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グローバル化の壁である英語は通じさえすればいい

優れた経営者の条件(2)グローバル化と英語の壁

楠木建
一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授
概要・テキスト
日本人は内向きで島国根性、グローバル化に対応できていない――。このように言われて久しいが、この言説は真実か。単純な文化論に押し込めず、英語をスキルとして学び直すための考え方の秘訣を、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建氏が伝授する。(2017年11月16日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「優れた経営者の条件:戦略ストーリーを創るセンス」より、全8話中第2話)
時間:11:26
収録日:2017/11/16
追加日:2018/01/27
≪全文≫

●「日本人は内向きで島国根性だ」は本当か


 このところずっと、「グローバル化が必要だ、日本は遅れている」と言われてきました。原因は、日本人が内向きで島国根性だからだということもよく言われます。しかし、この原因を直すためには、またしてもグローバル化が必要だというのです。つまり、議論が循環しています。

 少し立ち止まって考えてください。私のごく短い五十数年の人生を振り返ってみても、決して日本人がメンタリティーにおいてそれほどガラパゴスだったとは思えません。

 これは私が子どもの頃にずっと見ていた地図です。私は11歳まで、アフリカ大陸の一番南端にある南アフリカという国で育ちました。地図というものは自国を真ん中に描きますから、この地図のような形になっていました。当時母が、「あなたは極東、the far eastで生まれたのよ」と言っていたのを覚えています。

 アフリカで暮らしていたのは、機械部品の会社に勤めていた父の転勤のためです。機械部品は、電機や自動車よりも早く海外に売りに出ていた産業です。父は南アフリカで支社長を務めていたのですが、とはいえ部下も上司もいません。アフリカで製品を売ってこいと言われて、たった一人で転勤になったのです。1960年代の製造業には、こうした若手がいっぱいいました。私はグローバル二等兵と呼んでいます。

 現地では当時、そういう人が少数いて、皆で助け合って生きていました。突撃兵の前線基地のようなものでした。

 写真は当時の私です。1歳のときに日本を離れたので、当時日本がどのように言われていたのか分からなかったのですが、内心では、祖国日本はやたらとアグレッシブで外向きな国だと思っていました。こんな地の果てみたいな所まで来て、わんわん商売をしているのですから。

 当時のグローバル二等兵、あるいは「突っ込め」という風潮がどこから来たのか、私なりに類推してみましょう。一つには、戦争で負けたから次は経済・産業で巻き返そうということが、間違いなくあったでしょう。ある種の国家的なコンセンサスだったと思います。もっと実態のある理由としては、当時の日本の内需です。工場を造って動かしても、日本国内ではさばき切れません。当然、世界に売...
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