核DNAからさぐる日本のルーツ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
遡っていけば、赤の他人でもみんな親戚同士
核DNAからさぐる日本のルーツ(5)核ゲノムのSNPに着目
斎藤成也(国立遺伝学研究所 名誉教授)
科学の発達により、ミトコンドリアDNAに着目するのではなく、ヒトゲノムを分析する方法が近年、登場し、これによって得られるデータが膨大に増えた。今回は、核ゲノムを用いた新たな研究手法について解説する。(全11話中第5話)
時間:11分08秒
収録日:2018年9月26日
追加日:2019年4月3日
≪全文≫

●核ゲノムの、個人個人の違いに着目するという方法


 とにかくミトコンドリアではよく分かりません。ではどうするのかということで、いよいよ核ゲノムの話に入ります。

 核ですが、nuclear、核爆発、核分裂は全て同じことで、ウラニウムの核、つまり原子核です。ここでいう核は、細胞の核です。ただ、どちらも日本語では同じようにいいますし、英語でも「nuclear」「nucleus」と同じようにいいます。その中のちょっとした個人個人の違いを専門用語で「SNP(Single Nucleotide Polymorphism)」、日本語では「単一塩基多型」と呼んでいます。

 ちなみに、日本の分子遺伝学、分子生物学では、「Nucleotide(ヌクレオチド)」は普通「nucleic acid」に関係することなので核酸と訳すべきですが、その中の大事なbase(塩基)だけに着目して「塩基」と訳すことが多い。つまり、ここでは一種の意訳で、単一ヌクレオチド多型なのですが、それを日本語では「単一塩基多型(single basic)」と訳しています。これは日本の特殊事情です。

 なぜそれでいいのかですが、説明すると少し話が長くなります。DNA(デオキシリボ核酸)は、塩基、リン酸、デオキシリボースがつながったものであり、塩基が一番大事です。塩基には4種類あります。スライドにはA(adenine、アデニン)とG(guanine、グアニン)しか書いてありませんが、その横にC(cytosine、シトシン)とT(thymine、チミン)があり、つまり4種類あるということです。アルファベット順にいうと、A、C、G、Tの4つです。この違いは塩基の違いです。ですから、DNAの違いとは結局、塩基の違いのことなのです。


●核ゲノムにおいて人間は皆99.9%同じである


 さて、人のゲノムは32億ありますが、その中で個人個人で違っているのは数百万です。片や約30億(32億)で、10の9乗です。億が10の8乗ですから、30億というと3×10の9乗、莫大な数です。それに対して、個人個人で違っているのは数百万です。10の6乗です。したがって、単純に比較していただくと、結局99.9パーセント以上、われわれはみんな同じです。ですから、赤の他人といって全然違うように見えるとわれわれは考えますが、実はほとんど同じなのです。だいたいチンパンジーもわれわれと99パーセント同じですから、全然違う生物種(動物)ですが、DNAで見るとチンパンジーもわ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換
経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標
垂秀夫