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人生を健康に過ごすためのエイジマネジメント

労働寿命と健康寿命の延伸(3)エイジマネジメント

神代雅晴
一般財団法人日本予防医学協会理事長/産業医科大学名誉教授/学術博士
情報・テキスト
働く人が暦年齢を意識することなく、生涯にわたって健康で活力にあふれた状態で、より生産的に働くためには、どうすればいいのか。産業保健活動の中で、それぞれの年代に応じた取り組みを創出することを「エイジマネジメント」という。一般財団法人日本予防医学協会理事長の神代雅晴氏が解説する。(全6話中第3話)
≪全文≫

●長い人生を健康に過ごすための「エイジマネジメント」


 そろそろ本題に近づいていきます。高齢社会における産業保健活動を語るときに、知っておかなければいけないのがエイジマネジメントの考え方です。今回は、エイジマネジメントについて、お話ししてみたいと思います。

 産業保健におけるエイジマネジメントは、働く人が暦年齢を意識することなく、生涯にわたって健康で活力にあふれた状態で、より生産的に働くことができるような産業保健活動の仕組みを、それぞれの年代に応じて創り出す取り組みのことを指しています。

 総じて申し上げると、「人生という長いロングスパンの視点から、その時点になすべき健康管理の在り方を指導する」ことが、エイジマネジメントの考え方です。

 エイジマネジメントを進めるに当たって大事な役割を果たすのが、食生活の在り方、運動習慣を持つこと、睡眠リズムを正しく取ること、そしてワーク・ライフ・バランスを正しく取ることです。これら、食・運動習慣、睡眠リズム、ワーク・ライフ・バランスが、エイジマネジメントを進める上でのキーワードとなってきます。


●生活習慣の大事な男性、更年期対策が重要な女性


 この図は、毎年同じ検査項目で受診した2万5146名を、2002年から2015年に至る14年間、追跡したデータです。横軸は、下に書いたように2002年から2015年を指し、縦軸が有所見率を表しています。ここでの有所見率は、GOTや総コレステロール、中性脂肪、空腹時血糖など、血液検査によって知ることができる健康指標です。

 ここでは20代からデータが積み上げられていますが、法的には健康保険や健保組合、あるいは企業などに39歳以下の受診者の血液検査料金を負担する義務はなく、通常20代・30代の世代に関する血液検査データはあまりありません。このデータは、自主的に血液検査をした人々の結果を表しています。

 生活習慣病のマーカーになる検査項目では、20代・30代の異常値発生者が40代・50代よりも非常に大きく増加していることが見受けられます。中高齢期以降の異常を中高齢期で発見するよりも、青壮年期で発見して対処することが非常に大事だということを、この図は物語っています。すなわち、血液検査を20代から始めることが健康管理上、大切だと分かる、非常に興味あるデータといえます。

 また、右の図は女性を対象にしたものです。女性の場合、男性の20代・30代の変化とは異なって40代に急上昇します。40代が異常な増加を見せる原因は、女性特有の閉経期以降のホルモンバランスの変化によって起きる増悪現象などが考えられます。したがって女性の場合は、40歳から54歳あたりまで特別な健康対策を考えることが、健康寿命を伸ばす一つの方法になるといえるかと思います。

 もう一度男性に戻りますと、男性は20代・30代から生活習慣、特に運動習慣を取り入れることが、その後の40代・50代以降の健康を守る一つの指標となってきます。このような考え方が、エイジマネジメントによる健康の見方の一例です。


●運動習慣の有無は健康管理の要になる


 もう少し、今度は観点を変えてお話をします。これは某企業で検査した最大酸素摂取量と、年齢別の変化を示した図です。この図を見てみると、年齢を重ねるごとに最大酸素摂取量が衰えていることが、うかがわれます。ちなみに最大酸素摂取量は、一般的には体力の指標と考えていただいても構いません。

 このグラフを見て、年齢とともに体力、全身持久力が衰えてくると読み取るか、あるいは運動習慣の有る無しが運動機能や体力の低下を抑制すると見るかです。

 例えば20代を見ます。20代では、最大酸素摂取量が非常に高い能力を持つ人と、60代の人よりも劣る能力を持つ人がいます。同様にして、60代には20代よりも高い機能を持つ人もたくさんいます。なぜ高い機能を保つことができたのかというと、若い世代からの運動習慣の効果が体力の低下を抑制したと見ることができます。

 このような見方をすると、エイジマネジメント思想に基づく健康管理がいかに重要であるかが分かるかと思います。

 同様にして、こちらは「運動習慣の有る人」と「運動習慣の無い人」の肺活1秒率を調べた図です。ただし、この図は年齢を無視しています。老いも若きも運動習慣を持っていると、肺の容量や肺の働く力が高まって、いわゆる持久力が高まることを表現しています。

 残念ながら若いときに運動していない人であっても、年を取ってからでも、運動習慣を持つことによって、十分に持久力が高まることがあり得るということです。


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