得ました。トランプ大統領にとってこれは、「やるときはやるのだ」という意思の表明だったと言われています。ただ、どうもこれは、バラク・オバマ氏に対する当て付けという面もあったと思います。
オバマ氏も大統領在任中、関係国がレッドライン(最後の一線)を越えたときは、力で抑制すると公言していました。例えばシリアについて、シリア市民の人命をないがしろにするような行動、例えば毒ガスによる大量殺害があれば、レッドラインを越えたものとして攻撃すると言っていました。ところが、国連の調査団がシリアでは、明らかにサリンのような毒ガスで2,000人もの市民が殺されていると報告をしています。つまり...