●ギブ&ギブ&ギブの精神が人間力をつける
皆さん、こんにちは。今回は、ギブ&ギブ&ギブの精神が大事、というお話をします。
これは、ギブ&テイクという言葉からもじったもので、ギブ&ギブという言葉はいろいろな人が使っています。そこにもう一つ、私はギブを付け加えました。これは何の変哲もない言葉だと思いますが、自分自身の体験から出てきた言葉です。それは、ギブ&ギブ&ギブの精神が、人間力をつけていく上で本当に大事だと思っているからです。
●かつてはどこまでいってもテイクの精神だった
この精神は、ビジネスの世界において特に大事だと思います。前にお話ししたように、私は小さい時から暗記力や理解力が悪く、頑張っても結果が出なかったので、非常に不幸であると考え、自分の存在価値を自分で否定した時代もありました。その時、何が問題だったのかと、振り返ることがあります。
私はアメリカでホームレス、ジョブレスな状態になった時がありました。アメリカに観光ビザで渡って、アメリカの大学院を受けたものの全て落ちてしまいました。その時、ステファニー・テンジーさんというドイツ系のアメリカ人の方にご指摘をいただいたことがあります。私は当時、お金や名誉、地位や権力を手に入れることが、世の中での成功には必要だと考えて、そうなるような言動を行っていました。そこでテンジーさんから、そのような考え方をしているから「あなたは失敗するのだ。成功できないのだ」という厳しいご指摘をいただきました。
その時、テンジーさんがいわれたのがギブ&ギブの精神です。これはつまり、世のため人のために生きる、人を応援して生きる、励まして生きるという発想あるいは生き様です。その当時の自分は、テイク&テイク&テイクといった、どこまでいってもテイクの精神になっていました。なぜならば、自分は能力がなくて不幸であるから、その分、能力のある人や幸せな人が自分を応援するのが当たり前であると思っていたからです。
●苦しんでいる人を励まそうとすることは、人間の本質的欲求である
しかし、そういう考えをしているから、自分がどんどん不幸で惨めになり、失敗していく。そのことに当時は気付いていませんでしたが、テンジーさんから指摘を受けて、ようやく気付くことができました。それからは、人の相談に乗ることにしました。ですが相談に乗れる状況ではなかったため、まずは人の話を聞くことにしました。その中で、自分より不幸な人をいっぱい見てきました。そうすると不思議なもので、人間は苦しんでいる人の話を聞くと、どうしても励ましたくなります。これは多分、人間の本質なのだと思います。
そこでついつい「頑張ろう。私も一緒に頑張るから」と言ってしまうのです。ただ頑張りなさいと言っても、それでは励ましにはなりません。頑張れるのは、一緒に頑張ってくれる相手がいるときです。そう思ったので、自然にそのような言葉が出てきたのです。そこで感じたのは愛情の大事さです。本気で相手に頑張ってもらおうと思うと、それは口先だけで言っても伝わることはありません。愛情がないと伝わらないのです。
人間の最低限の欲望あるいは動物としての欲望は、三つあります。一つ目は食欲、二つ目は性欲、三つ目は集団欲です。集団欲は、集団に属したいという欲望です。逆に考えると、グループの中に入っていると落ち着くということです。ここで、グループの中に入っていくときの一つのポイントは、励まし励まされることです。動物も、ある種の励ましの行為をすることがあります。それは、例えばお互いになめ合ったり、くっついたりすることがこれに当たりますが、一緒に頑張って生きていこうという表現をしているのだと思います。
人間もこのような最低限の欲望あるいは本質的な欲望を満たさないと、幸せになることはできないということです。当時の私は、最低限の集団欲を、自分も満たしていなかったし、相手に満たしてあげることもしていなかったのです。当時を振り返ると、だからうまくいかなかったのだと、実感しています。
●励ますことが圧倒的努力につながり、周りの応援を引き出す
私はその後に、ベトナム難民村で不幸な方々のお話を一人一人聞いているうちに、頑張りましょうとついつい自然に励ますようになりました。そして、励ますことによって、自分も頑張ろうと決意するに至りました。そうすると、具体的な努力につながります。そして、自分には能力がないですから、普通の努力では結果が出ません。ですから、圧倒的努力をしないといけないということに気付きました。
それからは、自分の駄目なことを一つずつ押さえて、つぶしていきました。そうすると面白いことに、人を励まして自分も頑張っていくと、自分のことをみんなが好きになってくれま...