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アルツハイマー型認知症のガイドラインに記された4つの薬

認知症とは何か(3)治療薬の種類と扱い方

遠藤英俊
元・国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター長/いのくちファミリークリニック院長
情報・テキスト
認知症に対する根本治療薬は、いまだ開発途上にある。国立研究開発法人国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長の遠藤英俊氏によれば、そうした中でも、薬を含めたさまざまな方法を用いて進行を遅らせていくことが重要だという。どのような手段があるのだろうか。(全7話中第3話)
時間:11:20
収録日:2018/05/26
追加日:2018/09/06
カテゴリー:
≪全文≫

●認知症の治療は、4つの薬を選択しながら使い分ける


 認知症の治療についてお話をします。認知症はいろいろな病気から構成されていますが、現在治療薬があるのはアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)とレビー小体型認知症(レビー小体病)です。アルツハイマー型認知症が全体の約6割を占めるので、日本では1999年からアルツハイマー型認知症に対して4つの薬が使えるようになっています。現在はこれらを組み合わせ、上手に選択しながら使っていくことが求められています。

 これらを早く使うことで、進行を遅らせて、安定した生活を送り、行動心理症など困った症状を減らすことができます。普通の加齢によるボケだと判断し、放置しないということがポイントです。一度は専門医にかかり、薬が必要かどうかを判断してもらい、生活上のアドバイスを聞くことが重要です。

 この薬については、世界中でデータが集まっており、効果のエビデンスもあります。ですが、これによって完全に治るわけではなく、進行を1年から2年遅らせるというものです。ですがこの薬には、それだけにとどまらないメリットがあります。私も、もし認知症になったらこの薬を飲むことになるでしょう。副作用もありますが、飲んだ方が良いものです。


 アルツハイマー型認知症にはガイドラインと呼ばれる、医者が参照する治療のためのお手本のようなものがあります。ガイドラインには薬に関しても記載があり、そこには4つの薬を上手に使うことと、それには根拠もあるということが書かれています。現在、世界中で何100万人もの方が、その治療のためにこの薬を服用しています。

 4つの薬を具体的にいうと、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンというものです。最初の3つは同じタイプの薬で、アセチルコリンエステラーゼインヒビター(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤)という作用があります。アルツハイマー型認知症においては、記憶の伝達物質であるアセチルコリンが減ります。そのためその分解酵素を阻害すると、アセチルコリンが少し増え、症状が緩和されます。その3つはアセチルコリンを増やすことで、記憶の疎通性を保とうとするものです。

 その一方で、メマンチンはこれらとは違ったタイプで、神経細胞を保護し、神経のノイズを減らす作用があります。研究成果によれば、メマンチンと他の3つのどれかを組み合わせることが良いとされており、学会でもガイドラインでも推奨されています。

 図で表すと、このようになります。先ほども言いましたように、コリンエステラーゼ阻害剤には、アセチルコリンを増やすことによって記憶を保つという作用があります。メマンチンは、神経細胞を保護したり、神経のノイズを減らし、安定的に神経の記憶の疎通を良くするもので、中等度および重度の方に使われます。神経細胞を保護するという意味では、他の薬よりも強く、症状が悪くなりにくいものです。この薬を併用することが勧められています。


●薬選択の基準は、認知症の度合いである


 ガイドラインには、アルツハイマー型認知症の度合いによって、選択すべき薬が示されています。軽度、中等度、重度と分かれており、軽度が約3年、中等度が約4年、重度が2~3年ほど進行に要するとされています。その時々に応じて薬を使い分け、量も変えることが重要であると指摘されています。

 原則的には、予備軍のときに薬は使うべきではないと見なされているので、軽度からスタートします。中等度で量を増やし、重度で量を最大限まで増やしていきます。これについては、症状や時期に応じて、副作用なども考慮しながら、患者が医者と相談しつつ最終的には医者の判断で決められていきます。副作用がある場合、他の薬に変更することもあるので、医者と患者、そして薬剤師のコミュニケーションが重要です。症状に応じて薬を変えていけるような信頼関係がないと、治療はあまりうまくいきません。その意味でも良い先生を見つけることが重要です。

 このチャートはガイドラインを図式化し、軽度、中等度、重度を分かりやすく示したものです。一般的には医者に任せておけば良いのですが、薬には意外と副作用もあるので、それをいかに減らすか、そして最大限の効果で困った症状をいかに減らすかということを考え、われわれは薬を個々の患者に合うよう、オーダーメイドで治療選択をしていきます。

 そのため「この薬だけ取りにいらっしゃい」と言うような先生はやめた方が良いと思います。必ず症状について情報伝達しながら、話し合いの...
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